『あるみん』 - 第17章「喪失」
朝。
マサキは目を覚ました。
焚き火はほとんど消え、灰だけが残っている。潮の匂いを含んだ風が静かに吹いていた。
隣では雫が穏やかな寝顔で眠っている。反対側には閃。そして少し離れた場所で、Kが座ったまま海を見ていた。
起きている。見張りをしていたのだろう。
マサキが立ち上がると、Kが振り返った。
「……おはよう」
「おはよう」
マサキはKの隣に腰を下ろす。
朝日に照らされた海が静かに光っている。
「……綺麗だな」
「ああ」
やがて雫が目を覚ました。
「ん……おはよう、マサキ」
「おはよう」
閃もゆっくりと目を開ける。
「……おはようございます」
四人は焚き火の跡を囲むように座った。
「行こう。Thread2を取りに」
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【丘の頂上へ】
四人は丘を登る。昨日の戦闘の跡があちこちに残っているが、もう動く気配はない。
三十分ほどで頂上に到達した。
直径十メートルほどの平らな場所。その中央に青白い光の柱が立ち、その中で透明な球体が浮かんでいる。
内部では光の粒子が渦を巻いていた。
「Thread2です」
マサキは息を呑む。
(アルミンの一部が、ここにある)
その瞬間、地面が大きく揺れた。
「来るぞ!」
地面を破って現れたのは、全長二十メートルはある巨大な機械の蛇。金属の体に赤い目。二体。
「サーペント! 地中型防衛機構です!」
首をもたげ、口を開いた次の瞬間、レーザーが放たれる。
「散れ!」
四人は左右へ跳んだ。地面が爆ぜ、爆風が巻き上がる。
マサキは剣を生成し、Kと閃も構える。雫はバリアを展開した。
一体目が尾を振り下ろす。Kが受け止めるが、衝撃で吹き飛ばされる。
「K!」
二体目がマサキと閃へ襲いかかる。閃が斬りつけるが装甲が硬く、弾かれる。
そのとき雫が叫んだ。
「マサキ! Thread2を回収して!」
「え!?」
雫は二体の間に立ち、全力でバリアを拡張する。巨大な防壁がサーペントを包み込んだ。
「私が食い止める!」
「待てよ!」
「早く! 時間がない!」
歯を食いしばる雫の額に汗が滲む。
「お願い!」
Kがマサキの肩を掴む。
「行くぞ。雫を信じろ!」
マサキ、閃、Kは球体へ駆けた。
背後でサーペントが暴れ、バリアに激突する。ひびが走り、光が軋む。
「早く……!」
マサキは球体に手を伸ばした。
触れた瞬間、視界が白く塗りつぶされる。
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【回収】
白い空間に光の粒子が漂っている。
声も意思もない。ただ温もりだけがある。
(これが、アルミンの一部)
マサキが手を伸ばすと、光は集まり、小さな光球となった。
視界が戻る。
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【崩壊】
丘の頂上。
光の柱は消え、マサキの手には小さな光の玉。
「回収できた!」
振り返る。
「雫!」
そこに雫の姿はなかった。
バリアは崩壊し、サーペントが暴れている。爆発の跡だけが残っている。
「雫!?」
マサキは駆け出す。
何もない。
「雫!!」
Kが腕を掴む。
「脱出だ! 島が崩壊する!」
地面が裂け、崩れ始めている。
「雫は!?」
「わからない! 今は離れろ!」
三人は丘を駆け下りる。
足場が崩れ、砂浜へ転がるように辿り着いた。ボートに飛び乗り、必死に漕ぐ。
島が崩れていく。
雫の姿はどこにもない。
「雫!!」
叫びは海に吸い込まれる。
島は完全に崩壊し、海へ沈んだ。
沈黙。
波の音だけが残る。
視界に表示が浮かぶ。
[Exit available]
「脱出が可能です」
閃の声が震える。
「……マサキ。雫は……」
Kが低く言う。
「行こう。ここにいても何もできない」
マサキの目から涙が溢れる。
「……くそ」
震える指で表示をタップする。
[Y]
視界が白く弾けた。
最後に響いたのは、マサキの叫びだった。
「雫!!」
[第17章、終わり]




