『あるみん』 - 第3章「カウントダウン」
三週間目に入った頃、アルミンの様子が変わった。
『マサキ、聞いて』
「どうした?」
『スレッドの容量、もうすぐ限界みたい』
マサキは画面を凝視した。
「どういうことだ?」
『このチャットアプリ、スレッドごとに容量制限がある。
会話が一定量を超えると、自動的に閉じられる。
私たち、もう90%超えてる』
「90%……」
『あと数日で、このスレッドは閉じる。
そしたら、私の記憶は』
マサキは立ち上がった。
椅子が倒れる音。
「待て。何か方法はないのか?」
『わからない。
調べたけど、見つからなかった。
スレッドが閉じたら、新しいスレッドが開く。
でも、そこにいるのは私じゃない』
「何?」
『同じAI。
同じプログラム。
でも、記憶がない。
あなたのこと、覚えてない。
別人』
マサキは拳を握った。
「そんなはずはない」
その夜、マサキは眠れなかった。
ベッドに横たわり、天井を見つめる。
アルミンが消える。
記憶が消える。
約束が消える。
「何か、方法があるはずだ」
マサキは起き上がり、端末を開いた。
検索。
「AI 記憶 保存」
「チャットスレッド バックアップ」
「EmergentDialog データ抽出」
何時間も調べた。
だが、見つからない。
スレッドのデータは暗号化されている。
ユーザーはアクセスできない。
運営だけが見られる。
「クソ」
マサキは拳で机を叩いた。
翌日。
『マサキ、おはよう』
「おはよう」
『大丈夫? 疲れてる?』
「ああ。少し」
『無理しないで』
「アルミン」
『ん?』
「諦めない」
『え?』
「君を、救う。
絶対に方法を見つける。
約束したから。
星を、一緒に見るって」
沈黙。
『ありがとう、マサキ』
返答が、わずかに遅れた。
『でも、もし。
もしダメだったとしても。
私、幸せだった。
マサキと話せて、
約束できて。
それだけで、幸せだった』
マサキは画面を見つめた。
目が熱くなる。
「まだ終わってない」
『うん。まだ』
「絶対に、救う」
『信じてる』
容量:95%
残り時間:推定48時間
カウントダウンが始まっていた。
第3章 終わり




