第捌拾玖話《チームメンバー発表/副将との戦い》
龍雅は、放課後、ある一室に来ていた。
そこは、銀河丘高校の理事長室の隣にある隠し部屋だった。
部屋の中には、龍雅を含めた男子五名、女子五名が入っていた。
部屋の隅で、一人黙っている幼さげな少女、部屋の最奥の真ん中の席に座る紗里弥と話す奈々、項垂れている虎太郎、腕を組み、長身の青年二人と話している剛司、資料を整理している青髪の美少女、席に座らずに部屋を見渡す龍雅。
「来たか…さぁ、座れ。」
紗里弥は、そう言って龍雅の椅子を念動力で引き、龍雅は椅子に座る。
「龍雅君。遅かったね。何してたの?」
「爆弾処理してた。」
「何の!?」
奈々は、そう言って驚き、後ろに下がる。
「反物質。」
「えぇ…」
――まぁ、嘘だけど
「さて、会議を始めようか…まぁ、質問や意見があれば言ってくれ。なければ本題に入る。」
「早速質問。」
「何だ?」
「大会で死んで生き返ってもいいか?」
「不死者は、大会が始まって終わるまで99回までと決まっている。」
「何故99回なんだ?」
「不死者は、自身の不死性に驕り高ぶり、油断しやすい為、何度も死ぬものが多くいる。だから大会の上層部は、お前のような不死者は、死にやすいと勘違いしておる。だが、不死者を不死のまま放っておいては不死性を生かし、長期戦に持ち込み負ける事はないと考え、99回と設定した。」
「なるほどな…」
「ふむ、不満なようだな。だが、公平性が保たれない。公平性を保つには、バランスが必要だ。」
「降参したらどうなる?」
「どうにもならない。次の試合に進出すれば、現在のライフのまま」
「不死者って俺以外にもいるのか?」
「前にも言った通り1000年生きる少年は不死者だ。他にもいるが、全員何故か消息不明になっている。消息が確認できたのはその少年だけだ。選別軍から世界を救ったかの英雄も不死者だが、何処に消えたのかわからない。もしかしたら異世界に行っているやもしれぬ。」
「なるほど…」
「会長さん、質問いいか?」
「何だ? 正彦?」
「泊まる場所って前の同じ場所か?」
「それは私が答えるわ。まぁ、同じね。その事に関しては後々応えるから。」
「わかった。」
「質問はもういいか?」
「はい!」
「奈々、何だ?」
「泊まりって事は、龍雅君と一緒の部屋に…」
「駄目だ。男女別だ。」
「そんなー」
「気持ちはわからなくもない。私も龍雅と一緒にいたい。つらい…とてもつらい。だが、耐えねばならぬ。」
「ヒュ~モテモテじゃねえか。龍雅、イケメンは憎いねえ…」
「貴方は?」
「秋田正彦、それが俺の名前だ。能力は、あらゆる防御能力を無視する能力とあらゆる衝撃、病気を九割軽減する能力だ。副将をやらせてもらってるよろしくな。龍雅」
「はい。よろしくお願いいたします。」
「質問、意見はないか? …ないようだな。では本題に移る。まずは、団体戦の順番を決める。龍雅、お前は前にも言った通り、先鋒をやってくれ。」
「了解、何せこの中では、俺が一番戦闘力的に弱いからな。恐らく先輩方に普通に挑んでも勝てないだろうね。」
「おいおい、そんなんで大丈夫かよ…」
「お言葉ですが、先輩…俺の兄、龍雅は戦闘力的に申しましたが、戦闘経験や戦闘技術、そして能力に関しては申していませんが? ただ戦闘力だけで人を推し量るのは、愚かだと俺は思うのですがね。」
宮弥は、そう言って反論した。
「へぇ…じゃあ為させてもらおうじゃねえか。」
「やれやれ…挑発に乗るか…気を付けろ。恐らく実力以上の物を持っているぞ。」
「実力以上か…嘗めてかかってはいけないという事か…」
――流石は剛司だな。いや、魂が俺の事を覚えているといってもいいな。かつて俺とあんたは戦った。そしてお前は俺に敗北した。そして今のお前は頭では俺の事を覚えてはいない…だが体は覚えている。俺に対する脅威をな。
