スローライフのための。
ボビーお兄様が学園へと旅立ったその日から、私は精力的に動き出すことにした。
そう、忘れてなどいない。
オンセン開発は、私の人生計画の要であるのだから。
ただ、ボビーお兄様には弱い私。
いずれ訪れる旅路のための剣術の鍛錬や中央地に関する調査などをしていても、そのことについてボビーお兄様からたしなめられればどうしても強く出られない私がいた。
しかし、そんな心配はなくなった。
これからは、大いにスローライフ計画に向けて動き出せるというわけだ。
まず、私はこれからやるべきことをまとめることにした。
一つ目は、トランプの開発だ。
トランプという概念を広め、ルールブックを作成頒布しなくてはならない。
それなりに質の良いトランプが手に入れば、遊び方は無尽蔵。
一人遊びの種類だっていくらであるし、宿屋にトランプ一つあるだけで、旅人たちが皆楽しい夜を過ごせるのだ。
これは欲しい。
二つ目は、小説や漫画の開発及び普及だろう。
いかんせん、この世界には娯楽というものが少なすぎる。
酒場や娼館しかないというのだから。健全すぎると私は思う。
小説や漫画が街や村で購入できるようになれば、旅の道中、退屈しないだろう。
そして、最後はやっぱり音楽だ。
ギターのような楽器を持って旅をしてみたい。
焚き火の前で静かにバラードを歌ってみるなど、随分風情があって憧れる。
なお、ギターの弾き方の知識は持っていないので、前世ではギターを弾いたことはないと考え良いだろう。
とにかく、この三つを作り、物流の基盤を作らなければならない。
それも、十六歳になるまでに。いや正確には、十三歳の学園入学までに。
そうと決まれば、早速ジャンに鳩を飛ばそう!
何か良いアイデアをくれるだろう。
一応、エドワードと婚約したことも伝えておくか。