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魔法でよくね?  作者: 富士見の娘
魔法との出会い編
4/67

持ち上がった疑惑と親友の言い分

―第4説 持ち上がった疑惑と親友の言い分―


「あいつが最後に言ってた言葉、なんだったんだ? 」


選也の言葉に、彼の親友は首を傾げ、


「え? あのモブキャラっぽい発言の? 」


と、とぼけた顔でそんなことを言う。


「まぁ、そうだけど、そうじゃない。」


選也は自分の真剣さが伝わって無いことを感じながらも、もう一度問い直した。


「魔道都市がどうの、ってところだよ。」


しかし、秀真は態度を変えない。彼はいつもの調子で、


「魔道都市? ああ、あるよ、というかあったよ。それが? 」


と的はずれな回答をしてくる。

選也は出来る限り厳しい顔を作って、秀真に言った。


「お前、真面目に俺の話聞いてる? 」


「え、聞いてる聞いてる。なんで? 」


それでも、秀真は頑ななまでにその態度を変えなかった。だから選也は、「もう、いい」と短く言って、秀真にそのまま直球で疑問を投げることにした。


「じゃあ、答えてくれ。魔道都市も魔法も本当にあったなら、《それをお前が壊した》ってのも本当なのか? 」


勿論、疑っている訳ではない。この質問は「嘘だ。」と答えてくれるのを期待しているのだ。


「………。」


秀真は選也の目を見て、少しの間沈黙したが、また表情を笑顔に戻して答えた。


「俺は《なにもしてない》よ。」


選也はそれに少し被せるように怒鳴る。


「なんだよ今の間!? 怖いよ! 」


秀真はへらへらと笑った。


「いやー急に思いもよらない質問されたからさー。ネタでも言おうと思ったんだけど、思い付かなかったわ。」


「こんなとこで芸人魂出さなくて良いよ! 後、あいつのあんな発言があったら、この質問は予期できただろ!? 」


選也は内心安堵しながら、親友にいつものようにツッコミを入れる。

すると、秀真もいつものように、冗談っぽく言葉を繋ぐ。


「えー。俺、心を読む魔法は使えないからなー。」


「だろーな! お前は心どころか空気読めねーもんな! 」


「あと、古文と英文も読めないぜ! 」


「さすが古典と英語のテストで丸一つ無い解答用紙を貰った勇者! 」


選也はそう言った後、もうそろそろこの暴走を止めようと「そうだ。」と話題を変えた。


「この本、暫く貸して欲しいんだけど。いいか? 」


選也の手には、さっきから持ったままの魔道書がある。秀真はそれに目を向けると、目をしばたかせた。


「ん? その、『猿でも分かる! 魔法指南書! 』のこと? 」


「そんな題名なの!?」


選也はぎょっとして表紙を確認する。

すると、そこにはデフォルメされた、謎としか言いようがないキャラクターと、《猿でも分かる! 魔法指南書! ―これで出来なきゃ猿以下よ? ―》という文字が確かに入っている。


「マジで魔道都市にもあるのかよ! 猿でも分かるシリーズ! 」


選也は本を地面に叩きつけた。

秀真は驚愕の表情と冷や汗を浮かべながら、慌てて本を拾う。


「なんで投げるの!? 偉大な猿でも分かるシリーズ様を!」


選也は怒りに満ちた表情を浮かべて言う。


「そいつは俺の魔法使い=(いこーる)賢人というイメージを壊した。」


「やめて! その台詞、これ読んでも分からなかった俺の心にダイレクトダメージ! 」


「おまえ、猿以下かよ!? 」


「そうだよ! 悪かったな! それやるから、もうその話題やめよ? ね? 」


「え? くれんの? 大事なもんだろ? 」


「いや、別に。それ、タンスの高さ調整位にしか使わないから要らない。」


「さっきの偉大発言どこいった! 」


「そんなこんなで。

タラララッタラー、選也は魔道書を手に入れた! ただちょっと湿っている………。」


「RPG風!? てか湿ってんの、あ、本当だ!! 」


「濡れた地面に投げたからな、お前が。」


「悪かったって………。それよりさ、猿でも分かるシリーズ以外の魔道書って無いの? もっとほら、ちゃんとしてるやつ。」


「名前をそこに書いたら死ぬ系? 」


「なんでその仕様!? それ魔道書じゃないからね! フツーにこれみたいに、魔法の使い方とか分かるやつ! 」


「うーん、あったと思うけど………。どの棚の下に挟んだか忘れたわ。」


「他のも高さ調整に使われてんのかよ!? 」


「厚みがあって、いい感じだったから、つい………。」


「気持ちは多少分かるけど、流石にやめて! こういうのは神聖なもんだから! 」


「神聖なる家具達の守護神。」


「そんなの俺の知ってる神聖じゃないやい!」


「まぁ、気が向いたら探しといてやるからさ。今日は帰ろうぜ、流石にこの強気ファッションで過ごすのはキツいわ。」


「そうだな、俺も変な目で見られそうだし。」


選也はそう言って歩き出した秀真の右腕に、目を落とす。その傷跡はやはり酷く痛々しい。なのに、親友はそれを当たり前のように受け入れている。きっと、襲撃は今回だけで済む話ではないんだろう。


選也は同じことが起きない方法を考えた。

そして、ただ一つ思い付いたのは、《秀真の無実を証明する。》というものだった。

それから、そのために必要なことを考える。


(魔道都市とはなんだったのか、そこで何が起きたのか………。)


きっと秀真は聞いても答えてはくれないだろう。普段から秀真は真面目な話題には取り合わないやつだ。ちゃんと魔道書を探してくれるとも思えない。


選也は、自分一人で出来ることを考え始めた。


―つづく―

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