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彼氏が猫と入れ替わったようです‥偽装恋人の時よりカワイイのですが?  作者: ノーネアユミ


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1/2

1 告白は打算的に


「シャーロット、恋人が呼んでるよ」


「あ、本当ね」


 放課後の教室で友人とおしゃべりに興じていた私を、恋人が呼びに来る。



 眉目秀麗(びもくしゅうれい)で伯爵家の跡継(あとつ)ぎであるザイオン・ネコットだ。


「シャーロット、一緒に帰らないか?」


「もちろん」


 彼と一緒だと、だいたい伯爵家に寄ってお茶がふるまわれるから、私としてはありがたい。



「じゃあ先に帰るわね」


 友人に断りを入れて、私はザイオンと馬車乗り場まで歩いた。



「今日は珍しい魔導書もあるんだ。暗くなったら家まで送るから、一緒に考察しないかい?」


「あら素敵」


 私たちは魔法を学ぶため、魔法学院に通っている。


 貧乏男爵家の娘で見た目もパッとせず、勉強以外にとりえもない私。


 それでもイケメンの恋人がいるのには理由があった。





「シャーロッタ・ニャ―ルス嬢、少し時間をもらえるかい?」



 去年の秋、昼休みに伯爵令息から校舎裏へ呼び出された。


 きれいな顔に、私は緊張しまくる。



「私の恋人になってくれないか? 期間は1年半ほどなんだが」



 しかし心臓のドキドキは、後半部分を聞くと同時に静まった。



 期間が決められている、お付き合い。


(つまりは偽装恋人かぁ)


 私はため息をついた。人生って、そこまでうまく行かないらしい。



 本物の告白ならともかく、偽装であれば別に嬉しくもないのねー。


 新発見だわ。



「他の女生徒から敵意を向けられるのが嫌なので、お断りします」


 私は即座に断った。



 まあ、告白が恥ずかしくて契約を持ちかけただけかも? と一瞬だけ思ったけどね。


 無表情な彼からは、特に好意を感じなかったから。



 そしてボンボンの気まぐれにしては、令息は妙に真面目(まじめ)な顔をしている。


 罰ゲームの類ではないようだ。


 つまり、冗談でなく本気でこの提案をしているみたいだけど‥理由が分からない。



「何で私なんですか」



 とりあえず意図(いと)をたずねた。


 私である必要があるかもしれないのだから。



「私に興味がないことと金に困っていそうな所だ」



 そこかい。しかし‥図星だ。調べはすんでいるのね。

 ま、それならやっぱり断っても大丈夫そう。



「別に興味がないわけじゃありませんよ。しょっちゅう見つめていたじゃないですか」



 ザイオンは学年が1つ上だけど、廊下とか中庭で顔を見かける時が良くあった。


 そのたびに私はウットリしていたはずだ。


 虫よけが欲しくても、私もその虫の1匹であることは知らないのか?




「ああ、勝手に観賞用にしていただろ?」



 あ、そこまでバレていたのか。



 そう、私がしていたのは厳然たる観賞。

 恋愛感情など、かけらもなかった。



(だって、顔のきれいな男の子を見るのって楽しいじゃない。恋愛感情がなければ苦しい思いもしなくてすむし)



 ザイオンは学科も違う先輩だから「見るだけ」にするにはちょうど良かったのよ。


 見過ぎて迷惑をかけるのは避けられるし、周りの女子が黄色い声を上げるから、探しやすくて重宝していたのだ。



「私は今、親から縁談を進められている。しかし学生時代くらいは、家の事情より魔術に専念したい」



 だから卒業まで偽装恋人を受け入れてくれそうな「打算的な」相手を探していたんだと。



「それで私と」


「ああ、君なら成績も良いし魔術の話題なら続きそうだ。恋人のフリをしてくれれば、相応の報酬をはらおう」



 私は納得した。つまりは契約だ。


 伯爵家の嫡男であれば、家を継がなければならない。


 親の決めた婚約者は断れないし、交流もそれなりに行う必要があった。


 彼は、それがわずらわしいのだろう。



(理由は分かった。う~ん、お金は欲しいし、どうしよう)



 学院の卒業まであと2年半もあるのに、私の所持金は余裕がなかった。

 

 今のままではやりたいことができない。金策は絶対に必要。



「いくらくれますか」


 なので、すぐ報酬の交渉に移っちゃった。テヘペロ♪



「千カッツォではどうかな」


「ん~、2千カッツォなら引き受けましょう。千は前金で欲しいです。手持ちが厳しいので」



 1年半も行動を制限されるなら、これくらいは欲しい。



「千は高いぞ。前金で5百カッツォ出そう。経費は必要だろうしな。半年ごとに同じだけ出す。全額2千なら、どうだ?」


「了解です!」


 自分のプライドなんて置き去りにして、私は了承していた。


 それなら卒業まで好きなだけ遊んで暮らせる。



(実験費用に糸目をつけなくてすむわ。ひゃっほう!)




「ところで、お付き合いするにあたって、確認したいことがございますが」


 私はこれから彼氏(嘘)になる予定の男性に、気になることを問いかけた。



「なんだい?」


 伯爵家令息はアルカイックスマイルを浮かべている。



「ネコット先輩って、顔と身分と財産以外では、一体どこが長所なんでしょうか?」


「え」



 ザイオンは、一気に真顔になった。なぜ?



 苗字は全部猫か犬にします。貨幣単位はカッツォ(鰹)で。

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