↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

第1話 — 王の死

暗殺者の一人がリーダーに近づき、木々の間を指さした。


「ボス、あそこです。王家の馬車……ヴァレドーン王国の国王、ジェームズです」


リーダーは街道から目を離さなかった。


「分かっている……」


馬車は国王直属の近衛騎士たちに護衛されながら、森の中を進んでいた。木々の陰に身を潜めた暗殺者たちは、静かにその時を待っていた。


「一……二……三……今だ!」


暗殺者たちは隠れていた場所から飛び出し、四方から馬車を取り囲んだ。


「敵襲! 陛下をお守りしろ!」


騎士たちの反応は素早かった。剣が抜かれ、わずか数秒で静かだった森は本物の戦場へと変わった。


金属同士がぶつかり合う音が木々の間に響き、馬がいななき、両陣営の男たちが次々と倒れていく。


騎士たちは馬車を守るために戦ったが、暗殺者たちのほうが数で勝っていた。


少しずつ、近衛騎士たちは倒されていった。


そして、その短い戦いが終わった時、ヴァレドーン王国の国王ジェームズは死んでいた。


その傍らでは、二人の息子も殺されていた。王太子グレイと、第二王子ベト。


王冠の未来を保証するはずだった血筋は、たった一度の待ち伏せによって消し去られた。


***


一日後……


ヴァレドーン王国。


謁見の間。


静寂に包まれた広間は、普段よりも広く感じられた。


玉座の前では、待ち伏せから唯一帰還した騎士が、頭を下げたまま跪いていた。


王妃エレナは、黙って彼を見つめていた。


「殿下……心よりお悔やみ申し上げます。陛下と二人の王子は殺されました。私が逃げ延びることができたのは、グレイ王子が王国へ戻り、この出来事を知らせるよう命じてくださったからです」


エレナは答えなかった。その言葉を受け止めようとするように、ただ目を伏せていた。


宰相のジャンが近づき、彼女の肩に片手を置いた。


「お悔やみ申し上げます……」


彼はそれ以上何も言わず、彼女のそばに立っていた。


*王国が無防備な状態にあるとはいえ、今すぐ王冠についての話を始めるわけにはいかない。エレナ王妃が話し合える状態になるまで待たなければ。*


***


翌日……


会議室。


最初に到着したのはジャンだった。椅子を引き、長いテーブルの前に腰を下ろす。少しして王妃エレナが広間へ入り、最後に大法官のドムがやって来た。


全員が席につくと、エレナはすぐに本題へ入った。


「王冠について話し合うのでしょう?」


ドムは姿勢を正した。


「そ、その通りです、殿下」


ジャンはテーブルに両手を置いた。


「殿下がご存じかは分かりませんが、およそ一年前、ジェームズ王は新たな法律を制定されました」


エレナは彼へ視線を向けた。


「法律?」


「はい。簡単に申し上げますと、ヴァレドーンの王冠を継承できるのは、王家の血を引く男子のみとなります」


エレナの目が見開かれた。


「それは驚いたわ。その法律については知らなかった」


ジャンは頷いた。


「はい、殿下。先ほど申し上げた通り、比較的新しい法律です」


ドムは小さく唸り、テーブルの上の書類を整えた。


「さて……では、これから政府をどのように運営していくか話し合う必要があります。正統な後継者が認められるまで、ヴァレドーンは暫定政府のもとで運営されます」


ジャンとエレナは黙って耳を傾けていた。


「摂政評議会を設置します。ジャンは宰相であり、亡き国王の右腕として政務を把握しているため、政府の指揮を執ることになります。状況が解決するまでは、この体制で進めます。王国を機能させ続けるための一時的な措置にすぎません」


