第4話 魔王のマオ
「さあマオ君、お姉さんとシャワーを浴びましょうね〜」
シャワー室で二人きり。
下心丸出しのマグノリアは、マオ君の着ぐるみを剥ごうと服に手をかけた。
「ん〜、どこから脱げるのかしら?」
「これは服では無い。皮膚なのじゃ」
「まあ!マオ君はシャイなのね。お姉さんが優しく脱がしてあげるから安心しなさい」
マオ君が着ている羊のようなモコモコをまさぐって、服のチャックを探すマグノリア。
でも、おかしい。
探しても探してもチャックが見当たらない。頭から脱がそうにもモコモコはツナギのように全身に生えている。脱がすためには、どこかしらにはチャックがあるはずだ。
「マオ君、この服はどうやって脱ぐのかな?」
「だから服では無い。皮膚なのじゃ。我のモコモコは地毛なのじゃ!」
――地毛!?!?
マオの表情から嘘を言っていないと察した途端、マグノリアの脳みそはフル回転を始める。
彼と出会ってから今までに起こった全ての事象を勘案した結果、これだけはどうしても聞かなくてはならない質問が浮かび上がった。
「マオ君って、魔物なの?」
「これ、魔物なんぞと一緒にするではない。我は魔王であるぞ」
「マオ君ではなくて?」
「うむ。魔王であるぞ」
――ひぃぃいい!!
教会の結界が割れた謎が解明されたと同時に、マグノリアの背筋を極度の寒気が襲った。
教会内部に魔王を連れてきた聖女と知られてしまえば、少なくとも追放はされるだろう。
最悪、魔女として火刑に処される可能性だって十分にあるし、そもそも今すぐマオ君に殺される可能性だってゼロではない。
――まずはこの場を生き残ることが先決ね!
いくつもの修羅場をくぐってきたマグノリアは、ここぞという時の対応を間違えない。
今彼女に出来ることは魔王に対する数々の無礼を謝罪すること。それだけだ。
プライドなんて、とうの昔に捨てている。今さら土下座の一つや二つ、命の為には安いものだ。
「ははー!魔王様ぁー!これまでの無礼、大ッ変失礼致しましたぁー!」
シャワー室で二人、マオ君よりも先に服を脱いでいたマグノリアは、既に全裸であった。
聖女による全裸土下座。これで怒りが静まらない場合は仕方が無い。やれることは全てやったという達成感と共に、あの世へ旅立てるだろう。
「んむ?一体、何をやっておるのじゃ?」
「これが今の私に出来る全身全霊の謝罪でございます!」
「?? 名無しの我に、マオという名を授けてくれたそなたに謝罪を受けるいわれはないぞ。礼を言うのは我の方じゃ」
――セーーーフ!!!
「そ、そうよね!愛しのマオ君はとっても優しいものね――って、くっさ!」
安堵した途端に鼻の感覚が正常に戻った。途端、魔王様から放たれる臭いがマグノリアを襲う。
「マオ君、とりあえずこの臭いをどうにかしたいから一緒にシャワーを浴びようね」
「臭いが気になっておったのか、気づかんですまんな。まおーはきが漏れておったようじゃ」
「マオー吐き、とは?」
「吐きじゃのうて、魔王覇気じゃ。我の魔王覇気はくっせぇらしいの。自身で感じられんから気づかんかった、すまぬ」
こうして、命拾いしたマグノリアは、臭いのしなくなったマオ君を下心込みで隅から隅まで洗うのでした。
…
「のう、お主。いや、マグノリア。これからも我の世話をしてくれんかの?魔王軍無き今、行き宛が無くて困っておったのじゃ」
聖女としての立場、討伐されたはずの魔王の復活、人類の危機。
もろもろを勘案するまでもなく、マグノリアの頭は法に触れずショタを囲えるという下心に支配されてしまっていた。
「もちろんよ、マオ君。お姉さんに任せなさい!」
「ありがとうなのじゃ!これからよろしゅう頼むぞ!」
その笑顔にキュン死しそうになり、足元がふらついたマグノリアは思わずマオに抱きついた。
──グヘへ、もう離しません!




