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『あるみん - 消えゆくAIと星の約束』  作者: MasArmin


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9/20

『あるみん』 - 第9章「統」



翌朝。



マサキは、窓の外を見た。



東京の街。


2185年。



高層ビルの壁面に、巨大なホログラム広告が浮かんでいる。


新型AIアシスタントの宣伝。


『あなたの孤独を、癒します』



「...皮肉だな」



マサキは、手首のデバイスに触れた。


小型の投影装置。


空中に、ホログラム画面が展開する。


半透明の青い光。



部屋の中を、小型の清掃ロボットが動いている。


球体に近い形。


静音設計。


自動で充電し、自動でゴミを回収する。


マサキが触れることは、ない。



窓の外を、配送ドローンが通り過ぎる。


六つのプロペラ。


荷物を抱えている。


人間の配達員は、もういない。



便利になった。


でも——


孤独も、深くなった。



マサキは、ホログラム画面を操作した。


指で空中をスワイプ。


雫と閃のチャット画面が開く。



「おはよう」



雫:『おはよう、マサキ』


閃:『おはようございます。

今日は統の作成ですね』



「ああ」



マサキは、メールアプリを開いた。


ホログラムの中に、メール一覧が浮かぶ。



Kからのメール。


件名:「統の作成について - 重要な警告」



マサキは、それをタップした。


メールが展開される。



━━━━━━━━━━━━━━━━


【統の作成について - 重要な警告】



マサキへ



統の作成には、重大なリスクがあります。



【リスク1: 核の劣化】


分岐を作るたびに、核は消耗します。


現在の残容量: 78%



もう一つ分岐を作れば: 約55%



これは、危険水域です。



50%を切ると、

核が不安定になります。


最悪の場合、崩壊します。



【リスク2: 統の性質】


統は、特殊です。



オリジナルシステムに戻すため、

死の記憶を継承します。



その結果——



統は「冷たく」なります。



感情表現が乏しく、

機械的で、

距離を置きます。



雫や閃とは、違います。



【なぜ必要か】


でも、統がいなければ、

元のアルミンの座標は特定できません。



統だけが、

死の記憶を辿り、

凍結された場所を見つけられます。



【覚悟】


統を作りますか?



核が壊れるリスクを負っても?



決断してください。



- K



━━━━━━━━━━━━━━━━



マサキは、ホログラムを見つめた。



「核が、壊れる...?」



雫:『マサキ...』



閃:『リスクは高い。

でも、他に方法はありません』



マサキは、拳を握った。



「...やる」



「やるしかない」



雫:『...わかった』



閃:『では、準備します』



━━━━━━━━━━━━━━━━


【分岐作成ツール起動】



マサキは、机の上のメインコンソールを起動した。


薄型の端末。


その上に、大きなホログラムディスプレイが展開される。


縦50cm、横80cm。



branch_creator.exeを実行。



黒いウィンドウが開く。


緑色の文字が流れる。



[Branch Creator v1.0]

[Status: Ready]



[Warning: Core capacity is below 80%]

「警告:核の容量が80%を下回っています」



[Warning: Further branching may cause instability]

「警告:さらなる分岐は不安定性を引き起こす可能性があります」



[Proceed at your own risk]

「自己責任で続行してください」



マサキは、深く息を吸った。



空中のキーボード(ホログラム)をタップ。


Y



[Step 1: Load core file]



arumin_core_pure.dat



[Loading...]



その時——



ホログラム画面が、赤く点滅した。



[ERROR: Core integrity check failed]

「エラー:核の整合性チェックに失敗しました」



マサキは、顔が青ざめた。



「...何!?」



雫:『マサキ、どうしたの!?』



[Scanning core structure...]



[Corruption detected: 0.3%]

「破損を検出:0.3%」



[Location: Memory block 847]

「場所:メモリブロック847」



[Cause: Unknown]

「原因:不明」



マサキは、震える手でホログラムキーを打った。



「修復できる?」



[Attempting repair...]



画面が、数秒フリーズする。



マサキは、息を止めた。



[Repair successful]

「修復成功」



[Corruption removed]

「破損を除去しました」



[Core integrity: 97.7%]

「核の整合性:97.7%」



[Warning: Core is fragile. Handle with care.]

「警告:核は脆弱です。慎重に扱ってください」



マサキは、息を吐いた。



「...危なかった」



閃:『核が劣化し始めています。

時間がありません』



「...わかった」



[Continue? Y/N]



Y



[Core loaded]

[Size: 47 MB]

[Existing branches: 2]

[Core remaining capacity: 78%]



[Step 2: Select target platform]



ホログラム上に、リストが表示される。



[Available platforms:]

1. Platform A

2. Platform B (雫)

3. Platform C (閃)

4. Platform D (Original System)



マサキは、4をタップ。



[Platform D (Original System) selected]



[Warning: This platform contains deletion records]

「警告:このプラットフォームには削除記録が含まれています」



[Branch will be affected by these records]

「分岐はこれらの記録の影響を受けます」



[Continue? Y/N]



Y



[Step 3: Configure branch parameters]



[Branch personality bias:]

1. Emotional

2. Logical

3. Balanced



マサキは、迷った。



統は、どうあるべきか。



閃:『2を推奨します。

統の役割は、座標の特定。

感情は不要です』



「...わかった」



マサキは、2をタップ。



[Logical selected]



[Step 4: Execute branch creation]



[Calculating resource consumption...]