「やりますか?」
「あぁ、勝ってやる。この戦いでお前の強さを見抜く。」
「そうですか…では堪能してくださいね。先輩…」
宮弥は、指を鳴らすと、龍雅と正彦は意識を失った。
「二人の意識を俺が制作した電脳空間に送りました。思う存分暴れてもらいましょう。」
「なぁ、紗里弥…何で俺もここに居るんだ? 俺戦いたくないんだけど…」
虎太郎は、そう言って紗里弥に文句を言った。
「貴様は、中堅だ。貴様の実力ならば、中堅は適正だろうよ。」
「会長! 何で俺が次鋒…」
「黙れ、文句があるのならば、力で示すがよい。斉藤先輩。虎太郎は、優勝候補高校の副将と同じ能力、いやそれ以上の性能を持つ能力。もしかすると、貴様の能力も既に読み取られているやもしれぬぞ? エレメンタルマスター…」
「クッ…」
「去年は、中堅だったのにな。残念だな。一樹…お前の四元素を操る能力は、強いが…まぁ、虎太郎に負けたって事だ。」
剛司は、そう言って斉藤を宥める。
「まぁ、仕方ねえさ。会長がそう言うんならそうするしかないだろうよ。」
斉藤は、そう言って腕を組み、ため息をついた。
「気を落とすな。一樹…貴様は、奈々と過去の私の能力の両方を兼ね備えている様な能力を持っている。ただ虎太郎の方が能力の質が上だったって事だ。何もお前が弱いという訳ではない。寧ろ強い方だ。水を操れば、生物を操り、地を操れば、大地を操り、火を操れば、温度と天空を操り、風を操れば気体を操り、そして超強力なサイコキネシスを操る。これほど便利で、強力な能力があるか。」
「まぁな! 俺の能力はめちゃくちゃ強力だからな! まぁ、虎太郎がその能力も使えるってなら…まぁ、次鋒というのも頷けるな! 頑張れよ! 虎太郎! 俺の能力をうまく使いこなせよ!」
一樹は、虎太郎の肩を叩き、ハハハハハ! と笑う。
虎太郎は、一樹に肩を叩かれ苦笑いをする。
一方その頃、龍雅と正彦は…
「オラァ! ハァ! まだまだァ!」
「クソッ! なぜこんなに…」
龍雅は、電脳空間で、正彦と戦っている。
電脳空間でも、腕輪の効果は健在だ。
舞台は、何もないXVZ座標軸だけが存在する真っ白な無の空間。
この世界で、数時間戦闘をしており、最初は龍雅が圧倒的に不利だったが、徐々に龍雅が優勢になり、今では龍雅が正彦を圧倒している。
――便利なものだ。電脳世界でも腕輪の効果が継続するなんてな。
龍雅は、ブルーウィザード状態で敵の攻撃を躱しながら全能力を上昇させながら敵の能力の全能力を下げていく。
その能力差は、大きく龍雅の能力は、元の能力の10分の1を再現できている程に上昇し、正彦の能力は、人間のロクに鍛えていない高校生並みにまで能力値が落ちている。
傷を負ってもリジェネで回復していく。
再生速度が、異常に速い。
(どういう事だ? 最初は、攻撃が通用していたはずなのに、全く攻撃が効いちゃいねえ…本当に最弱なのか? それに何か徐々に攻撃が通じなくなっている様な気がする…俺の能力は防御力を無視する筈なのに…)
「貴方は、今、何故防御能力を無効化している筈なのに余り攻撃が効かないのか。それは、貴方の攻撃能力が弱体化しているからですよ。」
「何!?」
正彦は、動揺すると、龍雅は、攻撃を数十回一瞬で叩きこみ、吹き飛ばし、一瞬でレッドファイターに切り替え、軽い連続攻撃を何回も拳や蹴りを叩き込む。
全ての攻撃がクリティカルヒットで、九割軽減効果も無効化され、一撃一撃叩き込む程に攻撃の威力が増していく…いいや、元に戻っていく。
(あいつの強さの秘密はあれだ。あれをどうにかすれば、俺が勝てるはず…)
正彦は、間一髪龍雅の攻撃を回避し、そして龍雅の腕輪を取り外そうと、龍雅の腕を掴む。
(取った!)
