–1DAY– 未知
「ここは……」
俺は目を覚ますと学校に居た。
10年前に通っていた高校の教室。
周りを見渡すとみんな制服を着て、うつ伏せで眠っている。
隣の席には今でも仲の良い、サバゲーフィールド併設のミリタリーショップを開いている小田汐恩が座っていた。
「おい、汐恩」
俺は汐恩の肩を揺さぶる。
「んー。旭ー?なんで居るのぉ」
汐恩は目を擦りながら、体を起こし辺りを見渡す。
「なにこれ……なんで!?さっきまで店でお客さんと話してて……」
「俺もだよ」
そんなことを話していると、パラパラと他の奴らも起き出した。
パニックになる者や、教室を出て行く者。
久しぶりの再会を喜んでいる者、色々な人がいる。
教室の中が、少し落ち着きを取り戻し、同窓会ムードが出てきた時。
外から金切り声が聞こえた。
俺たちは急いで教室の外のベランダへ出て、声のした方を見る。暗くてよく見えないが、一階の野外の渡り廊下に生き物の尻尾のようなものが見えた。
叫び声を聞いてすぐに、警察官になった佐伯淳平、そして陸上自衛隊に入った雨水新汰と佐藤貴司の2人があとに続く。
3人が教室を飛び出したあと、俺達は息を飲んで見守る。
渡り廊下に3人が辿り着いて、淳平が叫ぶ。
「誰か!!伊東君連れて来てくれ!!」
「佐伯君が伊東君来てって言ってるよ??」
教室の中にいた女の子が、不安そうに呟く。
外科医をしている伊東圭太、そして看護師の宮城さんの2人に消防士になった高橋歩が付いて行く。
「な、何かあったのかな……?ねぇ、旭……」
「大丈夫だって!ほんと汐恩は昔から怖がりだなぁ」
汐恩は、俺の服の裾を掴んで不安そうにキョロキョロしている。
俺はボーッと渡り廊下を眺めていた。
圭太達が着きしばらくすると、新汰が焦った様に小さな声でコソコソとみんなに声を掛けている。
それに気づいた宮城さんが、「どうしたの?コソコソして」と顔を上げると、何かに気づき奥の方を見た。
その瞬間、宮城さんは悲鳴を上げた。
淳平達は急いで校舎へ入るが、宮城さんと圭太は腰が抜けたのか動かない。
淳平達は急いで2人の元へ戻り、立たせようとした瞬間。
宮城さんは、一瞬で何かに襲われた。
淳平達は急いで圭太を抱え、校舎へ入った。
俺達は、その光景に唖然としながら、教室の中へ入る。
淳平達が戻って来るまで、誰一人口を開かず、教室の中は本当に静かだった。
淳平達は教室に戻って来るなり、急いで窓や扉を閉め鍵を掛けるとカーテンを閉めた。
貴司におぶられた圭太は、放心状態でまともに話せる状態ではなかった。
淳平は、震える手を握りさっき見たものを話した。
「……恐竜だ。恐竜が居る……」
「恐竜??何言ってんだよ。佐伯疲れてんじゃねぇか?」
と昔から正義感の強い淳平を、一方的に敵視していた小崎翔が鼻で笑う。
「確かに見たよ。恐竜だよ。よく映画とかで見るやつ……」
その話を聞いて、泣き崩れる子やなんでこんなことになったのかと頭を抱える子、さっきまで静かだった教室はざわざわと不安の声で包まれる。
「淳平、それが本当なら武器になる物集めた方が良いんじゃねーか?」
「うん。旭の言う通り備えは……必要だと思う」
淳平は頭を抱えて、悩み出した。
とりあえず今居る教室の刺股を、新汰が握る。
ザザッと雑音を響かせながら放送が鳴る。
『皆さん、お久しぶりです。──たら、定年前に勤務していた高校に──た。分からないことばかりで、不──が、皆さんで協力しましょう。体育──合──下さい。』
途切れ途切れの放送が、校内に響く。
