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竜の里の冒険者組合

気がつくと、ブックマークが一つ増えておりました。

この場を借りてお礼申し上げます。

(^^)/アリガトウ ゴザイマス!


 押し入れを封印した後は、晩御飯までまだ時間があった。

 他の人は銭湯に行こうと言ったのだが、私はお金を稼ぐほうが先だと思ったので、宿の番頭さんに、


「すみません。

 こちらに冒険者組合はありますか?

 宿泊費が心許ないもので・・・。」


と言って質問した。すると番頭さんは、


「冒険者組合ですか。

 そうですね・・・、みなさんが最初に入ってきた門はどの門でしたか?」


と確認された。私は、


「いくつか門が有るのですか?」


と聞くと、番頭さんは、


「はい。

 南大門と西門、東門の3箇所ございます。

 まず、南大門は朱塗りで3門になっています。

 残りの西門は金色、東門は緑色で、こちらは3門にはなっていません。」


と答えた。私は、


「なら、入ってきた門は3門でしたので、南大門になります。」


と返事をした。番頭さんは、


「なるほど。

 でしたら、そうですね・・・。」


と言ってから少し考え、


「南大門から入って、真っ直ぐ行くと内裏(だいり)に続く門がありますが、そこは分かりますか?」


と確認した。私は、今日通ったたばかりの道なので、


「はい。

 大丈夫です。」


と答えた。番頭さんは、


「その2つの門の丁度真ん中くらいに東西に走る道があります。

 この道を、内裏に向かって左に曲がります。

 曲がって暫く歩くと、大きな道が交差する十字路がありますので、そこの右斜め前が冒険者組合です。」


と説明してくれた。私は、


「ありがとうございます。

 でも、『真ん中くらいにある東西に走る道』では心許(こころもと)ないので、なにか目印はありますか?」


と聞いた。すると番頭さんは、


「角に番屋があります。

 それが目印になると思いますよ。」


と答えた。私は、


「ありがとうございます。

 それで、今更ですが、こちらの冒険者組合は、人間も使えるのでしょうか。」



と聞いた。すると、


「私は冒険者ではないので詳しくは知りませんが、前例はないと思います。

 直接、聞いてみて下さい。」


と答えた。私も、番頭さんの知り合いに冒険者をしている竜人がいて、知っていたら助かるなと思っていた程度だったので、ここではこれ以上突っ込むのは()めることにした。なので、私は、


「分かりました。

 ちょっと聞いてみます。」


と答えた。雫様は、


「なんや。

 山上、やっぱり行くんか?」


と聞いた。私は、


「はい。

 それと、ひょっとしたら冒険者組合に行く途中で蒼竜様と会えるかもしれませんし。

 こればかりは、外を歩かないと見つかるものも見つからないでしょうから。」


と答えた。更科さんが、


「和人、蒼竜様が出歩いているとも限らないわよ。」


と言ったので、私は、


「『ひょっとしたら』ですよ。

 必ず見つかるとは思っていませんよ。」


と弁解すると、更科さんは、


「まぁ、そうよね。

 それにしても蒼竜様、どこに行ったのかしらね。」


と言った。番頭さんが、


「?

 ひょっとして、蒼竜先生のお知り合いですか?」


と聞いてきた。田中先輩が、


「ああ。

 昔、一緒に逃げ回った仲だ。」


と言うと、番頭さんは田中先輩をしげしげと見て、


「尻尾切りか?

 おいおい、声も少し違うし、歳もとったんだなぁ。」


と少し地が出たようだった。後、声が違うのは横山さんの前でちょっといい声を出しているからだろう。

 田中先輩は、


「俺、そんなに年取って見えるか?」


と不安そうに聞いた。すると番頭さんは、


「それはもう。

 私達(わたくしたち)は竜人化状態ではほとんど変化がないから、余計に歳を取って見えるのかもしれませんが。」


と、元の同じ話し方に戻したようだった。横山さんが、


「竜人は、そんなに姿が変わらないものなのですか?」


と聞くと、番頭さんは、


「十年くらいではあまり変わりませんよ。

 元々我々は長生きですし、理想の人物像がそうそう変わることもありませんからね。」


と答えたが、何かに気がついたようで、


「あぁ、すみません。

 我々が竜人化する時は、自分の理想に近い形に変化するのですよ。」


と付け加えた。横山さんが、


「その話は、少し前に門番さんからも聞きました。

 でも、そうすると最初に竜人化した竜は、誰に似せたのでしょうかね。」


と質問したのだが、番頭さんは苦笑いしながら、


「いえ、流石にそれは赤竜帝でも分からないのではないでしょうかね。」


と答えた。田中先輩が、


「もし、冒険者組合に行くなら閉まる時間もあるからな。

 そろそろ行くか。」


と言って話を切った。


 その後、すぐに私達は冒険者組合に向かった。

 冒険者組合について扉を開けると、門番さんに似た筋骨隆々の竜人がたくさんいた。

 私たちはまず、受けられる依頼があるか掲示板に向かった。

 すると、一人の20歳くらいの見た目の冒険者から、


「おい、お前ら。

 ここは竜人の冒険者組合であって、人間の来るところではないぞ。」


と怒られた。私は、


「竜人専用なのですか?」


と聞くと、その竜人は、


「ここは竜の里だぞ?

