第17話 セバスの王都進出
迷宮都市ランドリアにあるダンジョンのダンジョンマスターになったセバスは。ダンジョンの領域をこのランドリアの街全体に拡大した。
そのため、ランドリアの街にある建物は、全てダンジョンの一部とみなされ、ダンジョンマスターであるセバスの支配下に置かれた。
そして、セバスの固有スキル降臨は、その支配地域に居る者に対して、セバスこそが真の支配者、絶対の支配者であると認識を書き換えた。
そして、このランドリアには、領主ランドリア伯爵の居城がある。
今のセバスは、その領主の居城で堂々と暮らしており、領主に代わって仕事をすることも多いのだが、領主自身を始め、領主館に住む者はもちろんのこと、領主館を訪れる者達は誰もそれを不思議に思わない。
セバスはときどき、領主の居城に役人や商人を呼び付けて、何事かを命令しているが、居城を訪れた者たちは、セバスは伯爵家の先代からの執事で、ランドリア伯爵家の裏の支配者だと認識しており、セバスが実は最近現れた者だという認識はない。
しかも、セバスが好き勝手に、誰かに命令したり、騎士や兵士や使用人を動かしても、伯爵自身を始めとして、誰もがそれを当然のこととして受け止めていた。
ランドリアの情勢が落ち着き始めた頃、セバスは、王都でダンジョンマスターの権能を使う方法を検討していた。
ダンジョンマスターの権能は、ダンジョンの外では使えない。
これは、当然のことだが、裏返せば、王都までダンジョンを拡張出来たら、王都でもダンジョンマスターの権能を使えることになる。
しかし、ランドリアの街から王都まで、馬車で20日間は掛かる。ランドリアのダンジョンコアの力を届かせるには、王都はあまりにも遠過ぎる。街道の幅に限定して、細長く伸ばしたとしても、王都までの距離の半分も届かない。
これを覆す手はないものか?とセバスは考えている。
思い浮かぶ手段がないわけではない。
その中で有力なものは、王都までの空間を歪曲させて、王都までの距離をゼロにするか、もう一つ上の次元にダンジョンコアを移動させて、ダンジョンコアから距離の概念を取り除くか、そのうちのどちらかだ。
王都までの空間を歪曲するには膨大な魔力が必要だ。その上、それを維持するとなると、セバスの魔力を持ってしても不可能だ。
となると、残る手段は、ダンジョンコアを一つ上の次元に移動させることだ。一つ上の次元からは、下位の次元の距離は意味を持たない。ランドリアに居ながら、王都にもダンジョンの影響力を及ぼすことが出来るようになる。しかし、これは理論的な可能性であって、実際にこれを実行すると、どのような弊害があるかは未知数だ。
そこでセバスは、これの実行に保険をかけることを考えた。
それは、バーチャルで、ひとつ上の次元をつくり、そこにダンジョンコアのコピーを置いてみたのだ。
この試みは予想以上に上手くいった。
一つ上の次元からは、下の次元の距離は意味を持たないので、セバスは、この世界のどこに居てもダンジョンコアの権能を使えるようになった。
ただし、使える権能は、あくまでもコアのコピーとしての権能でしかないという制限があった。
まず、コピーの力しか働かない場所では、ダンジョン支配の高度な権能が使えなかった。従って、セバスはコピーコアのダンジョンマスターの権能で王都に転移したり、王都でダンジョンモンスターを召喚出来ても、究極のスキルである降臨は使えなかった。
しかし、セバスの作戦では、それは重要なことではなかった。
「ヘンケル、出でよ」
王都のスラムの一角に転移したセバスが、コピーコアの権能で召喚したのは、4本の腕を持つが、2本な腕は体内に隠して、背中に特大の戦斧を背負った大男だった。
「ついて来い」
そのヘンケルを従えて、セバスが向かったのは、スラムの禁令奴隷市場だった。
スラムでは、売買が禁止されている奴隷の売買を行う市場がある。
ここで主に扱われているのは、死刑確定指名手配犯、重罪奴隷、他国の失踪貴族、精神破綻者、売買禁止種族などである。
死刑確定指名手配犯は、賞金首でもあるが、その懸賞金の数十倍の金額で取引される。多くの場合は、他領での破壊工作員として、常に貴族の需要がある。
重罪奴隷は、貴族が自領での死刑囚を金策のために売り払ったものだ。これも、他領での破壊工作員として買われていく。
次に、他国の貴族。これは主に誘拐によって、その国で失踪扱いになった他国の貴族達だ。主に美姫が多く、貴族からの需要は高い。
精神破綻者は、単なる殺人狂などで、あまり買い手はつかない。
売買禁止種族は、エルフ族など、売買が発覚すると戦争の火種となる種族の売買で、これは奴隷市場に出ること自体が珍しい。
そんな禁令奴隷市場だから、開催場所は毎回変わり、市場に通じる道の角毎に、凶悪なゴロつきどもが屯していて、王都の警備隊でも容易には入って来れない。
その道を、タキシードに身を包んだセバスと、その背後に付き従う2メートル半もある大男が進んでいくが、流石に彼らを遮ろうとする者はいない。
セバスは市場の場所を確信した足取りで歩き、ほどなく、禁令奴隷市場に着いた。




