北国の過酷な旅
1月7日追記・文章を少し修正しました。
昼ご飯を食べ終えた後、俺たちは早速ノーヅァンへ行く事になった。…とその前に、俺はアルベルトのいるフェスティへと向かう事にした。あいつも神父の事が気になっていたし、手がかりがあった事を伝えに行かないとな。
俺たちはワープを使ってフェスティに着き、アルベルトの家に向かうと玄関の扉をノックした。しばらくすると、扉が開いて中からアルベルトが現れる。
「おう、誰かと思えばお前たちか。俺に何の用だ?」
「聞いてくれアルベルト、俺たちが探していた神父の居場所をようやく掴めたんだ!」
「お、おい!それってマジかよ?」
「まだ確定はしていないけどね。だけど情報が無くて困っていた時にこの話が来たから、あたし達はそれに賭けてみようと思ったの」
「そういう事。…という事でアルベルト、お前も一緒に来てくれるよな?」
「当然だぜ!もしその情報が嘘だったとしても、確かめる価値はありそうだしな。よし、俺は今から支度をするからお前らはここで待ってろ」
俺たちは家の前で待機し、アルベルトの支度が終わるのを待つ。しばらくするとまた入り口の扉が開き、アルベルトがやってきた。
「よっ、お待たせ!そんじゃあ早く神父のいる場所まで行こうぜ。…で、場所はどこなんだ?」
「場所はノーヅァンの遥か向こうにある遺跡…って、ミントが言ってたわ。そこまでの地図はあたしが持っているから、それを見ながら行きましょ」
アルベルトを連れ、俺たちはノーヅァンへと向かう。ワープは一度行った場所にしか移動出来ないので、一度ハーシュに着いてからそのまま歩く事になった。
ノーヅァンから遠くにあるという遺跡、一体どんな場所なんだろうか。
俺たちは途中で休憩を挟みながら、遺跡に向けてただひたすら歩き続ける。しかし、歩いても歩いてもそれらしき建物は見当たらない。それにノーヅァンは相変わらず寒いので、北国住まいではない俺からすれば過酷な道だ。ああ、こういう時に乗り物があったらいいのになぁ。
「なぁクリム、本当に遺跡って奴はあんのかよ?俺もうくたくただぜ」
「地図にそう書いてあるからあるに決まってるでしょ、アルベルト」
「だろうけどよ…。そもそも、神父が遺跡にいるって情報は誰から聞いたんだよ?」
「黒い髪で、黒い服を着た子供がそう言ってたらしいわ。ミント曰くね」
「…は?子供が?ミント、お前そのガキに騙されているんじゃねぇか」
「だ、騙されてなんかいないもん!あの子はナオちゃんの本当の名前を――」
ミントがそう言いかけた途端、クリムは慌てて彼女の口を手で塞ぐ。危ない所だったな…。ナイスフォローだ、クリム。
「あ?ナオトの本当の名前?」
「な、何でもないわよアルベルト!さあさあ、さっさと先へ進むわよー!」
「お、おう…」
アルベルトは困惑していたが、それに構わず再び先へと進む事にした。しばらく歩いていると、空から白くてふわふわした物が降ってくる。雪だ。
「…雪が降ってきましたね、クリムさん」
「そうね。大雪になる前にさっさと到着出来ればいいんだけど」
しかし、そんな願いを嘲笑うかのように雪はどんどんと降ってきた。風の吹く音も聞こえ始め、本格的な寒波が俺たちを襲う。予め厚着を着ているとはいえ、寒さは完全にはしのげない。
このままでは吹雪になるのも時間の問題だ。…くそっ、俺たちは遺跡に進みたいというのに!
「さ、寒いよぉ…。みんなは大丈夫なの?」
「ああ、俺はまだ大丈夫だ。だけどこのままじゃ天候は荒れる一方だぞ…」
「そうね。皆、もし具合が悪いと感じたら一旦諦める事も大切よ。健康管理もしっかりしておかないと、今後の生活に響くからね」
フリントの言う通り、ここは一旦諦め翌日にまた出直すという手もありだろう。しかし――。
「…悪いけどフリント、あたし達はここで退くワケには行かないわ。今日中に教会にたどり着いて真相を確かめないといけないからね。あの子供が言ってた事が本当なのか嘘なのか…。それを確かめ終えるまであたしは意地でも帰らないつもりよ」
「それだったら、私もクリムさんについていきます!こんな所で諦めていたら冒険者としての名が廃りますからね」
クリムとナラは出直す気はさらさらないようだ。だったら俺たちも彼女たちについていくしかない。二人を置き去りにして、俺たちはこのまま帰るなんて最低な事は絶対にやりたくないからな。
寒波に苦しめられながら、それでも俺たちは目的地に向けて先へと進む。
(くっ、だいぶ天候が荒れてきたな…。ん?)