 そうに決まっているだろうが。」


と言った。私はやはりそうかと思いつつも、ダメ元で窓口の竜人に、


「人間の利用は駄目なのでしょうか。」


と確認を取った。すると、


「こちらは竜の里ですから、人間がこなせるような仕事はないのですよ。

 まぁ、やれるのなら、受けても問題はありませんよ。」


と言った。私は、


「だそうですよ。」


と、さっき突っかかってきた竜人の方を見て言った。すると、


「お、おう。」


と答えた。が、その竜人は、


「それで、お前はどんな魔獣を狩ったことがあるのか?」


と聞いてきた。私は、


「狂熊と、運良く狂熊王に雷熊です。」


と答えた。すると竜人は、


「ぉお?

 人間にしてはなかなかだな。

 で、そっちのおっさんはどうだ?」


と田中先輩を指さして確認した。田中先輩は不機嫌そうに、


「先代の赤竜帝の時に少々。」


と言った。竜人が暫くだまり、


「・・・尻尾切りか。

 ぱっと見ても分からなかったぞ。」


と言って怪訝な顔をしてから、


「歳を取ったな・・・。」


とつぶやいた。田中先輩はまたムッとして、


「なんだか、出会う人みんなに言われて本当に腹が立つ里だな。

 示し合わせているのか?

 なぁ。

 示し合わせているのか?」


と確認した。しかしその竜人は、


「そんな訳あるか。

 第一、そんな細かい芝居なんて仕込んでも、全く意味がないからな?

 誰得だよ。」


と言った。確かに、その通りである。

 田中先輩は、


「じゃぁ、とりあえずどんな依頼があるか見るか。」


と言って竜人を放置し、掲示板の方に移動したので、私達も慌ててついていった。

 掲示板には、『天狗草の採取』『狂熊の間引き』のような見知ったものから、『金剛石(ダイヤモンド)の採取』『紅玉(ルビー)の採取』と言ったよく分からないものの採取まであった。

 私は田中先輩に、


「天狗草とか、狂熊の間引きなら私にもこなせそうですね。」


と言うと、田中先輩は、


「天狗草は、ここからだと群生地まで遠いので、歩いて行っても薬効が減って割に合わんだろう。

 それに、狂熊の間引きというのも、場所が悪い。

 ここに書かれている場所は、女郎蜘蛛(じょろうぐも)が出る地域と重なっているので、山上には難しいだろうな。」


と否定された。私は、


「その、女郎蜘蛛というのはどんな魔獣なのですか?」


と聞いた。すると更科さんが私の耳を引っ張って、


「和人、名前に『女郎』と入っているから想像出来るでしょ?」


と言った。耳を引っ張るのは地味に痛いので止めて欲しい。

 私は、


「魔獣なのに、女性の形をしているのですか?」


と聞くと、更科さんは、


「そうよ。

 それに、魔獣なんだから、服なんて着ていないでしょ。

 馬鹿な男性冒険者はそれに引っかかって、帰らぬ人になるのよ。

 というか、魔獣に発情するのもどうかと思うけど。」


と冷ややかに言った。すると横山さんが、


「別に良いじゃない。

 そういう男性が減るのは歓迎よ?」


と毒を吐いていた。田中先輩が、


「あれは何度か遭遇したことがあるが、なんであんなのに引っかかるのか、俺も理解できんな。」


と言った。私は、


「やはり、蜘蛛のような気味の悪い形をしているのですか?」


と聞くと、田中先輩は、


「前に見たやつは、確か顔は二十歳前後でやや大きめの瞳、大きな胸を丸出しにして、腰の辺りはくびれていたぞ。

 それと、下半身は蜘蛛だが、上半身は人間にそっくりで、髪と眉に毛がある以外はつるつるつやつやの肌だったな。

 なんであんなのに引っかかるのか、意味が分からん。」


と言った。私は、田中先輩だから魅力を感じないだけであって、一般的には倒すにしても、後ろ髪を引かれるだろうなと思った。更科さんがため息をついて、


「和人。

 そんなに興味あるなら、一度食べられてみたら?」


と言った。私は、


「それは嫌です。

 でも、この依頼なら、田中先輩もいますし楽勝で稼げそうですね。」


と言った。だが横山さんと更科さんは、私が女郎蜘蛛の裸を拝みに行きたいと勘違いしたのだろう。ものすごく視線が痛かった。私は視線に耐えかねて、


「この依頼を受けたいとは、私は一言も言っていませんよ。」


と付け加えたのだった。


田中先輩は、会う人皆に歳を取ったなと言われて少し落ち込んでいます。


あと、文字で見づらいとは思いますが、竜の里の位置関係はだいたい以下のような感じです。


 壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁

 壁          壁

 壁          壁

西門         東門

 壁  壁壁壁壁壁壁  壁

 壁  壁 内裏 壁  壁

 壁  壁    壁  壁

 壁  壁壁大門壁壁 ◯壁

 壁冒険者    口入屋壁

 壁組合◯       壁

 壁       宿◯ 壁

 壁壁壁壁壁南門壁壁壁壁壁


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