花街では私も襲われるかもしれないらしい
* 2021/09/19
誤記の修正と、内容が変わらない範囲で少しだけ修正をしました。
店員さんがお茶と山で見かける苺を持ってきた。
この苺は、小さい頃一兄達と山に入った時に教わり、今でも見かければ採って食べているくらい美味しいやつだ。
私が、
「これは甘いやつですね。」
と言うと、雫様が、
「そうやな。
うちもよう食べるわ。」
と同意した。蒼竜様が、
「この店にしては珍しいな。
いつもはもっと凝ったものを持ってくるのだが。」
と言うと、店員さんが済まなだそうに、
「申し訳ありません。
実は、準備していた竜和菓子に人間の食べられないものが含まれていることが判明しまして・・・。
急遽、こちらを準備させていただいたという次第です。」
と申し訳なさそうに謝った。私は気が付かずに出されなくて良かったと思い、ほっとした。
蒼竜様が、
「事情は分かった。
こちらも伝えるのが遅かったゆえ、仕方あるまい。」
と謝った。すると田中先輩も、
「広重もいるというのに、店の顔に泥を塗るような真似をさせて悪かったな。」
と、済まなさそうな顔をして謝る。蒼竜様は、
「拙者が甘かったからゆえ、田中が謝ることもあるまい。
詫びというわけでもないが、次、また機会があればこちらを利用するゆえ、勘弁せよ。」
と言った。すると店員さんは、
「板長には、そのようにお伝えいたします。」
と言って下がっていった。
店員さんが出ていった後、蒼竜様は赤竜帝に両手をついて頭を下げた。
赤竜帝は、
「まぁ、このような日もあろう。
気にはせぬゆえ、面を上げよ。」
と言った。蒼竜様は、
「面目次第もない。」
とまた謝る。田中先輩が、
「まぁ、酒でも飲め。
少しは落ち着くぞ。」
と言うと、雫様が、
「まぁ、あれや。
うっかりなんて、いくらでもあるやろ。
こう言うたら蒼竜は気に食わんか知らんが、二六時中気ぃ張ってても人生の無駄遣いやで。
うちは完璧っちゅう言葉は聞こえはええが、面白味もあれへん思んや。」
と付け加えた。私は、
「別に、何もなかったのですから、落ち込むところでもないと思うのですが・・・。」
と言ったのだが、更科さんが、
「和人。
人にはそれぞれ自分の基準があるでしょ?」
と駄目出しされた。横山さんも、
「そうよね。
人には許せても自分では納得できないことはあるし、その逆だってあるじゃない?
そういうのが個性なんだから、そこを否定するのはどうかと思うわよ。」
と続いた。私は、
「申し訳ありません。」
と断ってから、蒼竜様に、
「気を悪くしていたら、申し訳ありませんでした。」
と謝ると、蒼竜様は、
「よい。
気遣ってのことであろう?」
と言った。私は、
「はい。」
と答えた。
赤竜帝が、
「まぁ、過ぎたことだ。
誰も何もなかったゆえ、この話は終わりでよいな?
苺でも食べて〆ようではないか。」
と言って、若干もやっとした気持ちは残ったが、この日の飲み会は終了となった。
田中先輩が蒼竜様に、
「そういえば、ここに銭湯の無料券があってな。
どこか入れるところはないか?」
と聞いた。すると蒼竜様は、
「この時間ゆえ、花街くらいしか開いておらぬであろうな。」
と言った。すると、田中先輩は、
「まぁ、風呂に入れるなら花街でもいいか。」
と言うと雫様が、
「花街か。
今の時間、あんまり行きたい場所ちゃうなぁ。
うちは朝風呂にするわ。」
と言った。すると横山さんや更科さんも、
「私も朝風呂にするわ。」
と言った。私は、
「私は銭湯で体を洗いたいので、田中先輩についていきますね。」
と言ったのだが、更科さんが耳を引っ張って、
「和人。
そりゃ、花街なら美人も多いでしょうけどね。
私がいるんだから、もう少し遠慮して欲しいのだけど。」
と苦言を呈してきた。私は、
「何故ですか?」
と聞いたのだが、更科さんは、
「花街よ?
解るでしょ?」
と言われた。私は、
「花町という部落があるということではないのですか?」
と返すと、更科さんは少し呆れながらため息をついて、
「そういうことね。」
と納得して、
「和人。
花街というのはね、男の人が芸妓を呼んで遊ぶ街を言うのよ。
大杉町にもあるけど、夜、女性は襲われかねないから、小さい頃から近寄ったりしないように言われて育つのよ。」
と教えてくれた。しかし田中先輩は、
「まぁ、山上も襲われかねないからな。
明日、普通に朝風呂にしたほうが良いんじゃないか?」
と言った。私は男でも襲われるとは、どういうことなのだろうかと思うと、体の奥からぞわっとした。
私は、
「それ、私も女の子として襲われるということですか?
いや、そういうのは絶対に勘弁です!
私も今日のところは遠慮して、明日、銭湯に行くことにします。」
と言うと、更科さんが、
「半分冗談だとは思うけど・・・、うん。
和人、明日入りに行こうね。」
と誘われた。私は、
「はい。」
と答えた。
その後、蒼竜様と田中先輩は花街の銭湯に入りに行き、女性3人と私は一緒に宿に戻った。
番頭さんから、
「おや、両手に花ですね。
尻尾・・・いえ、田中様はいかがしましたか?」
と質問された。私が、
「田中先輩なら、今頃銭湯で汗を流しているところだと思います。
私達は、明日朝入る予定ですが。」
と答えた。すると番頭さんは、
「なるほど、そういうことでしたか。
今の時間なら、花街くらいでしょうかね。
あそこはちょっと柄の悪い人たちも出入りしますから、皆さん、朝風呂にして正解だと思いますよ。」
と納得した。そして、
「裏手に井戸がありますので、行水をするようでしたらお使い下さい。」
と言って、井戸の場所を教えてくれた。
私達は、雫様、横山さん、更科さん、私の順に軽く行水をしてから部屋に戻り、寝袋に入った。
更科さんが、
「明日もまた竜帝城ね。」
と確認してきたので、私は、
「はい。」
と答えた。更科さんは、
「赤竜帝が直々に名付けするって言ってたね。」
と言うと、横山さんが、
「普通は竜族でも少ないんじゃないの?
いい体験になるわね。」
と続けた。私は、竜族でも滅多に無いのではないかと言われて、改めて緊張してきた。
私は昨日もあまり眠れなかったが、今日も上手く寝られないのではないかと不安になったのだった。
今回出た苺はクマイチゴになります。
クマイチゴのウィキペディアのページは以下にあります。
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%B4&oldid=64141028
あと、飲み会が終わったときもやっとしていたのは、そもそもこの場所を決めたのは赤竜帝だから、蒼竜様が謝るのは筋違いだろうという点からになります。