賢者と信徒連盟
-第49説 賢者と神徒連盟-
あまりの意味不明な状況に選也は、ローブ集団に向かって叫んだ。
「なんだよ、お前達! 」
悲鳴と、足元に伝う赤く粘っこい液体。
アイツらは本気で殺しに来ている。
選也の質問に、彼らの一人は演説でもするように、こう答えた。
「我らは《神徒連盟》! 神を軽んずる、不届きな者達に制裁を下す、聖なる使者! 今宵は《氷の賢者、レイト》の悪しき所業、断ちに来た! 」
《氷の賢者》、選也はその言葉を聞いて、既にローブを着た人達の中央に追い込まれている男を見る。
彼は警官という盾を失い、自分の身を守るだけで精一杯という様子だが、冷静さは失っていない。
「またお前たちか、今度は何の用だ。」
いや、むしろ余裕を示すかのように、呆れた口調で集団に語りかけた。
彼の言葉の後、怒りに歪んだ形相で、囲んでいる全員が種の入った瓶を構える。
「何の用? そんなの決まってるでしょ! あなた達は神の領域を犯したの、それを償うにはまだまだ奉仕が足りないわ! 」
話は見えないが、どう考えてもいい状況ではない。危ない、と思った選也は殆んど反射的に、賢者の前に飛び出した。
直後、予想を裏切らない《神術使い》達の攻撃………蔦での打撃と、種から吹き出した甘い香りが周囲を支配する。
途端に霞む視界と、震える身体。
(なんだこれ、毒か? )
蔦は烏が自動的に防いでくれているが、空気中に漂う、目に見えない魔術には対応できない。
選也はなんとかそれを防ごうと、自分の周囲に風を起こす魔法を唱え始める。
しかし。
目の端に映る、快活そうな茶髪のショートの女の子と、首から滲むように広がる痛み。
選也の視界は暗転した。
※
ようやく目を覚ましてみると、そこは病院のベッドの上。
傍らには涙を流す両親の姿がある。
選也は状況をようやく理解した。
「父さん、母さん、仕事はいいの? 」
きっと自分はあの連中に負けてしまったのだ。しかもそのせいで、両親は仕事を休むはめになっている。
父は叱るように選也を怒鳴った。
「仕事? 今はそんなもの、どうでもいい! なんであんな場所にいたんだ、なんで連絡してくれなかった! 」
「ごめん、なさい。」
魔法の事を語っても信じてはくれないだろうし、選也には言い返す言葉がない。
更に言葉を続けようとした父を、母が無言で止めた。
母は言う。
「選ちゃん。お医者様がね、傷は大したことないから、明日にでも退院できるだろうって。」
選也は両親の優しさに、逆に胸を締め付けられながら、頷いた。
「そっか、良かった。」
窓の向こうには、ほんの小さく、紫烏の姿がある。今日は本当に、《魔法》が多くの人を傷つけてしまったし、自分のやったことが正しい自信もない。
選也は混乱する思考を黙らせるため、静かに目を閉じた。
そして、次の朝のニュースで、あそこにいた警官のうち十数人の死亡を知ることになる。
つづく。