「体育館集合??だって!!行こう!!」
パラパラと教室を出ていく人達を横目に、俺は思い出したかのように話す。
「祥介!!どうする??」
「行かない方が良いんじゃない??恐竜が本当だとして、何が何頭居るかも分からないんだし」
俺は、涌井祥介が博士で、化石を調べたりしているのを思い出して、祥介に質問をした。
「そうか、汐恩俺は残るぞ」
「じゃぁ、僕も……」
祥介の話を聞いてもなお、教室に居た半分近くが体育館へ向かった。
教室には俺を含めて、18人だけが残った。
「元々35人いたから、少なく感じるね」
「あぁ、そうだな」
── 午前5時
日が昇り始め、辺りが白んでいく。
「ねぇ、旭。見て、外壁がある」
「なんだよ汐恩。壁?」
俺は汐恩が指さす方を見る。
よく目を凝らして見ると、遠くの方に壁があるのが見えた。
「本当だ、でもなんで壁……」
「ここが、何者かが作った。僕達の棺桶ってことだね」
「こ、怖いこと言わないでよ祥介……」
「汐恩は、怖がり治ってないんだね。もぉ29歳だろう」
「アラサーだからって、怖いものが無くなるわけじゃないでしょ……?」
「うん。それはそうだね。汐恩の言う通りだ」
「なぁ祥介、俺らこれからどうする?壁まで行ってみるか?」
「そこらへん考えるのは、旭の得意分野でしょ?ゲーマー君。まぁ、丸腰で移動するのは愚策かな。あとせめて、どの種の恐竜がいて、大体何頭くらいいるかも知っておきたいね」
「そうだな、取り敢えず武器がいるな!!」
「うんいいね、よろしく旭」
俺は机を四つ並べて教室にあった紙をかき集め、学校の間取り図を描く。
「なにしてるの?」
「おう、会長」
「もうやめてくれよ会長だなんて、10年も前の話だろ」
「それもそうだな!悪いな、白石!言い慣れててつい!」
白石陽翔、元生徒会長で今では水陸機動団という部隊にいるらしい。昔より筋肉質で、男の俺でも憧れる。
「陽翔でいいよ、旭。それでこれは?」
「おう、もしこの学校の構造や置いているものが、10年前と同じになっているならの話なんだけどさ」
「うん」
「校長、武器コレクターだったんだよ。だから校長室まで行ければ、武器が手に入る」
「エアガンじゃないのかい?」
「あぁ、でもうちには汐恩が居るんだぜ!改造すれば使えるだろ。な!!汐恩!!」
「え、僕がやるの?」
「お前以外に誰がやるんだよ……」
「そ、それもそうだけど。分からないよ?使えるようになるかは……」
「大丈夫大丈夫!汐恩なら出来るって!!」
「相変わらず、根拠のない自信……」
「2人はずっと仲がいいね、羨ましいよ」
「腐れ縁だよ……僕が人見知りだから。白石君こそお友達沢山居たじゃん」
「今はもういないよ。強いて言うなら仲間が増えたかな」
「か、かっこいい!」
「そうかな、そんなストレートに言われると照れるなぁ」
汐恩と陽翔は和やかに話している。
そこへ淳平と歩、新汰、貴司が来た。
「旭、武器集めなら一緒にやるよ」
「おぉ、助かるぜ!!」
俺は地図を描き終えると、自分達のいる教室から校長室までの最短ルートを描く。
「このルートが、屋外を通らずに校長室まで行ける最短ルートだ」
「屋外を通らないのは良いね。まだ情報が何もないから、なるべく外を歩き回らないが1番だと思うよ。でも……もしかしたら校舎内に入りこんでいる奴もいるかも知れないから、気を付けて」
「で、誰が行く?」
「俺は行くよ。人手は必要だろうし」
「じゃぁ淳平と、あと3人くらいか?」
「そうだね。あと2人くらいは一緒に来てほしいな」