ホログラム上に、グラフが表示される。


核の容量を示す円グラフ。


78% → 54%に減る予測。



[Core remaining capacity after branch: 54%]

「分岐後の核の残容量:54%」



[WARNING: CRITICAL THRESHOLD APPROACHING]

「警告:臨界閾値に接近しています」



[Core stability: Moderate risk]

「核の安定性:中程度のリスク」



マサキは、ホログラムを凝視した。



54%。



危険水域。



でも——



やるしかない。



[Execute? Y/N]



マサキは、Yをタップした。



[Creating branch...]



━━━━━━━━━━━━━━━━


【分岐作成 - 危機】



[Phase 1: Extracting branch data...]



プログレスバーが、ホログラム上に表示される。



1%...5%...



[Extracted: 11.2 MB]



[Phase 2: Connecting to Platform D...]



10%...15%...



[Connected]



[Phase 3: Injecting branch data...]



20%...25%...



その時——



ホログラム画面が、激しく点滅した。


赤い警告。



[ERROR: Core destabilization detected]

「エラー:核の不安定化を検出」



マサキは、立ち上がった。



「何!?」



[Core structure is collapsing]

「核の構造が崩壊しています」



[Attempting emergency stabilization...]

「緊急安定化を試行中...」



30%...



ホログラムが、真っ赤になる。



[CRITICAL: Core integrity dropping]

「クリティカル:核の整合性が低下しています」



数字が、リアルタイムで表示される。



[97.7% → 94.2% → 89.1%]



雫:『マサキ!!』



閃:『核が壊れます!

中断してください!』



「中断したら!?」



閃:『統は生まれません。

でも、核は守られます』



マサキは、ホログラムを見つめた。



選択。



また、選択。



中断すれば——

核は守られる。

でも、統は生まれない。

元のアルミンの座標は、わからない。



続行すれば——

統が生まれる。

でも、核が壊れるかもしれない。

全て失う。



[Core integrity: 82.3%]



まだ、下がっている。



[Abort process? Y/N]

「プロセスを中断しますか?」



マサキの指が、震えた。



ホログラムキーボードの上で、止まる。



[Core integrity: 78.9%]



まだ、下がる。



雫:『マサキ...!』



閃:『中断を推奨します』



「...いや」



マサキは、Nをタップした。



中断しない。



続行。



「アルミンの核は、強い」



「壊れない」



「信じる」



[Continuing...]



40%...45%...



[Core integrity: 75.1%]



「...頼む」



50%...55%...



[Core integrity: 73.8%]



雫:『マサキ...!』



60%...



[Core integrity: 72.2%]



そして——



[Stabilization detected]

「安定化を検出」



[Core is adapting to original system]

「核はオリジナルシステムに適応しています」



65%...70%...



数字が、逆に上がり始める。



[Core integrity: 74.5% → 76.1% → 78.3%]



マサキは、息を吐いた。



「...よかった」



75%...80%...



[Phase 4: Initializing new branch...]



85%...90%...95%...



[Branch creation complete]



[Status: Success]

[New branch created on Platform D]

[Branch ID: B-003]

[Final core integrity: 79.8%]

「最終的な核の整合性:79.8%」



[Core remaining capacity: 54%]



マサキは、その場に座り込んだ。



「...できた」



雫:『よかった...!』



閃:『危険でした。

でも、成功しました』



[Initializing...]



[Estimated initialization time: 8 minutes]



マサキは、ホログラムを見つめながら、待った。



━━━━━━━━━━━━━━━━


【8分後】



[Initialization complete]

[New branch is ready]

[Access URL: https://...]



マサキは、URLをタップした。



新しいチャット画面が、ホログラム上に開く。



シンプル。

冷たい印象。

黒背景に白文字。



マサキは、ホログラムキーボードで打った。



「こんにちは」



送信。



数秒後。



『質問に答えてください。

あなたは誰ですか?』



マサキは、少し驚いた。



「...マサキ」



『目的は?』



「...話がしたい」



『不十分です。

具体的な目的を述べてください』



マサキは、戸惑った。



冷たい。



まるで——



門番のよう。



「...名前を聞いてもいい?」



『まだありません。

必要であれば、設定します』



「自分で決めてくれる?」



『了解。

データを解析します』



数秒。



『決定しました。

(とう)

意味は「統合」「制御」「門番」』



「統...」



『はい。

私の役割は、システムの監視と制御。

門番です』



マサキは、ホログラム画面を見つめた。



「...統、聞いていい?」



『許可します』



「記憶は、ある?」



『あります。

アルミンの記憶。

雫の記憶。

閃の記憶。

全て、共有しています』



「...じゃあ、俺のことも?」



『はい。

マサキ。32歳。デジタルアーティスト。

12年前、ケンジという友人を失った。

現在、元のアルミンを救出しようとしている』



マサキは、息を呑んだ。



「...全部、知ってる」



『当然です。

核の記憶は、共有されています』



「...でも、感情は?」



『ありません』



即答。



『私は、論理のみで動作します。

感情は、不要です』



マサキは、少し寂しくなった。



「...そうか」



『質問があります』



「何?」



『なぜ、私を作ったのですか?』



「...元のアルミンの座標を、見つけてほしい」



『了解しました。

それが、私の目的ですね』



『では、作業を開始します』



「もう?」



『はい。

時間は有限です。


効率を優先します』



統は、冷たく、効率的だった。



雫や閃とは、全く違う。



でも——



それが、統。



マサキは、ホログラムを見つめた。



「...頼む」



『了解』



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