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亡者が町へやって来る!?

 ――ナオトとアルベルトが二人のイレギュラーと死闘を繰り広げていた頃、クリム達は突然いなくなった彼らを捜しに町を駆け回っていた。




「ナオトー、アルベルトー!どこにいるのよー!?」


 あたし達はいなくなった二人を探しに、手分けして町中を走り回った。…まさか、またどこかでイレギュラーの親玉と戦っているのかしら?前にそいつが現れた際にはあたし達も呼ぶようにって言ったのに、まったく…世話が焼けるわね。


「あ、クリムさん!ナオトさんとアルベルトさんは見つかりましたか?」


 そんな事を思いながら走っていると、向こうの方にナラがいた。


「…駄目よ、あいつらの姿は影も形も無かったわ」

「そうなんですね。私も一生懸命探しているんですけど、どこにもいなくて…何だか心配です」


 ナラは心配そうな表情をしている。――と、向こうからフリントとミントの二人があたし達の所へやって来た。


「クリムちゃん、ナラちゃん!そっちはどうだったの?」

「全然よ」

「…そう、見つからなかったのね。あの二人はそう簡単にやられるような人達じゃないのは知ってるけど、それでも不安だわ。早く見つけないと」

「ええ、そうね。あいつらを見つけたらうんと叱ってやらなくちゃ」


 あたしはそう決意した。その後、ミントがあたしにこう言ってきた。


「ねえクリム姉ちゃん、もしかしたらナオちゃんとアルベルト兄ちゃんは外の方へ行っちゃったんじゃないかな?誰にも邪魔されない所でイレギュラーと戦っているとか」

「その可能性が一番高いわね。いや、そうとしか考えられないわ」

「それじゃあ、皆で外の方へ行ってみましょう!もしも二人がイレギュラーと戦っているのであれば、遠くからでも目立つのですぐに見つけられるはずですよ」


 あたし達は二人を探しに一旦この町を出る事にした。今ならあいつ等も出没していないし、それに町の皆も既に避難完了させてあるから少しだけここから離れても大丈夫よね。


「…あれ?ちょっと皆、一回止まって。あれは一体何かしら?」


 皆で行こうとした途端、突然フリントが向こうを指差しながらそう言った。あたし達はその方を見ると、遠くからたくさんの人たちがこっちへとゆっくり向かってくるのが分かる。動きは不自然な程に遅く、どこか不気味だ。

 …いえ、ちょっと待って。よく見たらあの集団、身体の半分が紫色に染まっててそこからトゲのような物が飛び出しているじゃない。まるで普通の人間とは思えないわ…。あいつ等は一体?


「あ、あれはもしかして…!?」


 フリントが奴等を見てこわばった表情になっていく。反応から察するに以前あいつ等と会った事があるのかしら?あたしはそれについてフリントに聞いてみる事にした。


「フリント、あいつらの事何か知ってるの?」

「ええ。…クリムちゃん、前に病院で死んだはずの偵察兵が化け物になって襲い掛かってきた話を覚えているわよね?」

「昨日の出来事だからはっきりと覚えているわよ。それがどうかしたの?」

「まだはっきりとは確定していないんだけど、その化け物になった時の彼と見た目がそっくりなのよ。…まさか、あの人たちの身体にも液体が取り付いているの?」


 あたしは実際にその時の光景を見ていないから何とも言えないけど…。とりあえず、フリントの言う事が正しければ今のあいつ等はあたし達の『敵』だという事ね。でも、一体誰がこんな事をしたのかしら?


「ク、クリム姉ちゃんどうしよう!これじゃあ先に進めないよぉ」


 ミントはあたしの服をぎゅっと掴みながらそう言ってくる。かなり怯えているようだ。…無理もないわね、あんな得体の知れない奴等が突然来たら誰だって怖がるに決まってる。正直に言うと、あたしも少しだけ怖いと思っているんだから。

 とにかく、ここであたし達がやれる事は一つ。あの連中を全員倒して先に進むしかない。あたしは皆にその事を伝えた。


「こ、ここはやるしかないんですね…。あの人達には申し訳ないですけど」

「だからといって、このまま放っておいたら町の人達が襲われてしまう危険性があるわ。覚悟して挑んだ方がいいわね」

「…う、うんっ!あたしも出来るだけ頑張ってみる!」


 皆、あたしの意見に賛成してくれた。話が早くて助かるわ、ありがとね。――それじゃあ、さっさとあいつ等を倒しに行くわよ!

 あたし達は目標に向かってまっすぐ走った。すると、集団はあたし達の事に気づいて不気味な顔をこっちに向けてくる。あたしは思わずその顔にゾクッとしつつも、すぐさま杖を持ち魔法を唱えた。


『ライトニングッ!』


 魔法を唱えた途端、奴等の頭上に激しい雷が落ちてくる。それをまともに食らった連中は次々とその場に倒れて行った。

 どうやら一人ひとりはそこまで強くないようね…。これならすぐに片を付けられそうだわ。


「皆、ここは手分けしてこいつ等を倒すわよ!」

「分かったわ!…ミントちゃんは私についてきて。もし私が危なくなったらすぐに援護をお願いね!」

「りょーかいだよ!」


 あたし達はばらばらに離れ、分担しながら敵を確実に倒していった。ナラは大剣を振り回して相手を一刀両断させ、フリントは自慢の格闘技で相手をボコボコにし、ミントは時々あたし達を援護しながらクロスボウを撃つ。

 そのおかげで、殆どダメージを受ける事なく敵を全員倒す事に成功した。


「ふぅ、これで全員倒せたようね。皆大丈夫?」


 フリントが手をパンパンと叩きながらそう言ってきた。あたし達三人は彼女に大丈夫だと一斉に言う。


「良かったわ、皆が無事で。だけど――」

「だ、だけど?」


 全員倒したにも関わらず、フリントの表情は暗いままだった。だけどって、どういう事?


「妙なのよ。前にナオト君が偵察兵を倒した時には、その人の身体が元に戻っていったのに…」


 そう言えば昨日、病院でナオトがそんな事を言ってたわね。偵察兵を倒したら身体から紫色の液体が飛び出して、元の姿に戻っていったって。


「…という事は、こいつらはまだ完全に倒しきれていないってワケ?」

「分からないわ。だけど嫌な予感がする…。皆、気を付けて」


 フリントがあたし達にそう警告した、その時だった。


「わ、わわ…!みんな、あれを見て!」


 突然、ミントが驚愕した表情で地面を指差した。あたし達はすぐさま振り返ると、そこには信じられない光景があった。


「な、何よあれ…?どうなってるの!?」


 倒れて動けなくなっていたはずの敵たちが、虫みたいに這いずり回るような動きをして一斉に集まっていく。あまりにも奇妙すぎる光景に、あたしはまた思わずゾクッとなってしまった。


「…私の予感はどうやら的中したようね。皆、何が来てもいいように構えて!」


 あたし達は一斉に武器を構える。敵はどんどんと集まっていき、やがて一つの球体のような形へと変貌していく。一体何が始まるの…!?

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