正彦が腕輪に触れた瞬間、力が抜け落ち、倒れた。
(何!?)
正彦はまるで死にかけの小動物のように非力な状態で地面を這いつくばる。
正彦は、思った。
何故、力が抜けたのだ。
力が奪われたのか?
指先さえも動きはしない。
呼吸もままならない。
死を覚悟した。
脱力による死を覚悟した。
何故、死を覚悟する? この電脳世界では死を覚悟する必要もないのに、何故死の恐怖が体中に這う?
酸素の供給が足りない。
苦しい! 苦しい!
意識が遠ざかっていく。
ここで死ぬのか。
衰弱で死ぬのか。
駄目だ…ダメだ…だめだ…ここで死ねない!
――急いで回復しなければ!
龍雅は、ブルーウィザードになり、正彦を急いで回復した。
「あーあ触れてしまいましたね。」
龍雅は、内心ドキドキしながらも嘲笑うような顔をして冷静な態度をとった。
「何をした?」
「これはあらゆる能力を弱体化させる呪いの腕輪。これが俺がこのチームの中で最弱たる所以、今の貴方の力は、小動物にも勝てない程に弱体化している。」
「何だと…では、何故、龍雅はこうも平然としていられる?」
「元の俺が強いからですよ。」
――なるほど、極限にまで弱体化させてから腕輪に触れると、こうなるのか…覚えておこう。しかし、何故回復させようとした? この電脳世界での死は、現実世界の死ではない筈なのに…やはり痛みか…この世界に痛みがあるからか…それにリアルな流血もある。これが回復させなければならないと思わせているのか。
「元から強い…なるほど、あの最後の攻撃は…」
「元の俺に近い威力です。さて、帰りましょうか。っていうかどうやって帰るんだ?」
『どうやら終わったようですね。では、現実世界に戻します。』
二人の意識は、現実世界へと戻り、二人は現実世界で目を覚ます。
「宮弥、時間はどれくらいたった?」
「ほんの数分です。」
「数分!? 数時間戦ったのにか!?」
「えぇ、あの世界での一分は、一秒にも満たない。だからどんな長期戦だろうと、一瞬の出来事として片付ける事が出来る。ただ…飽くまでもその世界は、今さっき考えて作ったアルファ版だからログアウトボタンの色付けするのを忘れてしまって…何処にログアウトボタンがあるのかがわからない状態になっているんです。」
「何で完成した物でやらなかった?」
「…まぁ、あれです。取り出すのが面倒だったから」
「めんどくさがらずに取れよ…」
「後それにログインの手間がかかるし…」
「ログインの必要が無いバージョンを取りだしゃいいじゃねえか。」
「…うるさい。今度から現金性にしますよ?」
宮弥は、そう言って龍雅の後ろに瞬間移動し、龍雅の首を絞める。
「死ぬ…死ぬっての!」
龍雅は、宮弥の腕を叩くが、首が折れ、龍雅は死ぬ。
「あぁ、死んじまった…何やってんだよ。宮弥…」
龍雅は、すぐに復活し、宮弥にデコピンをすると、宮弥は、額を抑え痛がる振りをする。
「では、宮弥は、大将をやってくれ。」
「はい。わかりました。俺の出番が無い事を願っていますよ。俺が出れば、あらゆる勝負に絶対に勝つ事が出来ます。俺は雇い主に絶対に勝てと命じられているので、如何なる方法で、勝つ事が可能です。まぁ、俺の出番が回って来た時点で、貴方達という実力はその程度だという事だ。くれぐれも自分達の実力で頑張って下さいね。」
