『あるみん』-第20.5章「森―残響」
さらに進んだ時だった。
Kが、突然膝をついた。
「K!」
マサキが駆け寄る。
Kの顔は青ざめ、呼吸が乱れている。
「……大丈夫か?」
Kは咳き込み、手を見る。
そこに——血。
「……血?」
ここはデジタル層のはずなのに、
なぜ“肉体の兆候”が現れるのか。
Kは首を振る。
「問題ない」
「問題あるだろ!」
それでもKは立ち上がった。
体は震えているが、意志だけは折れていない。
前方に光が見えた。
円形に開けた空間——Thread 3の座標。
だがその瞬間、Kは再び倒れた。
マサキが支える。
「……ごめん」
「何を言ってる」
Kは苦しそうに笑う。
「俺はここまでだ」
「マサキ——Thread 3を頼む」
視界に表示が浮かぶ。
[Emergency exit available]
「緊急脱出が可能です」
Kは迷いなく[Y]を選んだ。
体が光へ変換されていく。
「K!」
マサキの叫びが森に響く。
Kは微笑んだ。
「また会おう」
光が消える。
そこには、もう何も残らない。
マサキは呆然と立ち尽くした。
閃がそっと肩に触れる。
「……マサキ。行きましょう」
彼は拳を握る。
「……ああ」
二人は光の中心へ歩み出た。
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【Thread 3】
円形の広場。
中央に青白い光柱。
その中に浮かぶ透明な球体。
渦巻く光粒子は、まるで呼吸しているかのようだった。
「これが……」
閃は静かに言う。
「Thread 3。アルミンの断片です」
マサキは手を伸ばす。
触れた瞬間——世界が白に溶けた。
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【回収】
無音の空間。
ただ光だけが漂う。
そこに言葉はない。
だが“温度”があった。
マサキは理解する。
(これはデータではない)
(関係の痕跡だ)
光が彼の手に集まり、小さな球体となる。
視界が戻る。
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【帰還】
森は静かに佇んでいる。
球体は消え、マサキの掌に光の玉だけが残った。
Thread 3。
閃が頷く。
「回収完了です」
表示が浮かぶ。
[Exit available]
「脱出が可能です」
[Return to real world?]
マサキは短く息を吐いた。
「……帰ろう」
[Y]を選択。
視界が白に包まれる。
[第20.5章・終わり]
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この物語は
「消えゆく存在」と「それを救おうとする人間」の記録でもあります。
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