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男装女子と善人女子  作者: 私信
狂犬と善人編
40/40

最終話 おかえりとただいま

最終回です。ここまで読んでいただきありがとうございました!


 今日も私はいつもと同じ通学路を歩く。

 すると、久しぶりのハルキちゃんに胸が躍る。


「おかえり、ハルキちゃん!」

「はい、ただいまです! つむぎさん」

「ハルキちゃんが休んでいる間、みんな心配してたよ?」

「ホントですか?」

「うん。不良さんたちも家に行ったらしいよ。組員さんたちに怯えてすぐ帰ったみたいだけど」

「へぇー。まあ、あいつらにはいい薬ですよ」

「ふふっ……」

「ど、どうかしましたか?」

「いや、ハルキちゃんは変わらないなぁって」

「つむぎさんの方こそ! ボクが休んでいる間、ご迷惑をおかけしました」

「そんなことより、学校行こ?」

「はい!」


 すると、下級生のみんなが校門前で迎えてくれる。


「早乙女先輩、おはようございます!!」

「うん。おはよう、みんな」

「こ、これがつむぎさんの言ってた弟子入りしたいヤツとかノロケ聞きたい連中か……」

「面白半分でやってる子も結構いるんだけどね」

「つむぎさん、失礼します」

「えっ?」


 そう言うとハルキちゃんは、突然私をお姫様抱っこして、周りの人たちをどけた。


「おら、どけ!」

「ふふっ……狂犬さんのハルキちゃんも可愛いね……!」

「そ、そうですか?」

「……あれ? どうしてやめるの?」

「いえ! 照れるので……」

「そっか。残念だなぁ……」


 私が残念がっていると、昇降口にいる不良さんたちが挨拶してくる。


「「「おはようございます!!」」」

「あ、おはよう。不良さんたち」

「よう、不良三兄弟」

「春木! お前んちってやべーな!」

「そんで、そんなヤツを従える姐さんはもっとやべーな!」

「さすがです! 姐さん!」


 不良さんたちが拍手すると、他の生徒たちもつられて拍手する。


「それじゃあ、行きますか!」

「うん!」


 それから、ハルキちゃんに降ろしてもらう私。


「じゃ、またあとでね!」

「はい! またあとで!」


 それから、私たちは階段のところで分かれた。


 後から聞いた話では、ハルキちゃんは教室で質問責めにあったらしい。

 狂犬モードを発動させるも、あんまり効かなくなってきたみたい。

 ハルキちゃんも、少しは被害者の気持ちがわかったかな?

 なんてことを少し考えた。私もこのときは、ハルキちゃんを完全に許しきれていなかったからね。



 それから昼休み。


「どけぇ!!」


 そう怒鳴り散らす声に怯えてどける下級生たち。

 その声の主は、もちろんハルキちゃんだった。


「つむぎさん! こんにちは!」

「……うん、こんにちは」

「たくさん話しましょう!」

「うん。でも、その前に少しいいかな?」

「はい! なんですか? というか、トーンが低くてこわいんですけど……?」

「言葉遣いが悪いのを直してほしいんだけど、直せるよね?」

「はい、ごめんなさい……」

「うん。あとさ、今日を待ってたのは私だけじゃないから」

「えっ?」

「はい。出てきていいよ? 被害者の子たち」

「「「はい……」」」

「あっ……!」


 そう。この子たちが登校できるようになるまで、私は毎日お見舞いに行った。

 ハルキちゃんが悪いことをしたことはきっかけでしかない。

 もしかしたら、この学校に在籍していて入院をしたことを知っている生徒がいれば、私はその人たち全員にお見舞いに行ってるかもしれない。

 …………っていうのは冗談だけど、それくらい他人を想っているのは事実だ。


「ハルキちゃんなら、なにをするべきかわかるよね?」

「はい! 暴力でしか反論できなくてごめんなさい!!」

「「…………おう」」

「…………うん」

「はい、それじゃあ仲直りして?」

「「「えっ?」」」

「どういう意味ですか? つむぎさん」


 ハルキちゃんがそう言うと、廊下にいた下級生たちが教室内に入ってくるよう、不良さんたちに合図する。


「不良さんたち、いいよ! じゃあハルキちゃん、ノロケ話して?」

「はい?」

「私はノロケ話で人の心を動かした。ハルキちゃんも、きれいごとだけじゃ世の中は回らないってのはわかってると思う。でも、逆にそれをやる努力を怠るのもダメだから、頑張って?」

