脱獄4
すると突然先ほどまで電源が抜けていたようなマッドが動き出す。
「痛かった!けど外!!、、、、じゃない!」
いきなりの大声にオリヴィアがビクッとしてマーガレットの後ろに隠れる。ジンは何をそこまでビビっているのだろうかとオリヴィアを観察する。
「マッド、爆弾のせいで床が抜けてアタシ達下に落ちちゃったっス」
「外、出れない?二度と」
ジンがここぞとばかりに、得意そうな顔で話しはじめる。
「俺様たちはロープを垂らしてここに降りてきた。つまり、上に上がる手段はあるわけだ」
ナタリアとマッドは目を輝かせる。しかし、そんな都合のいい話だけをジンがするはずもなく、すぐに交換条件を提示する。
「今からこの地下の施設である人物を確保することになってんだが、それの手助けをしてほしい」
二人はすぐに首を縦に振った。マッドとナタリアが先頭に立って、研究所の奥に進み始める。オリヴィアとマーガレットは今日何度目かわからない呆れ顔をしながら、ジンに近づく。
「ジン、女の子だから誘ったわけじゃありませんわよね?」
「あの二人が何かの役に立つとは思えませんが」
ジンはそんな二人に向かって反論する。
「バカ野郎、このゲヘナプリズンから壁を吹き飛ばして脱獄しようとする脳筋コンビだぞ。技術力とクレイジーさは役に立つ時が来るはずさ、って俺の勘が言ってる。いでっ!オリヴィア蹴るなよ」
「勘なんて馬鹿な事を言うからですわ」
「あのな、勘ってのは長年の経験から培われるもので、、、」
マーガレットがマイペースに自分の疑問をぶつける。
「あのマッドという大男の回復力は目を見張るものがありました。彼もあなた達と同じ種族なんですか?」
話を腰を折られたもののジンは特に考える様子もなく即答する。
「あれは、エタル族だな。見た目は俺たちと似ているし、違いは緑色の目と瞳孔が金色ってことくらいだ。俺様も以前に数回会ったことがあるが、絶滅はしていないがレアな種族ではある。基本的に心臓と脳みそが同時に、しかも完全に飛ばなければ死にはしない種族だ」
「あのしゃべり方も種族特有のものなのですか?」
「精神的ショックによる可能性もないとは言えないが、そもそもエタル族は種族間で別言語を話すんだよ。つまり、 こっちの言語に合わせて話しいる時点でエリートに近いはずさ」
「なんでも知っていますのね。どこでそんなこと知るのか教えていただきたいですわ」
ジンは少し表情を曇らせた後で答える。
「長い間生きて経験を積めば色々と知ってんのさ」
「ジンは私とそこまで年齢変わらないですよね?」
「年齢の話するなんて最低だねぇエリア長」
ここに来るまで交わす言葉は少なかったジンとマーガレットだが、少しずつ調子を取り戻し始めているようである。しばらく雑談を挟みながら歩き続けているとオリヴィアが大きめの声を出す。
「あっ!道を間違えましたわ。少し戻って左でしたわ」
「気になったことがいくつかある。オリヴィアはなんで道が分かってんだ?ここはどう考えても機密の場所だろ。後、なんで誰も追ってこないんだよ。あんな爆発があったなら普通は職員がここに流れ込んでくるはずだろ」
前を歩いてたナタリアが口を開く、
「職員が来ないのは装備の問題っス。この刑務所は内側での揉め事は事後処理、加えて床も壁も厚いので外に逃げられない前提で職員が配備されてるんスよ。だからこーゆー騒動が起きた時はおそらく他惑星に協力要請を出して来てもらうって感じっス。それまでは現場保存するくらいじゃないっスかね」
「一番近い惑星からくるとして20分から30分くらいか、、、現場保存されてることを考えれば来た道から出るのは至難の業か。まぁ地下施設があるなら別の出口もあるだろうし何とかなるか」
「問題はピースですわね。見つからないか心配ですわ」
「東に二キロメートルでしたよね」
「なら、大丈夫、一番近い惑星なら、来るのは、西!」
「よく知ってるなマッドさん、、、だっけ?」
「俺!マッド!!!さん、要らない!」
「オーケーマッド」
ジンはオリヴィアに向き直り、囁くように話しかける。
「お前にした質問にまだ答えてもらっていないぞ」
「それは秘密です。信用できる方からの情報とは言っておきますわ。それと、目的の部屋に着きましたわ」