『あるみん』 - 第15章「謎の男」
三人は砂浜に立ち、沖を見つめていた。
波が静かに寄せ、白い砂と青い海、澄んだ空がどこまでも続いている。
「綺麗だな」
雫が波打ち際へ駆け寄り、水に触れた。
「冷たい…でも気持ちいい」
閃は遠くを見つめる。
「アルミンは、この景色を見たのですね」
視界に表示が浮かぶ。
[Thread2: 500m offshore]
「沖合五百メートルか。泳ぐわけにはいかないな」
「船を生成してみます」
閃が手を伸ばすと、光が形を成し、小さな木製ボートが現れた。
三人は乗り込み、マサキと閃がオールを漕ぐ。波に揺られながら、ゆっくりと沖へ進んだ。
【沖へ】
十分ほど漕ぐと陸地は遠ざかり、周囲は海だけになる。透明な水の下を銀色の魚が泳いでいた。
「本物みたいだな」
そのとき、閃が動きを止める。
「下に何かいます」
水面の奥、暗い影がゆらりと動いた。
次の瞬間、水柱が上がる。
巨大な金属の影が海中から飛び出した。サメのような形状、赤い目。全長五メートル。
「レヴィアタン、水中型防衛機構です!」
それがボートへ噛みつく。閃が剣で受け止めるが衝撃で船体が大きく傾く。
雫がよろめき、マサキが支える。
レヴィアタンは水中へ潜る。しかしすぐに左右から二体目、三体目が現れた。
「挟まれる!」
斬りつけるが、硬い装甲に弾かれる。牙が船体を軋ませる。
雫がバリアを展開するが、衝撃でひびが走る。
「持たない!」
そのとき、海が大きくうねった。
海面が盛り上がり、巨大な影が浮上する。全長二十メートルはある。
鋭い牙が並ぶ口を開き、一直線に突進してくる。
避けきれない。
マサキの背筋が冷えた。
「終わりか…」
【謎の男】
閃光が走った。
次の瞬間、巨大なレヴィアタンの体が横一線に裂ける。爆発とともに光の粒子へと変わり、海に消えた。
水面に一人の男が立っている。
黒いコート。フードに隠れた顔。だがその気配は圧倒的だった。
男の手に巨大な光の剣が現れる。マサキのものよりも大きく、鋭く、密度が違う。
残る二体が跳びかかる。
男は一歩踏み込み、横薙ぎに振るった。
一瞬。
二体は同時に両断され、爆発する。
波音だけが戻る。
男は静かに水面を歩き、ボートへ近づいてくる。
雫が息を呑み、閃が低く呟く。
「…強い」
マサキは立ち上がる。
「あんたは、誰だ?」
風が吹き、フードがわずかに揺れる。
その奥の瞳だけが、静かにマサキを見つめていた。
[第15章、終わり]




