転換、そして、、、2
マーガレットが遅れて着くと既に料理は並んでいた。
席に座りながらピースに問い掛ける。
「オリヴィアは?」
ピースはにっこり笑って答える。
「あの子はまだ自室で修行中」
各々が皿に食べ物を取って食べている中、ジンはマーガレットの気持ちを意識しないために、今一度これまでの依頼の要点を整理する。
(オリヴィアは依頼の情報元を明かしたがらない。誰も指摘しないため本人もリラックスして過ごしている。そしてテュールの腕、アレはレッドアームに近い何かを感じる。俺の秘密を知るナタリア、俺自身も明かしていない秘密がある。全部が根本的に繋がっている気がするんだよなあ、、、待てよ、テュールの腕が侵食したことを報告した時オリヴィアは心配していた。侵食は依頼主が与えた情報になかった想定外なのか?オリヴィア自身も依頼主のもとに中々案内してくれない、、、そろそろ)
「来るのか?」
その言葉を発したのはジンではなかった。
いつから七つ目の椅子に座っていたのか、そもそも彼がいつからそこに居たのか、なぜ思考を読み取れたのか。
その場にいるオリヴィアを除いた六人には理解ができなかった。
考えるより先にジンは立ち上がりブラスターを突きつける。
「誰だ」
「やあ、ジン・ヴォルフ君」
男の声は落ち着いている。ブラスターを頭に突きつけられてブラフで冷静を装う者もいるが、目の前の男は違う。心の底からリラックスしているのだ。
「私は、今回の依頼主だよ。我が旧友よ」
ジンの頭にノイズが走る。
マーガレット達は心配しながら駆け寄る。
その様子を見て男は気づく、
「おや、サイント族か!こんな、、、こんな奇跡的な偶然があるのだな旧友!ずっと見ていたのに気づかなかったよ」
マーガレットは困惑しながら聞き返す。
「何を言っているんですか!ジンに何をしたんですか!」
「旧友、話していないのか?」
男はジンに問う、答えを聞く前に自己完結していく。
「そうかそうか、情が生まれてからイレギュラーの連続だな」
ジンが苦しそうにしていることなど気にもせず男はテュールを指差し命令する。
「そこの実験体をこちらに渡したまえ」
はい、分かりましたと言う訳もなく、全員が戦闘態勢に入ろうとする。
「やめておけ」
全員の体が透明の重りがついたように地面に押さえ付けられる。
「名前は、、、テュールだったか?まあ何でもいい、早くこっちに来ないとお前にとっての家族は死に、お前はこいつらの遺族になるだろうな」
あまりにも悪趣味なジョークに笑っているのはその男一人だけだ。
テュールだけ体にかかる圧が無くなり動けるようになる。選択肢など与えるつもりは無いのだろう。
ジンは頭のノイズどころではない。押さえ付けられながら言葉を必死に吐き出す。
「この力は、、、、お前は、、、何なん、、、だ」
男はさも当然かのように答える。
「神だよ。その言葉通りの意味だ。ああ、そうか何も知らずにここまで来たのか。再び相まみえた時に詳しく話そう、、、いや、少し話すか」
ジン達は押さえ付けられながら男が話すことを聞くことになる。
「約二千年前、私は考古学者だった。ある惑星で遺跡を掘り起こしている時に見つけたのだよ。神の遺物、神骸を」
テュールはジン達が殺されないように少しずつ近づき挑発しながら隙を伺う。
「なにその名前、センスないね」
男は軽く笑いながら挑発を受け流す。
「私の考えた言葉ではないのだよ。その遺物を使い多くのテクノロジーが生まれた。多くの物理法則が解明された。テュール、魔法と科学の違いは何だと思う」
「、、、魔法を見たことがないから分からないね。強いて言うなら、あなたの妄想と僕らの現実とか?」
男は苦笑する。
「挑発が下手だな。彼らはきちんとした教育をしてくれなかったのかい」
「そんなことない!」
テュールは食い気味に反論する。
すると男は大袈裟に反応し小馬鹿にする。
「挑発のやり方を見せただけだ。落ち着きたまえ」
男は改めて一息ついた後話の続きをする。
「魔法と科学の違い、、、マルチバースでは明確に分かれている世界もある。しかし、この世界では魔法と科学は非常に密接に絡まり合っている」
何処からか通信装置を取り出し手に取る。
「例えば、私は念話ができる。しかし、この装置も同じようなことができる。ではそこの技術員この二つはどのような関係にあるか答えたまえ」
まるで教師のような口ぶりでナタリアに答えるよう促し、押さえつける力を少し弱める。
「知らないっスよ、神の力の方が上位互換とかそんな話っスか、、、クソッ絶対ぶん殴る!」
口調が乱暴になるが体は一向に動かせる気配がない。
「丁度いい回答、しかし答えはこうだ。この二つに上も下もない。神の力と人間によるその再現に過ぎないのだからな」