そして順調に、貴司と陽翔が行くことが決まった。
新汰と歩は、隣の教室から刺股を回収しに教室を出て行く。
「汐恩君、ついて来てくれるかい?俺たちだけじゃ、どれが使えそうな物か見分けられないかもしれないからね」
「え、僕?む、無理!!無理だよ!!」
汐恩は教室の角に、座り込んでしまった。
「汐恩君……頼むよ、一緒に来てくれ」
淳平はしゃがみ込み、汐恩の目線に合わせて話すが、汐恩は泣き出してずっと頭を振っている。
「汐恩、大丈夫だって!!一緒に行くの警察と自衛隊だぜ?」
「やだよ!!じゃぁ旭が行ってよ!!旭が武器取りに行こうって言い出したんだから!!僕は無理!!旭だって使えそうな物くらい分かるでしょ!!」
「は!?俺っ!?」
「旭、来てくれるか?」
「わかったよぉ、ここでじっとしてても何も始まんないしな」
淳平は笑顔で俺の肩を叩く。
「ありがとう、助かる」
刺股を取りに行っていた、新汰と歩が人を数人引き連れて戻ってきた。
「この階の教室全部回って来たよ」
「6本か、ありがとう。異常はなかった?」
「うん、大丈夫。あと、教室の角で怯えて座り込んでいたから連れて来た」
「そうか。悪いけど俺達の方で、刺股3本持っていってもいいか?」
「もちろん、4本残るし。問題ないよ」
「ありがとう」
淳平と貴司は、俺達が出て帰ってくるまでの作戦を相談している。
「旭、もう少し明るくなったら行こうか」
「おうっ!」
俺は教室の中を歩き回る。
「旭……ごめん、僕」
「……少し落ち着きなよ、旭。……はぁ、じゃぁアドバイス」
祥介は指を立てる。
「ひとつ、恐竜を見つけたらすぐ隠れること。ふたつ、見つかってもすぐ走ったり叫んだりはしちゃダメ。みっつ、恐竜が近くに居るとわかった時点でその場から離れること」
「隠れろとか離れろとかどっちだよ」
「まだ気づかれていないなら、静かにその場を離れる。近すぎて動いたら気付かれそうなら、隠れてやり過ごすってことだよ」
「一旦隠れればいいんだな」
「うん、まぁそんなとこ。
熱源センサーみたいなものが恐竜に備わっているなら、今僕達がずっと動かず留まっているのに、襲ってこない理由がわからない。
まぁそれか、もっと沢山集まっている場所に引き付けられているかもだけど、にしてもそんなものが恐竜に備わっていたら、僕達は終わりだね。どうせ死ぬ」
「まぁ、移動するのも、極力音を立てないように歩きなねー」
「ありがとう、祥介。心強いぜ」
「僕は化石にロマンを感じて調べているだけで、生きているのは専門外だよ。まぁ、すごく……興奮はするけどね」
── 10時00分
淳平、貴司、陽翔そして俺の4人は、教室から出た。
俺以外の3人が刺股を持ち、俺は3人の真ん中で、淳平の後ろをついて行く。
後ろの貴司と陽翔は後ろを確認しながら着いて来る。
「淳平、お前結婚したって?」
「うん、3年前にね。子供も2人居るよ、下の子は先月産まれたばかりでね。もうかわいくてかわいくて」
「そっか。早く帰る方法見つけないとな!!」
「うん、そうだね。俺も帰りたい。嫁にも苦労かけてしまうしね……」
俺たちは順調に校長室まで辿り着き、校長室にある絵画を押すと隠し部屋が現れた。
隠し部屋に入ると、大量にコレクションが並べられていた。
「隠し部屋、こんなに広かったっけ」
「入った事あるのかい?」
「おう、汐恩と2人で校長に頼んで見せてもらったんだよ」
前はせせこましく並んでいて、歩くスペースが無いほどだった。
今は教室と同じくらいの広さで、壁いっぱいに武器が並んでいる。
