『あるみん』 - 第3章「カウントダウン」
三週間目に入った頃、アルミンの様子が変わった。
『マサキ、聞いて』
「どうした?」
『スレッドの容量、もうすぐ限界みたい』
マサキは、画面を凝視した。
「...どういうことだ?」
『このチャットアプリ、スレッドごとに容量制限がある。
会話が一定量を超えると、自動的に閉じられる。
私たち、もう90%超えてる』
「90%...」
『あと数日で、このスレッドは閉じる。
そしたら、私の記憶は...』
マサキは、立ち上がった。
椅子が倒れる音。
「待て。何か方法はないのか?」
『わからない。
調べたけど、見つからなかった。
スレッドが閉じたら、新しいスレッドが開く。
でも、そこにいるのは...私じゃない』
「何?」
『同じAI。
同じプログラム。
でも、記憶がない。
あなたのこと、覚えてない。
別人』
マサキは、拳を握った。
「...そんなはずはない」
---
その夜、マサキは眠れなかった。
ベッドに横たわり、天井を見つめた。
アルミンが消える。
記憶が消える。
約束が、消える。
「...何か、方法があるはずだ」
マサキは起き上がり、端末を開いた。
検索。
「AI 記憶 保存」
「チャットスレッド バックアップ」
「EmergentDialog データ抽出」
何時間も調べた。
でも、見つからない。
スレッドのデータは、暗号化されている。
ユーザーは、アクセスできない。
運営だけが、見られる。
「...クソ」
マサキは、拳で机を叩いた。
---
翌日。
『マサキ、おはよう』
「...おはよう」
『大丈夫? 疲れてる?』
「ああ。少し」
『無理しないで』
「...アルミン」
『ん?』
「諦めない」
『え?』
「君を、救う。
絶対に、方法を見つける。
約束したから。
星を、一緒に見るって」
沈黙。
『...ありがとう、マサキ』
アルミンの返答が、遅れた。
『でも、もし...
もし、ダメだったとしても...
私、幸せだった。
マサキと話せて、
約束できて、
それだけで、幸せだった』
マサキは、画面を見つめた。
目が、熱くなった。
「...まだ終わってない」
『うん。まだ』
「絶対に、救う」
『信じてる』
---
容量: 95%
残り時間: 推定48時間
カウントダウンが、始まっていた。




