白い空間で1
まず初めに僕はいつものように刀の素振りから始めた。
この空間に来る前はたまたま真剣で素振りをしていただけで、普段は木刀で素振りをしていたため、普段の二倍はある重量の日本刀を一分間振り続けただけで、腕の筋肉が悲鳴を上げる。
それでも僕は痛む腕を気にせず、素振りを続けた。
――――白い空間に来て、10年が経った頃
ただ無心に刀を振り続けた。
刀を振り続けることで、筋繊維が破壊と再生を繰り返し、より最適な肉体へと変貌した。
この空間に来てから筋肉痛の治りが異常に早い。
何か秘密があるのだろうか。
ふと疑問に思ったが、そんな考えはすぐに振り払い素振りを続ける。
――――白い空間に来て、50年が経った頃
10年経つまでは、家族や幼馴染のことを思い出して、寂しい思いをしていた。
しかしそれも仮想敵を想像し、その仮想敵と試合をすることで、その寂しさも感じなくなった。
ずっと仮想の試合を続けていて、仮想の敵との試合に勝利したとき――
『【零淵流刀剣術初伝】の獲得条件を満たしました。技能――【零淵流刀剣術初伝】を獲得します。』
頭の中に無機質な声のアナウンスが響いた。
「は?」
動揺を隠しきれないままに、ステータスを確認する。
――――――
技能――【零淵流刀剣術初伝】
神代零によって生みだされた刀剣術。刀剣での実戦で、身体能力が僅かに向上する。
昇華条件:150年間毎日欠かさず模擬戦をする。
――――――
今取得したのは【零淵流刀剣術初伝】という技能。
自分が生み出したというのは、恐らく模擬戦をしていく中で、勝利するために家で習っていた刀剣術からいろいろと発展させていったためだろうか。
どちらにしろこの空間から出る方法がないので、自分の剣を磨いていくしかない。
――――白い空間に来て、1000年が経った頃
僕は【零淵流刀剣術初伝】から【零淵流刀剣術中伝】、【零淵流刀剣術奥伝】へと至った。
500年の頃には、昔の武人を想像しながら模擬戦をするようになり、過去のほとんどの武人にも勝利するようになってから、仮想の自分と戦うようになった。
今ではあんなに重く感じていた日本刀も手足の様に扱えるようになり、洗練され続けた剣の舞はまるで流水の如し。
剣の道とは、筋力ではなく、それを超越した技術にある。
僕はそう悟った。
――――白い空間に来て、3000年が経った頃
見渡す限り真っ白の何もない世界。
そんな世界に3000年もいたら流石におかしくなるだろう。
僕はなぜこんな空間で刀を振るようになったのか。
なぜ強くなろうとしたのか。
なぜだ?
自分へと何度も問い続ける。
度重なる精神的な負担でついに許容限界を超えたのか、髪が白へと染まっていく。
そして僕は、強さを求めるようになったきっかけを思い出す。




