–0DAY–
── 9月23日 秋分の日
俺、曽我部旭は、母方の実家で親戚が大勢集まるため手伝いに来ていた。
「爺ちゃん、伯父さん達いつ来る?」
「昼には来るんじゃないかのぅ」
90歳を迎えたお爺ちゃんは、広間の机を拭く。
俺は母さんと食器を用意したり掃除をしたりとバタバタと働いている。
お昼前に魚屋の折詰が届き、受け取って部屋に運ぶ。
折詰だけで30個。玄関から広間へ移動させるだけでも大仕事だ。
「げ、高っ」
広間に入り爺ちゃんにレシートを渡す。
折詰ひとつ9,500円……
「爺ちゃん、もうこんな高いのしなくても良いんじゃねーか?食べきれないだろ?」
爺ちゃんはレシートを受け取り「はぁ」とため息をつく。
「お前は奈恵子に似てきたなぁ。食べるもんケチってどうする」
「いや、もちろん毎回ここで頼んでるし、刺身が美味いのも分かるけどさ、いつもみんな余らせてるじゃん」
「足りないよりはマシだろう。良いから持ってこい。そろそろ来るぞ」
「はーい」
俺は全てを運び終え、台所へ母さんの手伝いへ向かった。
「母さんなんか手伝うことある?」
「いいや、もうおおかた終わったからお爺ちゃんの相手でもしといて」
「はーい、お坊さん来たら母さんがお茶持ってく?」
「うん、私が持って行くわ」
そして3時間後──
見事に出来上がった俺爆誕。
お坊さんや祖母方の親戚達も殆ど帰り、祖父方の親戚と、俺と仲のいい同い年の再従兄弟だけが残った。
「圭佑よぉ〜。そろそろ結婚するのか〜?」
「いや、別れたんだ」
「は?なんでぇ?お前らめっちゃラブラブだったじゃねーか」
「うん、彼女が海外転勤になって別れようって言ったんだ。いつ帰ってこれるかもわからないから」
圭佑は少し寂しそうに笑った。
「そっか」
俺が気まずそうにしていると、おじさん達の酒が少なくなっているのに気付き酒を注ぎに行った。
「おいちゃん、お酒まだ飲むだろ?」
「おぉ、なんだ旭!酌してくれんのか!!」
おじさん達も相当出来上がっているようで、みんな顔を真っ赤にしている。
「おっとっとー、もぉいいぞ」
「おいちゃん、まだ呑めるだろ〜??」
「あ!旭君!!いいのいいの!その人あんま飲ませないで!もう酔ったらめんどくさいんだから!!」
少し離れた席に座っている芳夫おじさんの奥さんが、大声で止める。
「おぉ、お前めんどくさくはねぇだろお!」
芳夫おじさんも言い返すが、そこへ割って入る様にみんながもっと呑め〜と芳夫おじさんをあおる。
「兄さんもっと呑めるだろー!呑め呑めー!せっかく甥っ子が酌してくれてんだぞー」
「じゃぁこの一杯で最後」と、芳夫おじさんはコップから溢れそうな日本酒を啜る。
遠くで呆れたように笑う嫁さん達。
みんなのお酒を注ぎ、席に戻り折詰を食べる。
「やっぱうめぇな」
「ね、美味しいね」
圭佑は笑いながら、酎ハイを開ける。
おじさん達は圭佑にも絡み出す。
「圭佑君、お母さん元気か!」
「はい!元気ですよ。おかげさまで」
「そうか!姐さん死んで来なくなっただろう。心配してたんだ」
「そうですね。おばさん居なくなって来る事も減りました」
「旭!!お前みんな集まる時声掛けてやれよ!!」
「いや、誘ってるって!!圭佑は忙しいんだよ!!東京で大企業の管理職してんだから」
「そうなのか!!すげぇな、旭とは出来が違う!!」
「おい!おじさん!!そんな事ねーわ!!」
「いや、僕もたまたま社長さんに気に入って貰えただけなので、旭こそすごいです。好きな事仕事にしてますから」
圭佑は苦笑いをしながら謙遜した。
日も落ち、母さんや奥さん達が片付けを始めた頃。
そろそろお開きにしようとなった。
圭佑は泊まっていくため、片付けを手伝ってくれている。
俺は御土産を用意して玄関の前で、おじさん達が立ち話しているのを眺めていた。
── 9月23日 19時22分
ドサドサッと、荷物が床に落ちる。
そこには御土産だけが残り、旭の姿は無くなった。
周りに居たおじさん達は、急な出来事にすぐ家中を探し始める。
家中を探していて、旭だけでなく圭佑も洗い物を手伝っていた途中で忽然と消えていた事を知る。
その日、同時刻に人が消えたという通報が500件以上入った。
通報者は皆、口を合わせたかのように《 急に目の前から忽然と消えた 》と話す。




