五の③
「青木さーん」
「何だ」
「そろそろ寝ますー?」
「いや、まだやることがあるぞ」
青木と小川は風呂上がりで、さっぱりとした表情でいた。
「やることって……何ですか? まさか——オセロですか? 一応持ってきましたけど……」
小川は小カバンをゴソゴソと探りだして、携帯オセロ盤を床の上に置いた。
「おっ、気が利くな。……いや、その前にやることがある」
「オセロの前にやることですか? ……ああっ、分かりました!」
「やっと分かったか、助手」
「将棋ですね! ちゃんと持ってきました」
小川はまたテキパキと将棋盤を用意する。
「おおっ! 気が利くな。……いや、やっぱり、それより前にやることがあるのだが」
「囲碁はさすがに無理ですよ……」
「ばかやろう! 聞き込みだ! ほら、行くぞ」
小川は青木にひっぱたかれた頭をさすりながらベレー帽を被ると、さっさと出て行く青木を追いかけた。
「誰に聞き込みですか?」
「おがわぁ、やっぱりお前はまだまだ未熟だなあ」
青木は嬉しそうに言った。
「ロビーに人がいたろう。あいつらもこれから『パラダイス島』へ渡る客に違いない。その人たちに、何故あの島に行くのか尋ねるんだ」
「なるほど、珍しく冴えますね! 青木さん」
小川は目を輝かせたが、一瞬後には眉間にしわを寄せた。
「英語、喋れるんですか? 青木さん」
青木の自身に満ち溢れた足音が、ぴたりとやんだ。そして、Uターン。
「青木さん?」
「将棋するぞ」
青木は早足になっていた。何、明日フェリーに乗ってあの島へ行ってみれば、万事済むことだ、そう言い聞かせながら、青木はもう碁盤の図面を頭に思い浮かべていた。酒と肴のないのが、少々残念ではあるが。




