表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/681

竜の里を発った

* 2020/04/26

 竜の里を出発した時の人数が間違っていたので修正しました。


 赤竜帝が退室し、頭を上げると白髭(しろひげ)の竜人と佳央(かお)様と思われる小さい黒竜がいた。

 大きさは15寸(約45cm)といった所だろうか。

 あまり羽ばたいていないのに空中に浮かんでいるのは、なんだか違和感がある。

 佳央様は私の姿を見て、


<<お前、貧乏?>>


と聞いてきた。私は物乞(ものご)いではないと返そうかと思ったが、目に入る周りの竜人は(みんな)立派な服を着ている。相対的に私の格好は粗末に見えるだろうと思い直し、


「はい。

 周りの竜人様方と違って、私は庶民(しょみん)ですから。

 それに、私は農家の出で今年から働き出したばかりなので、庶民の中でもろくな稼ぎもありません。」


と答えた。すると佳央様は白髭(しろひげ)の竜人に、


<<それじゃ、お腹が()いちゃうでしょ。

  交代とか、駄目(だめ)?>>


と質問した。すると田中先輩が、


餓鬼(がき)のくせに贅沢(ぜいたく)言うな。

 こいつの稼ぎは、新人としては多いほうだからな。」


と言ったのだが、佳央様は、


<<新人って?>>


と聞いてきた。私は、


「お勤めを始めたばかりの人を新人と言います。」


と答えた。すると、


<<ふ〜ん。

  で、なんで、新人は稼ぎが少ないの?>>


と聞いてきた。私は、


「まだ仕事もろくに覚えていなくて、教えたりいろいろと手間がかかりますから、給料が十分でないのですよ。」


と答えた。佳央様は、


<<そうなんだ。

  じゃぁ、こっちの人間は?>>


と言って、田中先輩を()した。

 田中先輩は、


「俺はほとんど酒に変わるからな。

 一匹増えても、面倒見きれん。」


と答えた。蒼竜様が、


「他にも、魔獣を狩ったりして稼いでいるのではないか?」


と聞いたのだが、田中先輩は、


「あまりやりすぎると、後輩が狩る分がなくなるだろ。

 だから、必要な時だけ狩るようにしている。」


と言った。先日、飲みに行くために火狐を狩っていたが、必要な時と判断する敷居は低いのかもしれない。

 横山さんも似た経験があったらしく、


「たまにお高い店に連れて行ってくれるけど、それも必要な時だから狩りをしているの?」


と指摘した。すると田中先輩は少し困った顔をして、


「まぁ、必要だからな。」


と答えた。困った顔をしたのは、田中先輩自身も少し多いと思ったからかもしれない。

 更科さんが、


「和人、歩荷の仕事で外泊する時はどうするの?」


と聞いてきた。私は、


「やはり、一匹にはさせられないので連れて行った方が良いと思いますが・・・。」


と現実的な案を返すと、蒼竜様も、


「それが良かろう。

 普通、人里で竜の子を見かけることはあるまい。

 ゆえに、捕まえようと狙う(やから)が出ぬとも限らぬからな。」


と同意した。私はそこまで考えていなかったが、佳央様は、


<<そっか。

  可愛いのは罪ね。>>


と照れていた。蒼竜様は珍しいからと言ったのであって、可愛いからとは言っていないのだが、本人に指摘するとへそを曲げるかもしれない。

 蒼竜様は、


「ふむ。

 そういう事でもあるな。」


と言っていたので、蒼竜様には、この竜が可愛く見えるのだろう。

 白髭の竜人が咳払(せきばら)いをした後、


「続きは後でもよかろう。」


と、退室することを(うなが)した。

 結局、初めから決まっていたとおり佳央様は私の所で預かることになった。



 竜帝城を出てからは、夕方までに湖月村まで行かなければ宿に止まれないかもしれない。

 なので、手短にお世話になった竜人に挨拶をして竜の里の門まで行くことになった。

 まず、冒険者組合に寄った。

 すると、受付の竜人が、


「おや?

 蒼竜先生と尻尾きり様、踊りの山上さんたちではありませんか。」


と言った後、なにか思い出したようで、


「そうそう、山上さん。

 昨日の猪の件なのですがね、依頼主が全部引き取ることになりましたよ。」


とにこやかに話した。私は、


「それは良かったです。」


と言うと、受付の竜人は、


「はい。

 なんでも、子供の猪の方は家畜にするそうで、大きく育てて食べるそうです。」


と話した。私は、一瞬殺されずに済んで良かったと思ったのだが、家畜として飼われてそのうち食べられてしまうようなので、問題が先送りされただけだったかと残念に思った。

 依頼主には是非とも情が移って、殺せなくなって欲しいものだ。



 その後、口入れ屋にお礼を言いに行くと、


「おっ!

