秘密と呪文
一行は扉の前に立つ、誰も扉に手をかけない。何が起きるかわからないので最後の最後は誰かに譲ろうと考えている。
「誰が開けんだよ。俺様はパス」
「ジャンケンにしましょう。公平的に考えて」
「目の良い貴方がたは有利になりませんこと?マーガレット、ジン」
「アタシはか弱い乙女っす。意地悪しないっスよね?ジンさん」
「俺、まだ、体、治ってない」
「嘘つけ、さっきお前さん飛び跳ねてたろ。もう一人は爆弾作って脱獄しようとしてる時点でか弱くないし」
「じゃあ、こうしましょう私たちは目をつぶりますからジャンケンの合図を」
オリヴィアがジャンケンポンの合図を出す。結果としてはオリヴィアの一人負け。
「何故なのですか!」
「文句を言わずに早く開けてくれ」
「早く、開けろ」
オリヴィアは不服そうにドアノブに手をかける。
「ひい!!!」
「どうした!やっぱり罠か?」
「静電気ですわ」
ジンは無言でオリヴィアにチョップする。
「いってぇですわ」
「キャラぶれしてんぞガキんちょ、変われ、俺様が開けてやる」
ジンは腰のホルスターから銃を出す。
「静電気にビビってるんですか?それなのにオリヴィアに暴力をふるったんですか?」
「それってブラスターリボルバーっスか!!!」
「ビビり!!ビビり!!」
「うるさいよお前さんら!!俺様は慎重派なの」
ジンはぶっきらぼうに言い放ちながら、弾丸を扉の固定部分に放つ。きれいに扉に穴が空くジンは軽く蹴り開け中に入る。中には色々な設備が並べられている。機材の電源はついているものの部屋の明かりはついておらず不気味な雰囲気になっている。部屋の奥に目をやると大きな水槽が置かれている。誰が見ても今回の目的であろう少年が中に入っていることが分かる。
「あれだな。つってもどうやってあの水槽から出せばいいのか分からないな」
ジンが周りの機械をいじりながら頭をひねる。
「ふーーーむ、、、、ナタリア任した」
「最初からカッコつけずに任したらいいじゃないですか」
ジンとマーガレットのもめ合いがまた始まる。ナタリアはその間に機械をいじくり水槽の水を排出する手順を確認する。およそ一分で中の水が抜けることが分かった。水を抜いている間ナタリアが自身の装備がどこにあるのかを調べていいかジン達に確認する。
「そんなオモチャみたいなもん、ここにはないだろ」
「オモチャじゃないっス!いくらジンさんほどの男でも許せないっすよ!」
「いや、そんな言われ方するほど付き合い長くねえぞ」
「謝ってくださいジン、泣きそうになってるじゃないですか」
マーガレットはすぐにナタリアに寄り添う。また騒がしくなるかと思われたときマッドが口を開く。
「こいつ、とても、強い」
マッドは手に研究資料を読みながら水槽の少年の話をしている。オリヴィアが一番に反応する。
「マッド、読めるんですの?」
「読める、古代の言葉で、力を得る、方法が書かれてる」
「オカルトチックではあるが、、、そういう意味ではオリヴィアの超能力と似通ってる部分があるように感じるな。フィーリング的な部分が強いような」
そんな話をしているとナタリアがマッドの腕を掴んで引っ張る。
「マッド!こっちの上の棚見たいっス。そこにアタシの装備があるはずっス」
「マジでおもちゃじゃなかったのか」
ナタリアがじろっとジンを睨み、泣きそうな拗ねているような、そんな顔でそっぽむく、
「わかったナタリー、担ぐ」
マッドは肩車をする。その頃、水槽の水が抜け切る。
「さてとそろそろご対面ってとこかな」
中の少年はぐったりとして動かない。微動だにしない少年を見てジンは焦り始める。死んでしまったのではないかと考えたとき、ナタリアの声が響く。
「あったっスーーーーーー!!」
その手には作業服でいうところのツナギのようなものが握られており、マッドから降りた後、すぐに服の上から着替え始めた。そんな様子を見ながらジンは声をかける。
「おいナタリア、こいつ動かねえんだけど手順ミスってねえよな」
ナタリアはムッとした顔をしながら話す。
「手順にミスはないっス。後、アタシはオモチャで遊んでおくので話しかけないで欲しいっス」
完全にヘソを曲げてしまったナタリアは自身の装備を点検している。
「はあ、ガキかよ、、、マッド!こいつの起こし方とか書いてなかったのか?」
「そいつの腕、掴んで、唱える、テュール」
ジンは倒れている少年を起こし、腕をつかむ。マーガレットはどこからか少年が着れる服を持ってきている。
「今の言葉を言えばいいのか?なんかあったら普通に恨むからな、、、、テュール」
腕を握って唱えた瞬間、ぬくもりが宿り鼓動が体に響く、人の魂の在り方なんてものは普通の人間なら理解できなかったはずだが、ジンには分かる。これがただ生命活動を開始しただけではなく、魂が肉体に宿る瞬間なのだと、真の意味で人生を得た瞬間なのだと、ジンはしばらく少年を見つめる。




