2 委員長ポジ、逆争奪戦
静まり返った教室で、教壇に立つ先生は作り笑いを浮かべコツコツとチョークで黒板を叩いた。
「本当に誰も委員長に立候補しないの?」
「…………」
「私が学生の頃は、委員長も副委員長も争奪戦だったのに」
そんなふうに煽られたって、残念ながらそれは違う世界線、いにしえのストーリー。クラスメイトたちもみんな黙ってうつむくばかり。
やる気があるなら、とっくの昔に名乗り出てるし、どれだけ待っても一生誰ひとり名乗り出る気配すらみられない。
何を隠そう、この私も立候補する気持ちなんて一ミリもない。
だって委員長とかめんどくさいだけだし、それ以前に注目されたり必要以上に人と関わるようなことは極力避けたい人見知りの引っ込み思案。
「ではこちらから指名しましょう。吉澤さん」
どこかで聞いたことのある名前だなぁとぼんやり未乃莉が考えていた時、斜め前の席から舞花が振り返りしきりに目配せしてきて。
そういえば昨日、一軍女子!可愛い推せる!って舞花ちゃんが大絶賛してたっけ…と遅ればせながら記憶がよみがえってきたのは自分にしては上出来だって内心自画自賛していると背後から声が聞こえた。
「それは私が入試一位で、中学の時は生徒会長を務めていたからですか?」
なるほど。入試の結果が一位だったから入学式で新入生代表の挨拶を任されたのかと納得する一方で。
はっきりした良く通る声、物怖じせずに自分の意見を口にする様子は、たしかに委員長には適役かと思われた。
「お願いできる?」
質問には答えないくせにゴリ押しする先生。これだから大人ってずるいよね。
そして舞花ちゃんったら、あからさまに一軍女子こと吉澤さんに熱い視線を注ぎすぎ。
「私はバトン部に入る予定で色々と忙しいので、副委員長でしたらお受けします。委員長は次点の方にお願いできませんか?」
希望ヶ丘女学院のバトン部といえば強豪で有名。たしかに部活を頑張りながら委員長として活動していくのはハードで大変だろうな、と未乃莉が同情した時。
「分かりました。そうしたら吉澤さんには副委員長をお願いします。では、佐藤さん」
突然、名前を呼ばれて未乃莉は椅子の上で飛び上がった。
「は、はい」
ん?この流れ、まさか……
「代わってあなたに、委員長をお願いしたいのですが」
驚きのあまり、思わず未乃莉は立ち上がった。
「えっ!私が……委員長!?」