ふと、俺は目の前に人影らしき物を見かける。寒さのあまりに幻覚でも見えているのかと思ったが、よくよく目を凝らして見ると確かに人影があった。こんな所で何をやっているんだ…?俺は疑問に思いながらも、その人に声をかけてみる。
「すいませーん、ここで何をしているんですかー!」
声をかけてみたものの、返事は聞こえてこない。どういう事だ?やはり俺は幻覚でも見えているのだろうか?
「どうしたんだよナオト、声なんか上げて。そこに誰かいるのか?」
「ああ、人影らしき物が見えた。アルベルトもその人が見えるよな?」
「どれどれ…。おっ、お前の言う通りあそこに誰かが突っ立っているぜ。明らかに幻覚なんかじゃねぇ」
アルベルトも人影が見えるようだ。…という事は、やはりあれは実際に存在する物。
すると、人影は突然俺たちの方にゆっくりと近づいてきた。どうやら、俺たちがいる事に気づいてくれたらしい。
「だ、誰かがこっちに向かってくるよ!…って、あれ?あれれ??」
ミントがその人影を見て驚いた声を出す。俺も近づいてきた人物を見て、思わず驚いてしまった。
「き、君はあの時の…!?」
そこにいたのは、前に会ったあの黒い服を着た女の子だった。女の子はこの天候にも関わらず寒そうな素振りを見せず、ただ平然と俺たちの方を見ながら立っている。
「ナオちゃん、あの子だよ!さっきあたしが会ったあの女の子!」
「ああ、間違いない。俺が前に会った子だ…」
「あれが、ナオト君の言っていた黒い服の女の子?こんな寒い所によく一人でいられるわね」
「そうですね。冒険者でもない限りこんな危ない所に一人で来るとは思えないし…。も、もしかしてお化け!?」
「ばばば、馬鹿言わないでよナラ!…ミント、あの子が神父さんの居場所を知っているんでしょ?せっかくここで会ったんだから、ついでに道案内させて貰うようお願いできるかしら」
「え、あたしが?…うん、分かったよ!ちょっと待っててね」
ミントはそう言うと、女の子に近づいて話しかけた。
「あ…あのっ!あなた、さっき森で会った子だよね。あたしの事覚えてる?」
「……」
「え、えっと…。あなたは遺跡の場所を知っているんだよね?そこまで案内してくれる、かな?」
「……」
ミントが頑張ってあれこれ言うも、女の子の方は何も言わず黙っているだけだ。――と、女の子は突然後ろを振り向いて俺たちの元から去っていく。
「あっ、待って!あたしたち、道に迷ってて困っているんだよー!」
「――ついてきて」
「え?」
女の子はそれだけ言い残すと、向こうへと歩いていく。ついてきてって事は…俺たちを案内してくれる、という解釈でいいんだな?
「みんな、あの子どっかに行っちゃうよ!どうしよう!?」
「…ミント、ここはあの女の子の後を追っかけよう!もしかしたら神父のいる遺跡まで案内してくれるかもしれない」
「そ、そうなの?」
「あの子供は去り際についてきて、って言ってたでしょ。あたし達を罠に誘い込もうとしている可能性もあるけれど…とにかく、行ってみるわよ!」
「う、うんっ!」
俺たちは急いで女の子の後を追っかけ走っていく。だが不思議な事に、ただ歩いているだけの女の子に追いつく事は出来なかった。それどころか彼女はどんどんと俺たちの距離から離れていく。
「はぁ、はぁ…。クリム姉ちゃん、一体あの子はどこまで歩いていくつもりなの?いつまで経っても追いつけられないよぉ」
「そんなのあたしに聞かれても困るわよ…!――あっ、皆一回止まって!」
クリムの指示に従い、俺たちは一回足を止める。
「どうしたんだよクリム、早くしないとあの子が…!」
「――いえ、どうやらあたし達は目的地にたどり着けたみたいね」
「へ?それってどういう…ああっ!」
前を見ると、そこには無数の建物が並んでいた。建物の殆どはボロボロに壊されており、人が住んでいる気配は全くしない。
気が付くと、さっきまで降っていた雪はすっかり止んでいた。
「…間違いないわ。あたし達はたどり着いたのよ、『遺跡』に」
クリムは目の前の光景を見てそう発言する。――俺たちはついに、目的地に到着出来たのだ。




