11.運命
門番について行くと、そこは森だった。
「え、ちょ、この中に入っていくんですか!?」
うっわいい笑顔!
「ちょ、待ってくださいよー!」
こちらを気にかけてくれるものの、森の中を進むのは変わらないらしい。
道は道でも獣道のような、舗装されていない、ただ踏み固められてできた道を2人で歩いて行く。まだ昼前だというのに、森の中は太陽の光があまり入ってこないようで、薄暗かった。
5分ほど歩いたその先に、一軒のログハウスが目に入った。
それと同時に、門番も足を止める。
「もしかして、ここが目的地ですか?」
周りは青々とした木々に囲まれ、それでも道中とは違って日の光が差し込んでいたり、ちょっとした湖がログハウスの近くにあったりと、そこそこにいい立地なのではと思われる。
それでも、現代日本人からしてみれば、こんなところにいるのはリゾート的な目的のある人で、ここに住んでいるとかは考えたくないのだけれど、ともかく門番の様子からここが目的地だということは分かった。
そして、門番が初めて口を開いた。
『おい婆さん! 客を連れてきたぞ!』
『うるさい! 燃やすぞ!』
……これ、なんて言ってるの?
▲ ▽ ▲
失念していたと、そう言わざるを得ない。
そもそも、異世界で日本語が通じていることがおかしかったのだ。翻訳魔法というものの存在もヒントではあった。
まさか、これまで出会ってきた人々がそろいもそろって特別だったとは……。
『で、客ってのはこの子のこと?』
『ああ。アランが置いていったんだ』
『置いていった? どうして?』
『変態には会いたくないそうだ』
『ほほぅ?』
ログハウスから出てきた1人の女性が門番と話をしている。
徐々に女性の機嫌が悪くなっているような気がしなくもないが、たぶん気のせいだろう。
『次会ったら燃やす』
なんだか炎のようなものが女性の周りに見えるけど、気のせいに違いない。
『それと、婆さん宛に手紙だ』
『手紙? 誰からかな』
『狩人からだ』
あの、そろそろ僕も混ぜて欲しいんですがね……?
『とりあえず、俺はもう戻ってもいいか? なにせまだ仕事が残ってる』
『ああ、引き留めて悪かったね。だが、次からは博士と呼んで欲しいものだが』
『考えておくよ』
あ、門番が帰っていく。え、僕をこの女の人と二人っきりにするの? 自慢じゃないけど初対面の女の人と話せることなんて何もないよ? そもそも言葉が通じないわけだが。
「さて、そこの少年。まずはお茶でもごちそうしようじゃないか」
「え、日本語……?」
「ふむ、お茶よりも優先すべきは情報のすりあわせ、か。ともかく上がり給え。私はキミを歓迎する」
そう言うとログハウスへと歩き出す女性。
「何をしている? 上がらないのかい?」
「あ、今行きます!」
これが、僕と彼女との運命の出会いだった。
次回からもしかしたら一話あたりの文字数が変わるかもしれません。と、予告しておきます。




