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オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


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9/9

9. 時々、冬ごもり




大寒波である。

明日は、一段と冷えるのにゃ。そんなパクたちの予報に、ファスは倉庫から必要なものを運んでいる。もしかしたら、吹雪くかもしれないのだ。

天気が穏やかな内にと、パクたちも力を合わせ薪を集め、念入りに巣の点検をしていく。準備を終えた昼頃には風が出て、慌てて洗濯物を取り入れ一息ついた。


 「なー、にゃ」


 「まだ、乾いてないね。此処に干しておこうか。これは…畳んで暖炉前に置いて、」


 「にゃん」


しらゆきとはやてに手伝ってもらい、洗濯物を暖炉前に干し直していく。此処ならすぐ乾いてくれるだろう。

顔を上げると、外は白くなっていた。いつの間にか降り出していたようだ。間に合ってよかったねと笑い合い、今日はこのまま、まったり過ごす事に。お茶はたっぷり用意して、ごはんは作って温めるだけにしてある。おやつも、テーブルに纏めておいた。

柔らかい敷物と毛布、本も数冊持ってくると、みんなで集まる。オネムは早速ファスの膝に上り、ソラは側で図鑑を広げる。はやてとダイチは魔法学の本を広げ、借り物の最新版と読み比べ始めた。

パクとしらゆきは、戸棚から糸束を出し持ってくる。


 「にゃあ、にゃー」


 「にぃ」


 「うん、一緒に作ろうか」


以前から、布巾を作ってみたいと言っていたのだ。ふたりはファスの前に座り、小さな機織り機を広げる。折り畳み式の簡易な物だ。けれど、充分に作れる。

たてたて、つーっ。たてたて、つーっ…で、トントン。

そう呟きながらやって見せると、パクもしらゆきも楽しそうに真似る。


 「にゃにゃ、にー。にゃあにゃ、にー」


 「にゃんにゃ、にー。にぃにぃ、にー」


トントン。すぐにコツを掴んだふたりは器用に織り上げていく。一台しかないけれど、交代しながら仲良く使う姿は微笑ましい。

はやてもダイチも、オネムもソラも、耳を動かし尻尾を揺らす。ファスはにこにこと見守っていた。







 「…それで、できたのがこれです。みんな上手なんですよ」


 「いくらですか??!」


はわわわと癒されながら聞き入っていたうらら、実物を目にし身を乗り出した。手にはもう、財布が握られている。

今日も相変わらずの寒波だが、冒険者三人組は寒さにも負けず、巣を訪れていた。流石に冷え切っていたので、パクたちは温め係となりそれぞれの膝に乗り、ファスは毛布と温かいお茶を用意。御蔭で三人は、いつもより早く回復できた。


 「にゃあにゃあ」


カイの膝に乗っていたパクが、一緒になって覗き込み、一枚の布巾を指す。それがパクとしらゆきで作ったものらしい。真っ白な長方形で、端は切りっぱなしになっている。最初はほつれて糸が出てしまうが、使い続けている内に落ち着くのだとか。触れてみると、柔らかで肌触りもいい。ポポワタゲで作られているから、長持ちもするだろう。

混じりっけ無しの、純ポポワタゲ。今や貴重な、ポポワタゲ。王都で出すと、いくらになるか……。


 「よかったら、使ってください」


 「にゃあ!」


それをうっかり忘れてしまう、聖母と癒しのモフモフたちからは優しさしか感じない。

楽しくなってみんなでたくさん織り上げて、それでもまだ糸束はあるから大丈夫と頷いているが、違うそこじゃないと、三人は言いたい。うららが挙手をした。


 「お金払うよ!」


 「いえ、パクたちが初めて作ったものですので、お金はいらないと」


トオヤが挙手をした。


 「それでも時間、手間は掛かっているんだ。それに糸作りも自分達でやっているんだろう?」


 「はい。手間だとは思った事ないですよ、みんなでやっているので楽しいですし」


カイが挙手をした。


 「その楽しい時間に、俺らは金を払いたい。払える対価が金ぐらいしかない」


 「そんな事ないです。こうして来てくれて凄く嬉しいですし、カイ達はたくさんごはん食べて、おいしいって言ってくれます。一緒に居ると楽しいんです。いつも、充分なモノをもらってるんですよ。もらい過ぎなくらいだって思ってるんですから」


 「その台詞そっくりそのまま返してやるよ畜生好きだあぁぁぁ!!!」


 「負けるなカイ!Sランクの底力はそんなものじゃない!!」


 「お前はあの純粋な笑顔に勝てんのかぁぁぁ?!」


 「無理いぃぃぃぃとうといぃぃぃぃ!!!」


頽れ、蹲るカイとうらら。パクたちが不審物を扱うように、枝で突いている。

どうしたんだろうとオロオロとしながら、ファスはトオヤに助けを求めた。年長の彼は崩れはしなかったが、額に手を当て天を仰いでいる。


 「あ、あの…、どうしたら……」


 「……二人はその内戻ってくるだろう。今はそっとしてやってくれ」


 「は、はい。……そ、そうだ、やっぱりこっちにしますかっ?」


 「ん?」


慌てたファスが取り出したるは、やはりポポワタゲの布巾。しかしその真ん中には、ポンと肉球印が縫い込まれていた。


 「こ、これもありますっ」


ばっと広げたそれには、六匹の猫が。問うまでもなく、パクたちだろう。


 「柄があったら、楽しめるかなと思いまして、作ってみました!」


 「……器用なんだな」


トオヤは静かに受け取り、表裏を確認。裏も抜かりなく、しっかりと猫。どちらから見ても楽しめる仕様になっている。トオヤはフッと笑った。


 「分かった、これ全部受け取ってくれ」


 「いりませんよ??!」


じゃら、と渡された財布の重さにファスは恐れ戦き、パクたちの力も借り、いるいらないの攻防戦を繰り広げたのだった。






……結局、癒したちに負けたSランクパーティのそれぞれの部屋には、その時の手作り布巾が飾られている。勿体なくて使えないと、きちんと額に入れられて。






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