第百八十七話 未知との遭遇、再び
「──これは宇宙人の」
「ウチュウジンノ?何か知ってるの、タロス君?」
しまった!宇宙人なんてこの世界の概念には無かったっけ!!
「いや、えーと⋯⋯あ!もしかしたら樹海の中にも知的生命体がいたりして?⋯とか考えちゃって〜!アハハ!」
実際は、遥か彼方の宇宙より飛来してきた異星人だが。
「⋯⋯そうよね。樹海は未だに謎だらけで、魔獣の種類も数もまったく把握できていないから⋯⋯もしかしたら、小さな人型の魔獣⋯魔人?なんかもいるのかもしれないわ!」
ミルトちゃんの発想がスゴい。小さな魔人ときたか。いや、待てよ。そういう可能性もあるのか?
「とりあえず、開けてみますかね?」
「チルドナって〜勇気があるんだね〜!」
「勇気っていうか⋯⋯どうせわたスたち行き詰まってるし、何でもやってみないと」
「そうだね〜。じゃあ〜開けてみようか〜!」
オレっちが頭の中でいろいろ考えてるうちに、エイベルとチルドナが積極的な行動に出ていた。
「結構、重いぃ!?」
蓋を持ち上げようとしたチルドナが苦戦していた。それを何気に見ていたオレっちは、ふと気づいた。
「⋯⋯なあ、コレ、模様みたいなのが刻まれてないか?」
よく見ると、波っぽい線が刻まれている。──ん?コレって──
「あー!もう!!こうなったら壊して──」
「チルドナ!ちょっと交代!!コレって、もしかしたら──」
やっぱり!何かの模様っていうか、絵だ!!しかもマス目になってるし、左端だけがワンピース欠けてる。
間違いない、これは──スライドパズルだ!!
カコン、カタン!カタン、カコン!
最初は特に何も考えず、適当に金属板を動かしてみた。そして、刻まれた線の組み合わせを探していく。
え~と、この線がここと繋がって、この線が⋯⋯あっ、ダメか。むむっ、こっちが下か!
「そんでもって、コッチがこうで⋯⋯」
15枚しかないから、そこまで難しくはなかった。
「へー⋯⋯船の絵なんだ?」
船は船でもえらいメカニックな船だが。⋯って、これって宇宙船やんけ!
ホエール型の金属の塊──この辺の波模様は、推進エネルギーの放射線か?
最後のマス移動から五秒後──ゴウン!っと大きな音が下から聴こえてきたと思った瞬間、オレっちは金属板ごと上昇した。
自動ジャッキされたのだ。
取っ手の方は、この自動開閉が故障した時に使う緊急時的なものだったのだろう。
だが、これでハッキリしたな。間違いなく、あの小さな宇宙人たちの仕業だ!
「よし!じゃあ、下に降りるぞ!!」
金属板の上からピョンと飛び降りたオレっちは、率先して地中へと続く階段を降りていった。
「おっ、明かりが点いた!」
階段の一段目を踏むと、途端に淡いオレンジ色の照明が点いた。
自動感知照明か。古き神々のアイテムでオレっちたちは暗闇でもフツーに視えるから特に必要ないけど。(昼間状態の明るさで視える上に、人工灯の判別もつく)
オレっち、エイベル、ミルトちゃん、チルドナ──四人で階段を慎重に降りていった。
コツ、コツ──ピタッ。
すぐに踊り場のような場所に出た。真正面の壁には、緑色に光る大きなパネルが一枚だけ埋め込まれていた。
「何だろ、これ?」
オレっちは好奇心からそのパネルにそっと触れてみた。すると、上の方からゴゴン!という大きな音が聴こえてきた。
「!?」
「どうやら、上の蓋が閉まった音みたいですね〜⋯⋯」
音があまりにも大きくてビックリしたが、チルドナの言う通り、入り口の蓋が閉じられた音だったのだろう。パネルは、緑色から赤色に変わっていた。わかりやすっ!
そこからさらに下へと降りていくと、十畳程の広さがある空間に出た。奥の方に、赤い金属壁が見える。そして、金属壁の右側で淡く光る黄色のパネルも見えた。
「色パネルがあるってことは⋯⋯ここに触れろということだよな?」
「他に何もないし⋯⋯触るしかないわよね?」
ミルトちゃんの言葉通り、触るの一択しかない。オレっちは意を決して、黄色パネルにそおっと触れてみた。
シュン!
