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楽勝で攻略できると信じていました。  作者: くらげ
第三章 ドールと砂の国
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結婚式 【ライラ】

十一月某日。


 結婚式にぎりぎり間に合った。


 伯爵夫人やスズさん、レイの妹のリリーちゃんは私が戻ってきたことを喜んでくれた。


「伯爵様ご迷惑をおかけして。 ルビアさんの問題も解決していただいたそうで」


「わかったから、さっさと離せ。抱きつかれるのが一番の迷惑だ」


 まず、借金を払ったというアレス様にハグをした。すぐひっぺがされた上、さらに蹴り飛ばされたけれど。散々注意されていたけれど、本当に蹴るとは。

 でも、触った範囲では、ドールのように硬いところは無かった。


「僕との再会のときは何もなかったのに……」


 こういう時に伯爵をたしなめるはずのレイはぶつぶつ文句を言っている。


「今のは、ライラが悪い」


 イリア様にも叱られた。


 鈴忘れるな。三歩以内に近づくな。三歩以内に近づかなければいけないときはテーブルを挟め。絶対触るな、猛獣よりも危険だと思えって注意されていたのにわざと抱きついたのだ。


 でも、本当にアレス様が無事で良かった。  


「皆様心配をおかけして申し訳ございませんでした」


 頭を下げ終わる前に、


「帰郷のご挨拶は済みましたね? 」

「急いで花嫁衣裳の調整をしますよ」

「幅ぎりぎりじゃありません?」

「何食べたんですか?」

「料理長に連絡して、夕食からダイエットメニューに切り替えてもらって」


 お針子隊に引き摺られて行った。


 というか、男性陣がいる前で余計なこと大声で言わないで!




十一月吉日。 



ビーズが織り込まれたきらきら光るヴェール。 私が嫁ぐときに身につけていたふわふわの南方風のドレスにもビーズがこれでもかと縫い付けられている。赤い宝石がたくさん連なった金細工のネックレス、イヤリング、ティアラの一揃いはベリルシュタイン家が結婚祝いに贈ってくれたものだ。

最後にチェーンの長さを調整した紫水晶のペンダントを身に着けた。


 改めて姿見を見る。


「あの、化粧ちょっと濃くないですか?」


 鏡の中の私は別人みたいになっている。あまりけばいとスズさんとのバランスがとれなくなる。


「この衣装には絶対これくらい必要よ。

 これでもいかがわしくならないように気をつけたつもりなんだけれど」


「いか……」


「姉のお友達(・・・)が乗り込んでくる可能性があるんでしょ?

 あんたの今日の仕事は、姉の不祥事をぐだぐだ謝ることじゃないの。こんな女に奪われたなら文句言えないってくらい美人になることなの」


「……」


 レイもイリア様もレペンス学園に通学しておらず、貴族の子女との繋がりは薄い。

 結婚式のついでに縁の薄い貴族に顔と名前を覚えてもらおうと手当たりしだい招待状を送ったのだが、学園の情報を集めた限りでは、姉は相当やらかしていたようで、私の態度しだいではウエストレペンスの評判が落ちてしまう。

 レイは、「父さんが散々評判下げているから、これ以上下がりようがないよ」とは言ってくれているけれど。


 どこまでも強気なマーガレットさんの言葉に言い返せないまま――


 レイが控え室に入って来た。


「ドレスきつくない?」


 第一声がそれかい!  

 失礼な。がんばってウエスト落としました。


 お針子さんとマーガレットさんが口の端をぴくぴく震わせている。


 一生に一度ならここは、無難でも定番の「きれいだ」って、言ってくれるくれるところでしょ?


 「他に言うことは?」


 ここは私が寛大になってチャンスを与え……


「無理して全部食べなくていいから」


 お針子の一人がぷっと吹き出してしまった。

 た、確かに指一本分の隙間は欲しいところだけれど、嫁いできた頃がちょっと痩せすぎていただけで、決して太っているわけじゃない。


 デザートにはラインハルト君が再現してくれた南方のお菓子が出るそうなので、その分はお腹空けとかないと。


 ピンク系のバラでまとめられたブーケを手に持つ。


「もう準備できた?」

「ええ」


 私は差し出された彼の手をとった。


 廊下の外にはイリア様の腕に手を絡めているスズさんがいた。

 スズさんの方は真っ白なドレスに白バラのブーケだ。ため息が出るほどきれいだ。


「ご結婚おめでとうございます」

「お義姉様もおめでとうございます」


 互いに笑いあう。


「では、行こうか」


 領民は私たちのお披露目を待ちかねているのだ。



姉の同級生のご令嬢達が真っ白なドレスでお祝い(・・・)に来てくれたのは面食らったが、その日、私とレイは領の皆に祝福され、名実共に夫婦になった。

マーガレットさん……『ゲイシャー作戦』で公爵令息の接待役を務めてくれた女性。


ラインハルト……幽霊が見える人。プリムラと協力して『南方の菓子』の再現をする。


白ドレスのご令嬢達……ライラ(本当はナイラ)被害者の会の皆様。

ナイラがライラの名を使って攻略対象者達に粉かけていたせい。

人の婚約者にちょっかいかけといて、自分はあっさり結婚とは何事か、と。

でも、ライラがピンクの民族衣装で臨んだせいで、あてが外れた模様。



皆様最後までお付き合いいただきありがとうござ……


終わっていません。もうちょっと続きます。


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