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ジルクの咆哮


 セシルは、今まさに命の灯火が消えようとしているジルクに、優しく話しかけていた。

 一同はそれを見守るが、もちろん魔物の言葉など誰にも分かるはずがなかった。


「ジルク。お前はもうレイさんやロイドさんとは一緒に生きる事は出来ない。どうだろう? 俺を主と認めて一緒に来てくれないか?」


 ジルクはセシルの言葉を聞くと、最後の力を振り絞り返答する。 


「······少年よ、お前は俺の大事な家族を守ってくれた。ありがとうよ。······だがご覧の通り、俺はもう長くは無い。お前の所へは行きたくても、それは叶わない願いだ。」


「ジルク、俺は魔物を生まれ変わらせる能力がある。瀕死の状態でも、俺を主と認めれば体は再生されるんだ。俺の仲間達にもそうなった奴がいるよ。」


「そ、それは本当かっ!? ······た、頼む、あの親子を苦しめた帝国軍と戦わせてくれ! 我が主よ! 」


 セシルは黙って頷く。



<サーベルタイガーを仲間に加えますか?>



 例の声が聞こえて来た。


「もちろんイエスだ。ジルクを仲間にする!」



<了解しました。サーベルタイガーを仲間に加えました。>



 ――――すると突然、ジルクの体が眩い光で覆われる。



「こ、これは一体!?」

「ジルクーっ!?」


 レイ達は強烈な光で覆われたジルクを見て驚くが、その数秒後にさらに信じられない光景を目の当たりにした。


 先ほどまで命の灯火が消えかかっていたジルクが、全身の怪我がウソの様に消えて、勇ましく地面に立ち上がっていたのだ。


 しかも、その体は以前のそれよりも一回り大きくなり、全身の毛並みは黄金色に染まっていた。そして今までに無かった赤く勇ましいたてがみが頭部から上半身まで生え、2本の大きな牙はより一層鋭さを増していた。



「こ、こんな事って······!?」


 ジルクの傷を癒していたリアーナも、それを見守っていたアイラも、生まれ変わったジルクを見て驚きを隠せなかった。



「ジ、ジルクなのか!? ジルクーっ!!」


 レイとロイドがジルク方に駆け寄るが、2人はセシルに止められてしまう。


「悪いけど、もうジルクは俺の配下だ。あなた達の家族じゃない。」


「な、何を言っているんですか! ジルクはずっと僕達の家族だっ!!」


 セシルの言葉を受け入れず、詰め寄ろうとしたレイであったが、ロイドに肩を抑えられた。


「レイ、これでいいんだ。おそらくジルクもそれを望んでいる。」

「······う、ウソだ! ジルクは僕と一緒にいたいはずだ!」


 それでもレイはジルクの方へ歩み寄ろうとするが、突然ジルクがレイの方を見て凄まじい咆哮をした。


――――グガアアアァァァアアアーっ!!


 ジルク、いや、魔物サーベルタイガーの凄まじい咆哮で、レイは恐怖で後方に尻を突いてしまう。


「ジルクっ!? そ、そんな······!!」


 やがてジルクはセシルの方に歩いて行き、セシルの言葉を待った。


「サーベルタイガー、ジルク! お前に命じる! 魔物を蹂躙している極悪人タナトスの息の根を止めてくるんだっ!」


 ジルクはもう一度凄まじい咆哮をすると、観客席から出口付近にまで逃げ出していたタナトスを見つけると、力強く地面を蹴った。


 ジルクの駆けるスピードは、帝国軍のどの早馬よりも速く、しかもどんな障害物も高々と跳躍して乗り越え、あっという間にタナトスの元まで辿り付いてしまったのだった。


「ひ、ひ、ひいいいいいいーっ! 貴様らああっ、私を守れ!守るのだあああーっ! その魔物を倒した奴には金貨1000枚、いや2000枚くれてやるっ! な、何とかしろおおおーっ!!」


 タナトス側近の兵士は、生まれ変わったジルクの姿に心の底から恐怖し、もはや逃げる事も出来ずにその場に固まるだけだった。


 やがて、タナトスとその部下達はジルクにその全身を噛み千切られ、絶命したのだった。




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