第6話 ダンジョンマスター
「では、参りましょうか」
セバスは、俺達の先頭に立って進んでいく。
その直ぐ後にブルガリが続いたが、俺とアマンダは顔を見合わせて、
「ねえ、セバスがリーダーなの?」と、アマンダが俺の耳に口を寄せて聞いてくる。
俺は首を傾げながら、
「取り敢えず、様子を見ようか」と返した。
セバスは、無人の野を行くが如くになった。
いや、魔物は湧いて出るのだが、その瞬間に消滅させられている。
空間魔法か何かを使っているようだが、何をしているのか分からない。ただ、周囲に現れた魔物は、その瞬間に消滅するだけだ。
そういう調子で、ダンジョンの最下層まで、全く魔物と戦わずにやって来た、
いや、魔物はたくさん出たんだけどね、その尻から消滅するんだよね。どんな魔物が出たかも分からないままだ。
ボス部屋なんかもあったけれど、ここでも姿を見る前に、セバスに消されてしまった。
セバスの後を着いていく俺たちは、ただただ歩くだけでよかった。いや、それはそれで退屈なんですけど。
ということでラスボス部屋に入ったが、ここでも魔物は、現れる前に消えたとしかいいようがなかった。
そしてラスボスの部屋の奥にある小部屋に進むと、目の前にダンジョンコアが浮かんでいた。
「主殿は、ダンジョンマスターになられますか?」と、セバスが聞いてくる。
「いや、俺はいい」と答えると
「では私が、ダンジョンマスターになりましょう」と俺の返事も聞かずに、セバスはコアを掴み、コアはセバスに吸収された。
セバスは俺たちを振り返り、
「さて、これでこのダンジョンの攻略は終わりました。地上に戻りますか」と聞いてくるので、
「セバスは、ダンジョンマスターになっても地上で暮らせるのか?」と聞くと、
「全然問題ありません。では、地上に戻りましょう」セバスのその言葉と共に、俺達はダンジョンの入り口のところに転移していた。
そしてダンジョンを出たところで、
「今、馬車を呼んでおりますので、暫しお待ちください」とセバスが言った。
「馬車を呼んだ?」俺が怪訝な顔をして聞き返すと、ガラガラと車輪の音がして4人乗りの箱馬車が俺たちの方にやって来た。
「馬車が来た」
唖然とした俺が抑揚を無くした声を出す。
セバスは、到着した馬車の扉を開けて、
「どうぞお乗り下さい。主殿がお泊まりのホテルの馬車ですぞ」
と言った。
走る馬車の中で、
「主殿、この街の領主になる気はございませんか?」とセバスが聞いてきた。
「領主?」
話の筋道が読めなかった俺は、おうむ返しに答えた。
「ダンジョンマスターになったときに、ダンジョンの領域を、地上の街全体にまで広げましたので、私がこの街の支配権を得ました。それはつまり、この街の真の支配者は、主殿になったということでございます。今の領主は、既に肩書きだけのものに成り下がっております。主殿さえ良ければ、ご領主の地位を禅譲させるのは容易いことにございます」
「いや、俺はそんな肩書きは欲しくない。この街の支配権を手に入れたのなら、セバスがこの街の真の支配者としてやっていけばいい。俺は、表舞台に出るのは嫌だ。仮にボスになれたとしても、裏のボスでいたいんだ」と希望を言うと、
「畏まりました。それでは、仰せの通りに、いたします」とセバスは頭を下げた。
暫くすると馬車が高級ホテルの前で泊まった。
そのホテルに入ると従業員が、通路をつくるようにズラリと並んで、
「お帰りなさいませ。大旦那様」と昌和しながら頭を下げた。
支配人が先導し、俺達は最高級の部屋に案内された。
スイートルームに通されて、寛ぐ前に、
「セバス、大旦那様とはどういうことだ?」と聞くと、
「先ほど申し上げましたように、ダンジョンマスターの権能で、この街全体をダンジョンとしましたので、この街の土地と建物は全てダンジョンマスターである私のものになりました。その上で、私の固有スキルである降臨を使ったことで、この街の者は、私がこの街の真のオーナーであると認識を書き換えられたので御座います」とセバスが、恐ろしいことをさらっと説明した。
「何、その反則技。ねぇ、そんなことが出来るんだったら、その力を使ってこの国をご主人様に献上しなさいよ」とアマンダが突っ込む。
「そう簡単には行きません。降臨する領域が、このダンジョンのように、既に私の支配下になっていないと降臨は使えないのですよ。ですから、降臨を使って王になるには、その前に、その国を支配していないといけないのです」
「な〜んだ。使えない〜」と、アマンダがブー垂れる。
「すると、この街をダンジョンマスターとして支配したから、このホテルも支配したというわけか」
「そういうことになります」
「よく分からんが、今まで、真のオーナーなんかいなかったに、セバスが真の支配者として降臨したことで、急に、真のオーナーがいたことになったのか?」
「その認識で合っております」
「それって洗脳とどう違うんだ?」
「洗脳は意識と記憶を書き換えますが、降臨は存在の定義を書き換えます。ですから、洗脳が解けて認識が元に戻るというようなことは、降臨には起こり得ません。しかも、支配領域に居るもの全てに否応なく適応されます。洗脳のような個別の働きかけは必要ありません」
「使われてしまえば、気が付かないうちに、絶対的な効果が生まれるのか。セバスを見たことがなくても、セバスを支配者と認識するようになるんだな。その上、降臨の効果は覆せないんだな。とんでもない無敵スキルだな。セバスが味方で良かったよ」
「味方どころか、私は主殿のしもべであり、分身でございますよ」
「それで、セバスがこのホテルの真のオーナーになったから、私達の宿泊代はタダになるの〜?」とアマンダ。
「勿論ですよ」とセバスが微笑んだ。