「はい、わかりました! 久しぶりにつむぎさんとイチャイチャするためにも!」


 こうして、ハルキちゃんのノロケ話が始まる。

 内容は伏せるけど、最初から最後まで私の話ばかりだった。

 ハルキちゃんから見た私の可愛いところ、カッコいいところ、優しいところ……

 十五分くらい経ったところでみんな飽きてたけど、全員ハルキちゃんの誠意はわかったと思う。


「……で、つむぎさんの笑顔。これを見ると元気が出るんだ。どのくらい元気が出るかというと…………」

「ハルキちゃん、もういいよ?」

「えっ? まだ一時間は語れるのにですか?」

「うん。これでみんなハルキちゃんが反省してるのはわかったと思うから」

「……はい、そうですね!」

「みんなもこれでわかったよね?」

「「「はぁ……」」」


 理解した……というよりかは、みんなヘトヘトに疲れていた。

 おそらく、ハルキちゃんの話が思ったより濃い内容だったからかもしれない。

 私はハルキちゃんのそういうところも可愛いと思うんだけどなぁ。


「じゃあハルキちゃん、放課後ね?」

「はい!」

「みんなも行っていいよ? もっと聞きたい人は明日も話すから、楽しみにしてて!」


 そうは言っても、「はい」と答える人は一人もいなかった。



 それから放課後、ハルキちゃんが迎えに来る。


「つむぎさん、帰りましょう!」

「うん!」


 みんなに知れ渡っているせいか、みんな挨拶してくる。

 それがハルキちゃんにとっては不快のようだ。


「なんですかね、周りのヤツら」

「校内公認のカップルってことじゃないかな? それとも、ハルキちゃんは嫌?」

「はい! あんなの、便乗してるだけですよ」

「そうかもしれないけど、私は嬉しいよ? ハルキちゃんの人柄が認められて」

「…………そうですね」

「不機嫌だね」

「そうですか?」

「家に寄っていってもいい?」

「はい!」


 うん。やっぱり、こっちの方がハルキちゃんらしいなぁ。




「では、部屋に来てください」

「うん。あっ……」

「ど、どうかしましたか?」

「今日は暴走しそうだから……どうする?」

「大丈夫です! ボクも同じなので!」

「じゃあ、ハルキちゃんが攻める?」

「はい。慎重にやります」


 それから、部屋に鍵をかけるハルキちゃん。


「念入りだね……」

「……久しぶりのイチャイチャを、犬とかに邪魔されたくないので」

「うん。じゃあやって?」

「はい!」


 ハルキちゃんをベッドに誘い、押し倒される私。


「ふふっ……」

「では、歯型をつけていいですか?」

「じゃあ、まずは首元ね? あとこれ結構跡残りにくいから、ガブガブ噛んでいいよ?」

「……ボクは犬ですか?」

「うん。可愛い大型犬かな?」

「では、念入りにつけます」


 こうして、身体中にマーキングされる。

 もちろん胸とかの直接恥部に関連するところは避けてもらったけど。


 それから一時間くらいして、ハルキちゃんが放心状態になる。


「はぁ……」

「お疲れさま、ハルキちゃん。ただ、今日は噛む力が強かったね」

「いえ……久しぶりに会ったので……すみません…………」

「バテてるね。大丈夫?」

「ちょっと休みます……」

「じゃあ、次は私が攻めるね?」

「えっ、ちょっ……あの!?」

「大丈夫、抱きしめるだけだから」

「ならいいか……ってなりませんから!」

「ハルキちゃん……だめ?」

「…………まあいいでしょう。誘い方がエロ……セクシーだったので」

「ありがとう。そういうところ、大好きだよ」

「ボクも愛してます……」


 ギュッと抱きしめると、ハルキちゃんの噛んだ部分が少しうずく。

 それでも強く抱きしめる私と、それを受けるハルキちゃん。

 そんな夕暮れ時だった。


 翌日、歯型が残っている私を見て照れる人や興奮して話しかけてくる人が続出した。

 でも、そうやって騒いでもらった方がハルキちゃんの荒々しさも誤魔化せる。

 それに、こっちの方が私たちらしい。だから私は、素直に答えてみた。


「実は、ハルキちゃんに噛まれて……」

「つむぎさん!? それは正直に言いすぎでは!?」

「ふふっ……ハルキちゃん。それ、墓穴掘ってるよ?」

「……あっ!」


 そんなこんなで、今日も日常は過ぎていく。

ここまで『男装女子と善人女子』を読んでくださり、ありがとうございました!

本作はこれにて完結となります。

当初から「つむぎとハルキの関係がどうなるのか」や、「ハルキの狂犬さを見せられるのか」を描きたいと思って書いてきました。

でも、最後は二人のいつもの日常に戻っていく。

そんな終わり方にしました。


本来は10話で終わらせる予定でしたが、読者が増えるごとに書きたくなる気力が増しました。

なので、この作品をここまで続けられたのは読者の皆様のおかげです!


改めまして、最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!


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