 蒼竜先生に、尻尾切りと、今(ちまた)(うわさ)の踊りの山上じゃないか!

 いや、飲み屋で『俺が金をやったから、あいつら野宿にならずに済んだんだ』って話をしたら大受けでな。」


とにこやかに話した。と、そこに常連の人だろうか。

 ちょっと悪そうな()()ちの竜人が来て、


「おっ!

 蒼竜先生に、尻尾切りと、踊りのじゃないか!

 奥方も一緒か!」


と驚いていた。口入れ屋の番頭が、


「言ったろ?」


とニヤニヤしながら言ってから、


「で、今日は何のようだ?」


と私達に言った。田中先輩が、


「いや、一応世話になったので、挨拶してから帰ろうと思ってな。」


と話した。すると店に来た竜人が番頭に、


「いや、あんたのことだから口から出任せだろうと思っていたが、本当だったのか。」


と感心しながら話した後、


「疑って悪かったな。」


と謝ったかと思ったが、悪そうな竜人は即座に、


「・・・ってほどの話でもないか。」


と更に付け加えた。番頭が、


「まぁ、そういう事だ。」


と言ってから、田中先輩に、


「尻尾切りも達者でな。」


と返した。田中先輩は、


「あぁ。」


と返した。私はそのまますぐに出発するのだろうと思ったのだが、田中先輩は、


「でも、どうせならもっと良いところを紹介してくれればいいのに、泊まったのはとまり木だがな。」


と付け加えた。店に来た竜人が笑い出しながら、


「あぁ、とまり木か。

 あのボロ宿、まだやってたか。」


と言った後、


「あそこの畳も布団も年季が入っているからな。

 特に、布団が(かび)(くさ)いのなんの。

 大丈夫だったか?」


と心配された。田中先輩は、


「あれは(ひど)かったな。

 寝袋を持ってきていたから、そっちで寝たぐらいだ。」


と説明した。すると店に来た竜人は、


「なんだ、つまらん。

 ・・・しかし、よりによってとまり木か。

 いや、いや。

 そっちには若い譲ちゃんもいるのに、(むご)いことをする。」


とヒーヒーと笑いながら喋った。

 この竜人もあの(かび)臭さを知っているということは、何らかの事情で泊まったことがあるのかもしれない。



 里の南門に着くと、赤竜帝と白髭の竜人が見送りに来ていた。

 赤竜帝は、蒼竜様や田中先輩と次に来た時も一緒に飲む約束をしたようだ。


 約束をした後は、赤竜帝は、


「家柄を鼻にかけて、人間どもに迷惑をかけぬようにな。」


と佳央様に声をかけた。佳央様は、


<<下等なのに?>>


と普通に疑問に思ったようだが、赤竜帝は、


「暫く、山上に世話になるのだ。

 周りの人間に迷惑をかけると、それが山上に伝わる。

 つまり、山上に迷惑がかかるというわけだ。

 分かるな。」


と言った。佳央様は、


<<まぁ、仕方ないか。

  うん、分かった。

  そうする。>>


と、聞き分けはよいようで、少し安心した。

 最後に赤竜帝は私に、


「では、山上。

 佳央を頼むぞ。」


とお願いされた。私は、


勿論(もちろん)です。」


と答えたのだが、佳央様から、


<<当然よね!>>


と言われた。私は、佳央様が少し小憎たらしく感じたが、黙っていることにした。

 しかし白髭の竜人が、


「これっ!」


とちゃんと(しか)って、最後まで心配そうにしていた。

 田中先輩が、


「じゃぁ、そろそろ行くか。」


と言って、出発の音頭を取り、湖月村に進み始めた。

 それを見て、私達は慌てて一礼してから、田中先輩についていった。

 こうして私達は、佳央様を加えた5人と1匹で竜の里を後にし、湖月村に向かったのだった。


 新型コロナの騒ぎで、もうすぐGWという気がしません。

 おっさんもリモートワークになったのですが、昼休みに自炊しているせいで、返って休み時間が削られています。

 はやくこの騒ぎが収まってくれればよいのですが・・・。

 

 あと、今回で本章は終了となりますので、後で新たに登場した人の紹介を投稿しておきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