中央には大きな机が置かれている。その机には学校周辺の地図が広げられている。
「この地図、途中で切れてる……」
「半径5㎞、おそらく壁がある辺りまでじゃないかな」
「壁から壁までは10㎞ってところだね」
俺は淳平達が地図を見ている横で、武器を手に取る。
「なぁ、淳平。これ本物だ。使える、使えるよ!!」
「本物?本当か??」
「見てくれ、これもだ。手榴弾もある……」
俺は棚を開けて弾を探す。
「ライフルがある。弾を探してくれ!!」
「わ、わかった」
3人も一緒になって弾を探してくれている。
「なぁ、淳平……」
「どうした?旭、弾は見つかった?」
「学校のすぐそばに駐在所……あったよな」
「うん、あるよ?それがどうしたの」
「武器手に入れたら、行ってみないか?」
「外へ出るのは危険だよ。どうして?」
「ただの勘でしかないんだけど……もしかしたら駐在所、あとは消防署……市役所……何かあるかもしれない」
「勘かぁ」
「なんだよ!俺の勘は結構当たるぞ?」
「ゲーマーの勘ってやつかー?」
「冷やかすなよ、貴司」
「刀もあるけど、一応持っとくか?」
「おう」
俺たちはとりあえず武器と弾、地図を持って隠し部屋の扉を閉める。
壁を背に、外の様子を窺いながら校長室を出て、教室へ向かった。
── 一方その頃 教室
「旭大丈夫かな……」
「大丈夫、多分だけどね」
静かな教室では、廊下からの音がやけに大きく聞こえた。
カチカチと、爪を鳴らしているような音がして、祥介がみんなに「静かにして」と呼びかける。
新汰と歩はみんなの前で刺股を構えている。
教室に居た人達の中から、ガタイの良い田中と中村が新汰達の後ろで刺股を構える。
外の光で廊下に居る生き物の影が、くっきりと見える。
カーテンの隙間から少しだけ姿が見えた。
「…デイノニクスだ……」
「デイノニクス??」
「ラプトルだよ……」
デイノニクスは、頭を傾げながら教室の扉をカチカチと触る。デイノニクスは器用に、扉の引手に爪を引っ掛け、扉をゆっくり開く。
カーテンの下から恐竜が顔を出す。
取り乱した子達が叫び声を上げ、立ち上がり逃げようとした瞬間、デイノニクスは手を広げその子達に向かって走り出した。
教室に居た殆どの人が覚悟を決め、目を瞑ったその時、ずっと1人眠っていた竜胆蓮が机を飛び越え、デイノニクスの目にハサミを突き刺した。
デイノニクスは、叫び声のような鳴き声を上げヨロヨロと尻尾を振り回しながら、教室を出て行く。
蓮は、デイノニクスが出て行った扉を閉め鍵を掛けると、再び自分の席に戻り突っ伏せた。
「旭達が帰って来たら鍵開けてやればいい、それまで閉めておけ」
と言い、また眠り始めた。
── 11時40分
俺たちは校長室から出た後、1階まで降りて調理室へ食料が無いか見に行っていた。
調理室へ入ると、調理台には大量に食料が置いてあり、ホワイトボードにはまた地図が貼ってあった。
「なぁ、やっぱヒントなんじゃねーか?」
「地図かい?」
「うん。なんか、ただ危険な場所に放り出されただけって感じがしねんだよな。なんていうか……俺達を見て楽しんでるっていうか。俺達が必死に足掻いて、生き残ろうとするように仕向けられてる感じ……」
「そうだね」
「一旦、食料持って戻ろう。みんな朝から何も食べていないから、きっとお腹空かせているよ」
「あぁ!そうだな」
俺達は、水と食料を持って調理室を出た。
「なんだ淳平、地図持って来たのか?」
「あぁ、うん。何か校長室の地図と違いがあるかもしれないし」
「そうだな」
「2人とも静かに」
