第1話:別れ
初投稿の完全初心者です。至らない点もあるかと思いますが、温かい目で見守っていただけますと幸いです。
※本エピソードには、一部ショッキングな自然災害の描写が含まれます。苦手な方や、体調に不安のある方は閲覧をご遠慮いただくか、ご注意してお読みください。
男は得た。大いなる力を。
女は欲した。自分を満足させるために。
男は知った。絶望、そして復讐心を。
少女は疑った。敬愛した人と、その一族を。
「一希、一緒に帰ろーぜ!」
「...うん、わかった」
俺は少しめんどくさそうに答えた。
「はい決まりな!ほら早く行くぞ」
校門の前に先生が立っていた。
「さようなら、先生」
「さようなら」
...「ところでさあ...」
「なんだよ」
俺はまた少し嫌そうに答えた。
「友達、できたか?」
...「できてない」
また文句言ってくるんだろ。
「お前、友達少ないだろ?もっと作った方がいいよ。少ないと高校生活楽しめないぞ」
耳が痛い。
「余計なお世話だよ。達也がいるから大丈夫だよ」
俺は決まり悪そうに言った。すると達也は諦めたように、そして少し嬉しそうに言った。
「お前がいいなら俺もいいよ。俺ここを左だから。またな!」
「ああ、また教室で」
俺の名前は露草一希。趣味は読書。高校1年生だ。受験は無事第一志望校に合格し、今ではかなり環境に慣れてきた。
入学当初、突出した才能もなく、あまり目立つこともなかった俺に話しかけて来た変な奴がいた。そいつ...月城達也は何故か最初に後ろの席にいる俺に話かけてきたのだ。
普段あまり人と話さない俺は驚いたがすぐに慣れた。常に話しかけてくるからである。正直鬱陶しかったがそのうち俺からも話しかけるようになった。
達也は部活に入らずにいつも早めに帰っている。
「親父が勉強しろってうるさいから先に帰る。お前も勉強しろよ!」と言っていた。声が大きい。
達也は中学の時野球部に入っていたらしい。その頃は親になにも言われなかったようだがその事については詳しく教えてくれなかった。
ちなみに俺はバスケ部に入っている。中学の時からやっていたこともあるが、達也がやった方がいいと言ったからだ。
達也に俺の親のことを聞かれたことがある。「俺の両親は基本的に何でも放っておいてくれる」と言うと羨ましがられた。
今日、俺は隣町の本屋に来ている。新しい本に出会うためだ。本が好きなので毎週来ている。
「今週のベストセラーは何かな」
俺は人気コーナーに行った。あった!
「ふむふむ、『サイコキネシスの使い方』か。人気みたいだけど胡散臭いのは嫌だな」
以前も他の人が似たような本を出していたのだが嘘が書いてあると炎上していた。理不尽な奴もいるものだ。だが今回はどうやら違うらしい。
「読んでみるべきかな?」
俺が悩んでいると背後で突然音がした。
「ドサッ 」
「なんだ!?︎」
振りかえると本が一冊落ちていた。なんだ、本が落ちただけか。
本を拾おうとすると突如、足元が揺れ始め、周りの棚がガタガタと音を立てた。頭上では照明が揺れ、まるで天井が崩れてくるかのような恐怖に包まれる。
「うおっ!地震か?」
俺が本棚に掴まっていると落ちてきた照明で頭を打った。
「ガンッ!」
そのまま俺は意識を失った。............
イテテ......俺は頭に走る痛みで目が覚めた。怪我はしておらず、気を失っただけだった様だ。
周りがあわただしい。そうだ、あの地震はどうなったんだろう。緊急地震速報が流れないなんて。俺は気になってスマホで調べた。すると驚くべきことが書かれてあった。
「震源地、俺の家の近くじゃないか!?︎」
急いで電車に乗ろうとしたが電車が止まっていた。仕方ない、走って行くか。
途中、車が渋滞になっていた。家に向かって走っていると急に崩れた建物が増えてきた。そして焦げ臭い匂いがする。
近くの家が火事になり、消化活動が行われていた。うちの家は耐震性は高いが流石に耐えきれないだろう。火事になって無ければ良いけどな。もう少しで家に着く。
息を荒げながら家があった場所に着くとそこにはただの更地が広がっていた。家は跡形もなく消えていた。火事が広がっていたようだ。
「そんな...」
焼け跡と瓦礫の中で胸が締め付けられるような痛みを感じた。俺は茫然自失となってしまっていた。
同時に認めたくないという思いが湧き上がった。
「まだだ!まだ生きているはず!」
まだ避難所にいる可能性がある。行けば親に会えるかもしれない。達也とも。
俺は避難所を探した。近くの避難所は壊れていて使えない。でも遠くの避難所に避難しているかもしれない。
着いた!その避難所は小学校の体育館だった。
中はやけに静かだった。俺はやっと会えると思ったが両親と達也の姿はどこにも見当たらなかった。
すると知っている顔を見つけた。あれは近所のおじさんか!
「すみません。ここの他に避難所はありますか?」
「一希くんじゃないか!生きていたんだね。ここの近くだともう一ヶ所あって近くの中学校が避難所になっているよ」
「ありがとうございます」
そこに行けば会える!...
待てよ?何かがおかしい。避難所が近くに二ヶ所しかないのはおかしいぞ。
確か織野市の人口は十万人ほどだったはず。避難所に出来る場所だってかなりあった...
「避難している人が少なくないですか?避難所二ヶ所は流石に足りないと思うんですけど...」
「死んだからだよ」
......え?今なんて...
「みんな死んだんだ。織野市にいた人の半分以上がな。
知り合いはほとんど死んだ。私の妻も子もみんな死んだ。
私は震源地から遠い公園のベンチに座っていた。だから軽い怪我で済んだんだ。
でも、...もう日常は取り戻せないんだ...」
おじさんは悲しそうに言った。
...そんな!...みんな死んだのか?...
クラスメイト達も?...近所の人も?...
そうだ。達也は今どこにいるんだ?急いで探さないと。俺は全力で中学校に走った。
嘘だ!達也が死ぬわけがない。そんなこと考えたくもない。
俺は中学校の体育館に着き、急いで知り合いがいないか探した。
いるんだろ?返事をしてくれ!
しかし達也どころか両親も見つけることが出来ない。
でも今の俺にとってはもはや達也以外はどうでも良かった。
俺は瓦礫の中を必死に走る。
何故だ!?︎絶対にどこかにいるはずだ!達也!約束したじゃないか!?︎
「また来週」と言ってくれたじゃないか!?︎どこにいるんだ!
いやだ、いやだいやだいやだ!
認めたくない。
「認められるか!達也が死んだなんて...」
声に出して俺は気付いてしまった。
そうか...達也はもうこの世にはいないのか。
その時、心の奥で何かが生まれるのを感じた。だが、その時の俺にはどうでもいいことなのだった。............




