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第1話_始まり_

六月の火曜日。


朝七時。


俺はいつも通り満員電車に揺られていた。


新卒で入社した会社に入って三か月。


毎朝の通勤は苦痛だったが、まさかその日が人生最後の「普通の日」になるとは思わなかった。


スマホが震えた。


【緊急速報】


見慣れない通知だった。


『市内複数箇所にて原因不明の暴力事件が発生しています。不要不急の外出を控えてください。』


周囲の乗客もスマホを見始める。


「なんだこれ?」


「テロ?」


そんな声が聞こえた。


次の瞬間だった。


車両の前方から悲鳴が響いた。


「キャアアアア!」


人混みが揺れる。


誰かが倒れたのかと思った。


しかし違った。


一人の男が、別の乗客の首に噛みついていた。


血が飛び散る。


車内が凍りついた。


「おい!何してる!」


サラリーマンが止めに入る。


だが噛みつかれた男は立ち上がり、目を見開いた。


白目だった。


人間の目ではなかった。


そして今度はその男が別の乗客に襲いかかった。


地獄が始まった。


叫び声。


血。


逃げ惑う人々。


車両はパニックになった。


俺は反射的に非常ドアへ向かった。


とにかく逃げる。


それしか考えられなかった。


ホームへ飛び出した瞬間、駅員の悲鳴が聞こえた。


改札付近でも同じことが起きていた。


人が人を襲っている。


警察官が制止しようとしている。


だが倒された警察官が数十秒後には起き上がり、今度は周囲へ飛びかかっていた。


その瞬間、俺は理解した。


映画やドラマで何度も見た光景。


だが現実で起きるはずがないと思っていた光景。


ゾンビだ。


俺は周りの人に流されつつもその騒ぎの反対方向へ走っていった。


生き残るために。


この日から始まる地獄を、まだ誰も知らなかった。


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