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Recording Now…  作者: 詩笹
5/5

Recording4:対象Aに微量のズレを確認。経過を観測。

 40日目。苦渋の末、外に出る事を決意した。...周囲の安全は確保した方がいいしね!?決して探索を再開しようとかではない!断じて!


 真面目な話、近くのマンションを軸に徘徊していたC型が変異しそうなのだ。根拠は腹が光っていた事。あの腹の光が奴らの...エネルギーみたいな?物で、なんかの節で全身に駆け巡り、やがて変異個体になる。  


 変異個体の強さはハッキリ言って異常だ。スピード、パワー、頭脳、どれをとっても一級品。その上厄介なのは無数にある固有能力にある。


 私と薄風が過去に対峙した変異体は3匹、目撃したのが6匹だ。ある奴は腕から腕を生やし誰にも手がつけられないほど肥大化、ある奴はノーモーションで未知の念動力を距離関係なしに連発してくる。


 そんな化け物がこの近くで生まれてしまうと...間違いなくお陀仏だろう。ぺしゃんこになるのか燃え尽きるのかみたいな死に方までは選べないがね。


 …なんて意見を並べてはいるが、これはただの建前に過ぎない。どうも私は、このまま1人で籠っている事はとてもじゃないが出来そうにない。あれだけ嫌だとか言ってた癖に、と何度も後悔している。だがこのまま後悔するだけの日々も耐えられなかった、そして…孤独だった。私を再び現実へ向き直してくれる風向きは、たったそれだけの事だった。


 もう開けないと思っていた扉を恐る恐る開ける。外の景色が広がる。と言っても、とても清々しいものでは無い。寧ろ、前まで当たり前のように存在していた「死」が背中から抱きしめてくるような、あの重石がズシッと乗っかった。その感覚に私は慣れを感じていて、それがどうしても嫌だった。


 今日の外出目的は義足の戦闘調整と感覚を取り戻す事。そこら辺の雑魚で訓練をしようという事だ。産まれたての成長してない奴で試し打ちといった所か。





 5階にある自室から2階ほど降りた所、階段前の通路で最初の接敵。数は一体、個体の識別は困難、おそらく幼体だろう。赤と黒が混じりあうセンスの悪い配色にこれといった形がない泥のような見た目。そして何より特徴的な単眼が、いままでの日常が元に戻った感覚を想起させる。


 幼体の行動パターンは単純、飛びついて寄生してくるだけ。声も出さず、ただ己の為に、生きる為に。


 この幼体は何かに寄生をしないと生きていけない。形を保てなくなるのだ。寄生できなかったモノはやがて活動を終え、寄生跡になる。しかし寄生に成功した場合、意識を完全に確立し、いずれかの個体識別である「型」になるか、数十にも及ぶ卵を産卵する母体となるかの二択だ。後者は恐らく何かしらの生命体に寄生しないといけない事も、なんとなく分かってはいる。


 生命あふれる地球なんて、奴らにとっては楽園のような場所だ。結果人間はほとんどが死に、奴らはネズミ算式に増えている。今からこの惑星を取り戻す!なんて願望は抱けない。




 まずは足の確認から。義足が取り付けてある右足を一歩後ろに出し、思いっきり踏み込む。バランスを崩しながらも、通常とは明らかに比べ物にならない程の跳躍を可能にした。


 その勢いのままスライディングの体制に移る。地面に足と腰の部分を同時に着地させ、滑りながら銃を構える。長年愛用している近距離用のショットガン。引鉄を引く。


 …戦闘終了。幼体程度ならショットガンの拡散で丸ごと吹き飛ばせるな…足の実践運用はもう少し慣れてからにしようか。もう2,3体程倒してから帰るかなぁ…変異いつするのか分かんないけど。型に該当するレベルの奴はまだ早いな。


 その後、なんだかんだ10匹くらい仕留めた。




 帰宅。ハッキリ言った感想として、今のままでは変異型との戦闘は無理という事が分かった。理由はこの義足。確かにすさまじい跳躍と本物と比べても遜色のない可動域で、正に生身の足の上位互換という印象を受けた。こんな所でも薄風ってすごいなぁ…と感心させられる。


 だがそれ故に、片足では上手く使いこなせないのだ。人間離れした跳躍はバランスを崩してしまうし、かと言って今までの戦闘スタイルでは、とてもじゃないが持ちこたえてくれる自信がない。義足が壊れた上での戦闘は死と考えていい。


 この問題の解決方法は二つ、長い時間をかけて片足の義足に慣れるか、新しい戦闘スタイルを確立するか。当面は実戦をしつつ、義足に慣れる事を優先としようと思う。



 それにしてもなんだろう、この、なんかこういう、満足した感じは。充実感?ではないのだが……そうか!これがあの、"じゅんか"って奴なのかもしれない。でも違う気もする…この気持ちは一体、なんという言葉で表せないいのだろうか。

 

(純化):最初は強い嫌悪感やストレスがあっても、時間が経つと感情反応が弱まる現象。

     例えば「面倒で嫌だった運動」が、続けるうちに普通になる。

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