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烏の夜明け  作者: 春葵
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序章

ある日の深夜、丑三つ時。明かり一つさえない暗い夜道を駆ける三つの影があった。



一つの影は両手に黒光りする銃を携えている。纏った上着の裾のはためく隙間から銃のホルスターが見える。その目は闇の中でもはっきりと分かる金色の目だ。身長はそう高くは無いが、その目には強い意志が見受けられる。


またある一つの影は金目の影と体躯は同じであった。水色の外套をはためかせながら、左手にグローブをはめている。首元の青い宝石のネックレスが僅かな月明かりを反射する。その目はオッドアイだった。右目は水色、左目は黄土色だ。


もう一つの影は180cmはあろうかという長身だ。橙のパーカーがひらひらとはためく。その目は優しそうな垂れ目だが、その顔は無表情の中に確かな怒りが垣間見える。彼の橙の目は、時折その怒りの焔が揺らめくようだった。



寒夜(そうや)ぁ、敵、ホンマにおるん?」


オッドアイの影がどうやら寒夜と言うらしい金目の影に問いかける。


「はず、やけども。何となく不穏やし。というかその辺は俺じゃなくて空夜(くうや)の役目やろ」


寒夜がオッドアイの影に言うと、オッドアイ……空夜はふふ、と笑う。その時。


「来たぞ!二人とも構えろ!!」


橙の影が叫ぶ。それと同時に数体の異形(いぎょう)が見えた。瞬間、その場に緊張感が走る。


白夜(はくや)、ナイス。索敵の手間が省けたわ。ようやっと暴れられる」


寒夜が橙の白夜に向けてニヤリと笑い、異形へ向けて二丁拳銃を構える。



「我等こそは(なんじ)らを成敗せし者、三羽烏(さんばがらす)!勇あらば我等に挑め!参る!」


闇夜に銃声が2発、響いた。



「くっそ……斬れど斬れど湧いて出やがって、このっ」


白夜は2本の短剣を異形に向けて振るっていく。遠目で銃を使って応戦する寒夜と彼にしか使えない力である神力(しんりき)を使って次々と敵をなぎ倒す空夜が見える。

白夜は近接でしか攻撃できない。故に敵に近付くという手間が増える。敵に近付くということはそれだけ危険な行為だ。だからこそ、隙を見せてはいけない。しかし先刻、2人に視線を向けた一瞬。

白夜の目の端に白銀がちらつく。敵の刃だ。人形(ひとがた)の異形が寸分(たが)わず白夜の首筋に狙いをつけた。


「くそっ……」


(俺が刃を突き立てるのが先か、俺の首が飛ぶのが先か……やらかしたな、俺の短剣じゃリーチが足りひん)


白夜が諦めかけた瞬間、遠くの空から何かが飛んできた。その一閃は異形の首を貫通する。異形は首から黒い血潮を流し絶命した。首を貫通したそれは矢だった。白夜は矢を使う自分たちの兄貴分を知っている。


「白夜」


寒夜の声が聞こえる。どうやら兄貴分が射抜いた異形が最後だったらしい。白夜はコンクリートに深々と刺さった矢を抜いた。


「戦いで気を抜くなんて俺はまだまだやな。この矢が無ければ死んでた……明夜(めいや)に借りが出来てもうたわ……」




遠く、とあるビルの屋上。一際強い風が吹く。羽織がぶわりとはためき、腰に巻き付けたパーカーが揺れる。精悍な顔に灰色の目。寒夜、空夜より高く白夜より低い背の丈。彼こそが明夜である。

明夜は矢を持たずそっと弓をつがえると、姿勢を少し正してゆっくり引いた。


「この場に蔓延(はびこ)りし諸悪の根源、その全てを、(ことごと)く絶たん」


明夜が弓の弦から手を離すと、びいん、と1つ音が鳴り、暫くして辺りが静寂に包まれる。


「……帰るか」


弓をさながら刀のように背中に背負い、明夜は踵を返す。


「俺の弟分に手ぇ出しやがって、命知らずな奴。俺がお前らを射抜く機会を虎視眈々(こしたんたん)と狙ってたんにも気付かんと、おめでたい考えの奴等やなぁ」


ふっと嘲笑を漏らす明夜。



「あいつらの危険は俺が射抜く。あいつらの夜も、闇も……俺が明かす!」

この作品に出てくる武器を許可なく所持することは銃刀法違反となります。

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