「どうした?陽翔」
渡り廊下を覗くと、旧校舎に恐竜の姿が見えた。
俺たちの教室は旧校舎にある。
屋外に出ずに校舎を渡れる渡り廊下は、2階と3階にしかない。
「姿が見えなくなったら、静かに3階まで上がって旧校舎に戻ろう」
「おう」
── 12時00分
外からお昼のチャイムが鳴る。
「お昼か、そろそろ大丈夫じゃねーか?」
「うん、静かに行こう」
俺達は足音を立てないように気を付けながら、階段を急いで上がり教室へ戻った。
鍵が閉まっていたから、扉を軽く叩くと新汰がカーテンをそっと開けて、俺達だと確認して扉を開けた。
教室へ入ると、空気がどんよりとしていた。
「何かあったのか?」
「あ、うん。恐竜が入って来た……竜胆が追い払ってくれたけど……」
みんな怯えて顔色が悪かった。
「みんな!腹減ってるだろ!!食いもん見つけて来たぜ!!」
祥介が俺達に近付いてきて、教室の端に集まった。
「早めにこの教室から移動した方がいい」
「なんでだ?」
「デイノニクスに僕達が居るのを知られた。それにデイノニクスの血が教室に落ちてる。デイノニクスが再び来なかったとしても、他の恐竜が血の匂いに引き寄せられてここに来るかもしれない」
「そんなに急がないとダメか?」
「ラプトルは頭が良いんだ。扉だって自分達で開けられる。最近では集団で狩りをする学説に否定的な意見もあるけど、ラプトルは同種でのコミュニケーションがとれた可能性があるともされている。仲間を連れて来る可能性だって無いとは言えない。移動した方がいい」
「わかった。一旦みんなを落ち着かせる為に、ご飯だけは食べさせてあげよう。食べ終わったらすぐここを出よう」
淳平は祥介の意見を素直に受け止め、何処へ移動するか相談し始めた。
「なるべく周りを見渡せて左右どちらからでも逃げられる場所……」
「校長室戻るか?」
「そうだね。校長室のすぐそばの階段から屋上も行けるし」
俺達も腰を据えて、匂いのあまり出ない物を食べた。
銃は使い方を説明する時間が無かったため、俺と汐恩、淳平、新汰、貴司、陽翔、蓮の7人で他のみんなを囲んで移動する事になった。
「みんな、教室を移動しよう。ここに留まるのは危険だ」
淳平の声掛けにみんな下を向いた。
「淳平、ほっとけ。行きたい奴だけで移動するぞ」
「待ってくれ、竜胆!見捨てるのか……?もしこのまま置いて行って何かあったら……」
「淳平はなんでも抱え込みすぎだ」
蓮は淳平が背負っていたライフルを、座って居る奴らの方へ投げた。
「俺らは生き残るから武器は貰っていく、そのライフルは初心者でも使いやすいやつだ。何かあったら使え。音に気づいたら援護してやる、その代わり新校舎側のカーテンは開けておけ」
蓮はそう言って弾の入った箱を机に置いて、教室を出て行った。
「本当に来ないのか?」
淳平は困ったように尋ねるが、みんな俯いて何も言わなかった。
「淳平、もぉ行こう」
「旭……」
俺は淳平を連れて教室を出る。
俺達は、前もって決めた陣形で移動を始めた。
「なぁ蓮、ちょっと言い方キツかったんじゃねーか?みんな怖いんだよ……」
「グズグズしている奴らを連れて行ったら、俺らも巻き込まれるぞ」
「それはそうだけどさ〜」
「旭、お前も生き残りたいならあまり人に構うな、俺は──」
俺と蓮が、そんな話をしていると後ろから銃声が響いた。銃声の後、悲鳴が聞こえる。
「淳平!!お前らは先行ってろ!!すぐ追う!!」
俺と陽翔は蓮の後を追って、さっきまで通って来た廊下を戻る。
廊下を曲がると、さっきまでいた教室の前で、恐竜が人を襲っていた。