赤い金属壁が半分に割れた。いや、扉が開いたのだ。
あれ?でも、継ぎ目なんてあったっけ!?
オレっちは、首を傾げながらも中を確認する。十人は余裕で入れそうだな──むむ、もしかしてエレベーター?
恐る恐る内側に入って、さらに確認。
あ、またパネルがある。今度は紫色だ!
「これで下に降りるのか?でも、降りる階を選択する数字が無いな」
「だとしたら、最下層までってことかしら⋯⋯?」
続いて中に入ってきたミルトちゃんが、不安気に言った。
それはそうだろう。樹海の地下の地下なんて、考えたら普通に怖い。でも、だからと言って地上に戻る気は無いが。
「よし、みんな乗ったな!押すぞ!!」
全員乗ったところで──ポチッとな!
オレっちは、紫色のパネルに触れた。
シューン!
扉が閉まり、音もなく下へと─いや、ホントに降りてるのか?動いてる感じがしないんだが!?
振動も無いし、音も無い。体内感覚も平常──もしかして降りてない?まさかの故障⋯⋯!?
「⋯⋯あー、随分と深い⋯⋯アレ、下になんかある?」
さすがのオレっちも不安になったが、チルドナがエレベーターの金属床を見つめながらそう呟いたので、少しホッとした。
「わかるのか?」
「それぐらいは」
チルドナはいろんな意味でポンコツなヤツだが、時々は役立つ。そうか。ちゃんと下に降りてるんだ。
シューン!
時間にして五分ぐらい?ようやく扉が開いた。
扉の外の照明は上の階よりも明るく、エレベーターから出たオレっちたちは、暗視魔導器を外した。
「何かの研究室⋯⋯ですかね?」
あー、うん。チルドナの言った通り、そんな感じの部屋。
一番手前の机の上には紙の束や本、ディスプレイや三面モニター⋯⋯?までが置いてあり、他の机の上にも、金属製の何かの装置や試験管などが置いてあった。
さらに奥には、小人化してるオレっちたちの背丈よりもデカいキノコや木の実、樹海の巨木の樹皮や葉っぱ、植物の草葉なんかも乾燥して積んである。
なんか大きな布の塊なんかも机の上に置いてあるし⋯⋯乱雑だな。
「タロス〜、コレって〜樹海だよね〜?」
エイベルが、モニターを凝視していた。
「そうだな。間違いなく樹海内だ」
机上の三面モニター画面いっぱいに映っていたのは、さっきまでいた樹海の景色だった。時折、魔獣が木々を移動する姿や、魔蟲が地上を這っている姿が映し出されている。自動画面処理されているらしく、暗闇の中でも昼間と変わらぬオールカラー仕様になっていた。
「樹海を研究するための場所っぽいけど⋯⋯だとしたら、研究者たちはどこにいるんだ?」
「夜だから寝てるんじゃないですかー?」
「そうね。時間的に真夜中だものね」
「じゃあ〜寝室にいるのかな〜?」
「寝てたら悪いけど、とにかく捜そう!」
所狭しと置かれている貯蔵物を避けながら、奥へと進んでいく。そうすると、簡素な木製の扉が見えてきた。
トン、トン!
礼儀として、ノックを二回。
「あの〜!夜分に申し訳ないのですが、道に迷ってしまって!!」
さらに声掛けしたが、返事はなかった。
「仕方ない。無断で入るとするか⋯⋯」
鍵は掛かっておらず、オレっちはそっと扉を開けてみた。
あれ?寝室じゃ無かった?
なんとその部屋は、キッチンだった。やや狭いが、現代的な調理用魔導器(?)があって、冷蔵魔導器(?)なんかもある。
驚いたその時、ガタ、ガタンと扉の向こう側から音がした。慌ててさっきの研究部屋へと戻る。
「あんれ〜?今回の交代は四人だっけチル⋯⋯?」
少し離れた場所の大きな茶色い布の塊から声がした。それと同時に、布の塊がバサバサッっと床へと落ちる。
ガタタッ!
見れば、椅子から立ち上がった眼鏡を掛けた若い男性が、唖然とした様子でコチラをガン見していた。キュ、宇宙人!⋯じゃなくて──
「小人っっ!!」
「小獣人っっ!!」
互いに驚愕しながら、しばし見つめ合った──
第十一話、第二十話にイラストを入れました。十一話はエイベルとジイジ。二十話にはタロスとフェアリー獣人(笑)の二人。




