2 学級委員 霧谷 朝日
「通学路の満開の桜に葉が混じり、彩りを与える頃...」
新入生の挨拶を先程終えた隣人の名前は霧谷 朝日といった。自己紹介でそういった。長い黒髪が春の日に照らされ輝いている。彼女が自己紹介を終えると出席番号が隣の自分にも番が回ってくる。直前の彼女と比べるとお世辞にもいいとは言えない自己紹介をしてしまい場が静寂に包まれた。不安感が増した。
全員が自己紹介を終えた。全員を覚えるのは無理だと諦めていたので、僕の席の周囲の人を覚えることに尽力した。右のラフな制服を着た男子は速水 類人といった。趣味は料理。滞り無い挨拶で場の空気を掴んでいた。後ろの席の背の高い男子は大林 恵太。趣味は筋トレとジム巡り。見た目通りだと思った。てか巡りって何だよ...。前の席の女子は小鳥遊 小鳥。趣味はぬいぐるみ集め。自己紹介では小鳥が2つあることに言及し、あだ名を求めていた。そんなわけでとうとう僕の高校生活が幕を開けた。
自己紹介が終わったらもちろん最初の授業!!とはいかず、いろんな決め事があるらしい。委員会だとか係会だとか定番のアレだ。まずは学級委員を決める。先生が立候補のアナウンスをかけた。先生の口が閉じるよりも先に左の席から空を切る音が聞こえた。
「ほかに立候補はありませんか?」
空気は動かなかった。学級委員は霧谷に決まった。司会は霧谷に移り、委員会の立候補を募っていた。僕は動かなかった。面倒事はやりたくなかった。僕は彼女と真逆だ。みんなも同じだろう。
決め事はあっという間に終わり、休み時間になると唯一中学校が同じな友達に話しかけに教室を移動した。クラスのことや雑談をした後廊下を歩いて教室に戻った。机に戻り気付いた事がある。左隣の机に参考書がおいてある。次の授業は国語だが、参考書には数学の文字が書いてある。ただの自習道具だろうと違和感を誤魔化すとちょうどチャイムが鳴った。初めて見る白髪交じりの国語の先生が簡単な自己紹介のあと授業を始めた。
(つまらない先生だな)そう思った。もう少し自己紹介やレクリエーションとかは無いのだろうかと思ってしまったが、ここは県2番手の進学校。学習に前向きな証拠なのだろうと思った。
一方左の生徒は学級委員だけあって真面目に授業を...授業を...受けていなかった!!!
(ウッソだろ学級委員!?)めちゃくちゃびっくりした。違和感はあったが国語の時間に数学の参考書を解いていた。後ろの生徒からは背中で見えていないだろうが僕の席からはバッチリ見えた。授業中に指摘するのも高校生活の支障になりそうだったので休み時間に指摘しようと決めた。かなり悩んで決めた。そのせいで決めた瞬間にチャイムが鳴った。
休み時間。指摘してみた。
「霧谷さん、さっき数学解いてなかった?」
回答は衝撃的なものだった。
「いいのいいの、学校の授業は大事だけど自分で勉強しないと受験で困るから〜」
前言を撤回しよう。彼女は僕と反対側の人間どころか同種だった。




