セクハラとは。
ジャンが六年後、一緒に旅についてきてくれるということで。
とりあえず、トランプの遊び方を伝授しなくてはと思った。
二人なら、スピードも出来るではないか!
またやれることが増えたぞ。
「じゃあ、まずはトランプというものなのだが、」
「ちょっと、ストップ」
「どうした? 何か不備があったか?」
「遊びのことばかり書いていたけど、食べ物とかは心配じゃないの?」
「なるほど。あまり考えたことはなかったな。たぶん、興味がないのだろう」
「だから、こんなに細いの?」
そう言って、私の二の腕を触るジャン。
セクハラになるぞ。いや、この場合は私がセクハラをしているのか?
そんなことを考えていた途端、突然私とジャンは引き離された。
そして、私はすっぽりとエドワード王子の腕の中にいたのである。
十三歳の男の子と十歳の女の子だ。
いくらエドワードがヒロインと言えども、体格差はかなりある。
くるりと回転させられると、そのままエドワードの胸に頭を押さえつけられた。
何がしたいのだろうか、エドワードは。
「ジャン、あんまり触ったら兄といえども本気で怒ってしまうかもしれないな」
エドワードのいつもより低い声が耳に落ちてくる。
「なるほど。それもそうだな」
私はそう言って、エドワードの腕から抜け出した。
少しは鍛えてあるのだ。
十三歳の男の子の腕くらい、簡単に外せる。
「すまなかった、エドワード。仮の婚約者といえども、一応、婚約者は婚約者だ。私もあまり人にベタベタされないよう、節度を持たなくてはならなかったのだ」
私の言葉に、エドワードが笑顔を浮かべる。
だが、その笑みには、いつもの愛らしさは欠片もなかった。
……というより、キース王子と似ている?
「仮の……一応……か。そっか、そっか。……これは、早いところ根回しをしっかりしておくべきか」
最後の方はなんと言っていたのか、分からなかったが。
そのまま、エドワードはつかつかと歩いていった。
「何だったのだろうな」
「さあね」