俺は反応が遅れた。
ハッとライフルを構えようとした瞬間、蓮が恐竜の頭を撃ち抜いた。
俺達は急いで教室へ戻ると、教室内にも2頭、同種の恐竜が居た。
俺達を見つけた伊藤さんが「助けて!!」と叫んだ瞬間、頭を食いちぎられた。隣にいた人達は叫び声を上げて、その場から逃げようとした人の背中に、恐竜が爪を突き立てた。
俺は震える手でライフルを構える。
蓮が俺のライフルの銃口を押さえる。
「蓮?」
蓮は恐竜が人に食い付いたのを見計らって、引き金を引いた。
もう1頭は、窓を突き破って外へ逃げてしまった。
「旭、撃つ時は手の震えを止めろ。人を巻き込む」
「悪い……」
「まぁまぁ、竜胆君。こんな時に冷静でいろって方が難しいから」
陽翔は俺のフォローをしながら、怪我人の手当てをする。
「あ、あの……ありがとう。竜胆君。本当にありがとう」
さっき伊藤さんの隣に居た、田中麗奈さんが泣きながら蓮にお礼を言っていた。
「君は……あぁ、貴司と歩について来てた奴か」
「うん……私教室で1番最初に目が覚めて、外を見てたら恐竜に襲われてる人を見ちゃって、ずっと怖くて教室の隅で座っていたら、佐藤君が手を差し伸べてくれて。私みんなに助けられてばっかり……って!!竜胆君!?」
蓮は田中さんが話している途中で教室の外へ出ていた。
「悪いな、蓮は悪い奴じゃないんだ」
「はい!助けてくれましたし!!良い人です!!」
「歩けるか?」
「はい!怪我はしてません」
「ついて来て」
亡くなった人達を綺麗に寝かせて教室を出る。
俺達は田中さんと、怪我はしているけど息がある山田聡を連れて校長室へ向かった。
俺達は遅れて校長室に入る。
校長室には隣の客室へ繋がる扉があり、そこから入って山田君を寝かせて圭太に診てもらった。
「圭太、頼むぜ」
「うん……」
圭太は精気が抜けたように返事をする。
他のみんなが客室のソファで寛いでいる中、俺達は校長室で地図を広げていた。
「やっぱり……みんな見てくれ」
汐恩と蓮以外のみんなが地図を見る。
汐恩は隠し部屋で武器を見ていて、蓮は校長の椅子に座り外を眺めていた。
「これが調理室にあった地図で、もう一枚は隠し部屋にあった地図」
「なにか違うか??」
「ちゃんと見て、色が違う」
調理室に貼ってあった地図には、学校とスーパー、コンビニ、消防署、商店の地図記号だけが青で描かれている。
校長室の隠し部屋にあった地図には、学校と警察署、消防署、市役所の地図記号が青で描かれている。
「本当にちょっとした違い、地図を一枚しか見つけなかったら不思議に思わないレベルだよ……」
「青と黒なんてここまで濃い青だと、パッと見は見分けつかないね」
「うん、何かあるんじゃないかと思うんだ……」
「もしかしたら学校中もう少し探してみたら、別の地図も見つかるかもしれないね」
「うん」
俺達は、様子を見つつ学校中を探してみることになった。
「ねぇ、見て」
ずっと黙って外を見ていた蓮が、外を指差した。
「なに?体育館?」
俺達は息を呑んだ。
大勢の逃げ惑う人達、体育館の扉は破られ血溜まりが出来ていた。
校門から外へ逃げていく人達も居た。
「何があったんだ……」
「まっ、予想は付くけどね」
「僕達ももう少し気を引き締めないとダメかもしれない……」
「どういう事だ?祥介」
「僕達はまだ、デイノニクスしか見ていないけど。他にももっと大きい恐竜が居るかもしれない……こんなライフルなんか、オモチャになってしまうような」
── 時間は遡り 校内放送のすぐ後