エレナは目を伏せた。


「後継者……」


彼女は数秒間考え込んだ。そして、再び顔を上げた。


「二人に話しておくことがあるわ」


ジャンとドムは同時に彼女を見た。


「それは?」とジャンが尋ねた。


エレナは深く息を吸った。


「数年前、ジェームズは一人の使用人と関係を持ったの。その女性は妊娠したわ」


ジャンは目を細めた。


「つまり……」


「他にも後継者がいると思う。でも、それが誰なのかは分からない。男として生まれたのか女として生まれたのかも、今どこにいるのかも分からないわ」


ドムは目を見開き、テーブルに身を乗り出した。


「その使用人の名前は分かりますか?」


エレナは彼に視線を向けた。


「ええ」


大法官の顔に小さな笑みが浮かんだ。


「素晴らしい。それだけ分かれば十分です」


***


十五日が過ぎた……


「ジュリアス! 後ろだ!」


カグラの声が森に響いた。


俺は横目で確認した。


「分かってる」


剣を抜き、黒いオークへ向かって跳んだ。奴は反応する暇すらなかった。


力いっぱい剣を振り下ろす。


斬撃は魔物の身体を貫き、そのまま真っ二つにした。倒れた直後、残骸の間から小さな青い核が現れた。


額の汗を拭い、剣を鞘に収める。


「これで今日十三体目か……」


俺は草の上に身体を投げ出し、カグラが数匹の野生の狼との戦いを終えるのを眺めていた。


俺の名前はジュリアス。


二十二歳。Sランクの冒険者で、かなり腕の立つ剣士だ。まあ……少なくとも自分ではそう思っている。


俺の目標について言えば、そこまで大それたものじゃない。十分な金を貯めて、山に家を買い、静かに暮らしたい。


それが、この生活を続ける俺の原動力だ。


数メートル先で、カグラが最後の一撃を放った。狼が倒れる。


彼は額に手を当て、ため息をついた。


「やっと終わったな、兄弟。こっちも片づいたぞ」


あいつがカグラ。俺にとっては兄弟同然の存在だ。


Aランクの魔法使いで、剣も扱えるが、最終的には魔法の道を選んだ。


俺たちは同じ孤児院で育ち、いつも互いを守ってきた。細かいことまでは覚えていないが、カグラが孤児院に来たのは三歳くらいの頃だった。俺が知る限り、母親に捨てられたらしい。


俺のほうは……父親や母親がいるのかすら分からない。物心ついた頃から、俺の人生はずっとあの孤児院にあった。


子供の頃、俺たちは大人になったら世界を冒険して回りたいと思っていた。そして、それを叶えた。


もっとも、最近の俺はその生活にも少し疲れてきていた。


カグラは二十歳くらいで、身長は一七六センチ。灰色の髪に、細身で引き締まった身体をしている。


魔物の核を回収した後、俺たちはヴァレドーン王国の首都アステリアへ戻った。


目的地は冒険者ギルドだ。


中に入ると、俺は持っていた核を取り出し、カグラに渡した。


「ほら。お前のと一緒にして、まとめて売ろうぜ」


「了解」


俺たちは受付へ向かった。


カグラは核をカウンターに置くと、すぐに受付嬢へ笑顔を向けた。


「よっ、アリス。この核を売りに来た。それとさ、どうしたら俺とデートしてくれる?」


アリスは心底嫌そうな顔で彼を見た。


「ごめんなさい。私、もう彼氏がいるので」


彼女は核を受け取り、報酬を取りに行った。


俺は堪えきれなかった。


「ハハハハハ! また振られたな!」


カグラは横目で俺を見た。


「ああ、うるせえ」


少しして、アリスが戻ってきて、カウンターの上に硬貨の入った袋を置いた。


「こちらです。二人とも、良い夜を」


俺たちは金を受け取り、ギルドを出た。


外に出て空を見上げると、アステリアの夜空はすでに星で埋め尽くされていた。


「なあ、カグラ。酒場にでも行って一杯やるか?」


彼は笑った。


「行こうぜ!」


***


俺たちは適当な酒場に入り、席を選んだ。


ほどなくして、店員が近づいてきた。


「こんばんは。ご注文は何になさいますか?」


俺が答えようと口を開いたが、カグラのほうが早かった。


「やあ、可愛い子ちゃん。俺は君が欲しいんだけど、いい?」


店員は露骨に嫌そうな顔をした。


「すみません、私はメニューに載ってませんので。それで……ご注文は?」


俺は気まずそうに首の後ろへ手をやった。


「冷たいビールを二つと、焼いたイノシシ肉を一皿」


彼女は俺に視線を向けた。


「かしこまりました。すぐにお持ちします」


彼女が離れると、俺はカグラを見た。


「お前、本当に変わらないよな。いつも女に振られてばっかりじゃねえか。前にも言っただろ。焦らないのがコツなんだよ。ゆっくりいけば、そのうち魔法みたいにうまくいくって」


カグラは大笑いした。


「ハハハハハ! 悪い、兄弟。ほとんど反射みたいなもんなんだよ。もう少し大人しくするようにするわ」


少しして、店員が注文したものを持って戻ってきた。


「お待たせしました。どうぞごゆっくり」


食事をしながら、俺は数秒間ジョッキを見つめていた。そして、沈黙を破った。


「なあ、兄弟……お前、将来どうするつもりなんだ?」


カグラは俺に目を向けた。


「将来?」


「ああ。何か大きな個人的な目標とかないのか? ずっと冒険者を続けるつもりか?」


カグラは指を顎に当て、天井を見上げた。


「そう言われてみれば……考えたことなかったな」


俺はビールをもう一口飲んだ。


「例えば、俺の個人的な目標は山に家を買って、そこでひっそり暮らすことだ。ある程度の歳になると、欲しいのは平穏だけになるんだよ……」


カグラは笑った。


「そんな言い方すると、お前もう六十歳くらいに聞こえるぞ。ハハハハハ!」


「ああ、うるせえ」


彼はまた笑った。


「でも、本当に冒険者を引退するつもりなのか、兄弟?」


俺は頷いた。


「ああ。もう決めた」


カグラは椅子の上で伸びをした。


「俺たちFランクから始めて、ここまで来たんだよな。俺はAランク、お前はSランク……そうだ、辞める前にSSSランクまで目指してみたらどうだ?」


俺は指先でジョッキを回した。


「挑戦するつもりだ。でも、なれるとは限らない」


その後、俺たちは食事を終え、代金を払い、夜を過ごす場所を探した。


宿を見つけ、二部屋取った。


それぞれ自分の部屋へ向かった。


***


翌日……


コン、コン、コン……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。