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魔法でよくね?  作者: 富士見の娘
追試奪還戦編
25/54

決着と気象異変

-第25説 決着と気象異変-


「うあああ! 」


悲鳴を上げる秀真とは対照的に、選也は冷静そのものだった。


「校舎裏あたりで降りるぞ。」


しかし、秀真はその言葉に納得がいかないようで、風の音に負けない様に大声で選也を怒鳴る。


「落ちるの間違いだろ! 」


選也はそれにあきれ顔になって、


「そんなことない、安心しろ。」


と子供のワガママをたしなめる親の様に、秀真に語り掛けた。


「今までのお前の行動の何処に安心要素があったよ!? 」


秀真はその後も、必死で主張するが、意味はないわけで、


「よし、行くぞ! 」


と首根っこを掴まれて、選也が詠唱で起こした下降気流の中に道連れにされる。


「お願いだから、話を聞けって! 」


そして、選也は綺麗に着地し、秀真が落下同然に地面に叩きつけられたのは言うまでもない。


「うん、もう、今日は早く家に帰って、大人しくしてよう………。」


選也は、そんな、涙目で呟く秀真の肩を軽く叩いて、ゲームの続きを急かした。


「ほら、早く行くぞ? 」


「へいへい、仰せのままに………。」


反論しても無駄だろうから、秀真は渋々頷いて、選也の後を走り出す。



校庭に出ると、盛大な拍手と歓声が二人に降りかかった。


選也も秀真もそれに少し戸惑いながら、早足で生徒会員の女子学生が立っている場所に走る。


「終わりました、確認お願いします。」


選也がそういってカメラを取り出すと、女生徒はそれを受け取って、中身を確認した。


「………この一枚、場所はあってそうだけど、なんか大変なことになってない? 」


「気のせいです。」


そうして確認が終わると、女生徒は頷いて、選也に言う。


「じゃあ、あなたたちは三番目のゴールね。」


「三番目………。」


選也はがっかりした。


あんなに頑張って急いだのに、結局は邪魔が入ったせいで、不正組に負けてしまったということだろう。


しかし、そんな落ち込む選也に、同じチーム、追試再開希望組の一人が笑顔で話しかけてきた。


「おかえりー。」


選也は、きっと慰めのつもりで、無理に浮かべた笑顔だろうと思い、申し訳なくなって頭を下げる。


「ほんと、ごめん。」


だが、そんな心配は無用だったらしい。


「なんで謝るんだよ、俺達のチームの勝ちだぞ? 喜べよ。」


「へ? 勝ち? 」


「うん、俺達が一番で、あいつらが二番目。」


話しかけてきた男子生徒は、少し残念そうな顔をしながらも仲良く話し合っている生徒会員二人を指差した。


それは、あの不正組ではない。


「え、他の二人は? 」


選也は慌てて男子生徒に聞いた。

男子生徒は苦笑いを浮かべながら、それに答えてくれる。


「あー………あいつら、ね。一番最初に帰って来たらしいんだけど、カメラに写真が一枚もなかったみたいでさ。」


選也はその言葉にはっとして、秀真の方を見た。そして、目線を向けられた秀真は、選也の予想が当たっていることを証明するように、グーサインを作る。


(やりやがった。)


不正組と公園で出くわしたあの時、秀真は彼ら二人のカメラのデータを消していたのだ。


悪いことだと分かっていつつも、これには選也もグーサインを返さずにはいられない。


そんな無言のやり取りを横で見ていた、男子生徒は、感慨深そうに、選也にこんなことを言った。


「お前、変わったよな。」


「え? 」


突然、飛んできた予想外の言葉に、選也は目をしばたかせる。

男子生徒は、選也が疑問そうに、自分の顔を見てくるのに気づいて、慌てて続けた。


「いや、何て言うかさ。小中の時のお前ってなんか、いつも難しそうな本ばっか読んでて、無口だし、話しかけづらかったから。」


「そうかな? 」


選也は、その言葉に首を傾げる。

男子生徒はその様子を見て笑い、目線を、つまらなそうに足で絵を描いている秀真に向けた。


「あいつと会って、こういう行事にもよく参加するようになったし、友達も増えたろ。」


選也も釣られて秀真を方を見ると、秀真は暇になったのか、近くの生徒にちょっかいを出しはじめている。選也はその様子を暫し観察してから、苦笑いを浮かべて言った。


「まぁ、そうかも。」


男子生徒はそれを聞くとなぜだか嬉しそうに笑って、選也の肩をたたく。


「俺もお前のこと親友だと思ってるから、なんかあったら頼ってこいよ? 」


「ありがと。」


選也は、秀真以外の親友、いや、友達なんて、あまり考えたことが無かったから、なんだか悪い気がして記憶を辿った。


彼の名前は池田恵(いけだけい)、そう言えば、追試で揉め事になっていた教室に、最初に引っ張り込んでくれたのは彼だった気がする。


そして、そんなことを思い出すと、なんだか嬉しいような照れ臭いような気持ちになって、それを隠すように冗談っぽく笑って言った。


「流石は陸上部一の熱血漢だよ。」


池田はそれに対して、運動部らしい、快活な笑みを浮かべる。

そこに、遠くから声が聞こえた。


「池田ー! 今日打ち上げ来るだろ? 」


声の先では、赤点組の皆が、騒がしく打ち上げについて話し合っている。

池田は馬鹿でかい声で呼び掛けに答えた。


「行くに決まってんだろ! 」


それから、選也の方をみて、


「お前も来るか? 」


と誘う。

選也は直ぐに首を横に振った。


「遠慮しとく、秀真のために、テストの練習問題作らないといけないし。」


「そっか。」


池田はそれに残念そうに答えて、人の群れに消えていく。

池田が去ると、入れ替わりに、秀真が駆けてきて、選也の手を引いた。


「選也、選也! 」


「なんだよ。」


秀真は呆れながらも、嬉しそうな秀真の声に耳を貸す。


「雪が降ってる、積もるかも! 」


「は? 」


秀真の言葉通り、空からは小さな雪の結晶がちらほらと落ちてきていた。

選也は驚いて自分の目を何度もこする。


「今、夏だよな!? 」


しかし、秀真はこの異常性を理解出来ないほど馬鹿なのか、


「夏だって雪くらい降るだろ? 」


と選也を嘲笑った。

選也は呆れるが、騒いでいた生徒たちの声が不自然なく雪についてのものに変わったことで状況は変わる。


「おー、雪合戦できるじゃん! 」


「雪めずらしー、明日は休校かな? 」


選也は唖然とした。


「ええ!? 俺がおかしいの!? 」


選也は自分の常識を書き換えなければいけないのかも知れない。


-つづく-

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