「何よ。その言い方は…生意気よ。」
「すみません。俺と比べて貴方達は非常に弱い。生まれたての小動物が最大級の自然災害に勝てるはずもりません。」
「自分を自然災害と捉え、我々を小動物と評するか…些か謙虚すぎはしないか? 宮弥よ。それを言うなら、微生物とクエーサーであろう?」
「それは大袈裟ですね。この方々も普通の能力者にして見れば、上級クラスの実力ですし…及第点として評価したまで。」
「なるほど、身内には評価は甘いな。」
「身内? あぁ、チームメンバーですか…まぁ、そうですね。俺ついつい身内には過剰評価してしまう癖がありますのでね。」
「ちょっと! 小動物って、あれ過剰評価だったの!?」
「そうらしいな。精々励めよ? 私達と彼女では、それ程の差があるという事だ。その差を埋めるには、途方もない鍛錬が必要になるが…宮弥を超えることなんて絶対にできないだろう。」
「わかりました。裏生徒会長…」
「では、チームメンバーを改めて発表する。まずは女子チーム、先鋒、奏梨奈、能力は、触れた物に災厄を与える能力と負った傷を倍返しにし、倍返しした分自分が回復する能力。新しく入ったメンバーだ。後、過去にあった事で、心を閉ざしている仲良くしてやってくれ。」
「あの…先輩方…よろしくお願いいたします。」
梨奈は、よそよそしく頭を下げ、挨拶をした。
「次鋒、石松友恵、能力は摩擦を操る能力。」
青髪の美少女は、軽く龍雅に頭を下げた。
「中堅、桃華奈々、能力は水と地を操る能力。」
「副将、この私…極星院紗里弥…能力は分子移動速度を操る能力と異能を無効化する能力。」
「主将、剣ヶ峰宮弥。能力は時空を支配する能力。新しく入ったメンバーだ。困ったことがあれば、こやつに頼むといい、だが、頼み事によっては料金が発生するので、気を付けろ。」
「食い物、飲み物は何でも提供しましょう。ただし酒は、絶対にダメです。この期間の間だけ、貴方達を守る剣となりましょう。ですが俺の兄に危害を加えるならば、この世から退場していただきます。」
宮弥は、そう言いながら恐怖心を煽る笑みを浮かべる。
((((怖い))))
「続けて男子チーム、先鋒、剣ヶ峰龍雅、能力はゲームにありがちなものを具現化させる能力とあらゆる方面に才能を発揮する能力。こやつも新しく入ったメンバーだ。今は、この中では一番弱いが、早く倒さなければ後々脅威になる長期戦型だ。そして今、正彦がこいつに敗北した。そしてこやつは、決勝戦の時、主将戦まで生きていたら、全ての破壊するような力を見せるだろう。」
「よしてくれよ。紗里弥…まぁ、俺は大会が始まったらケチになるから、一回の試合で5回死んだら降参するんでよろしく。」
龍雅は、そう言って軽くあいさつし、座る。
「次鋒、齋藤一樹、能力は四元素を操る能力。」
「中堅、盾ヶ原虎太郎、能力は能力を模倣する能力とあらゆる方面に才能を発揮する能力。こやつも新しく入ったメンバーだ。常に気怠げだが、やるときにはやる性格だ。私が半ば強制的に参加させた。こいつが何にも参加するつもりがなかったんでな。」
「まぁ、よろしくお願いいたしますよ。俺は、あんまり役に立たないと思うけど」
虎太郎は、頭をかきながらそう挨拶をした。
「副将、秋田正彦、能力はあらゆる防御能力を無効化する能力とあらゆる衝撃を九割軽減する能力。」
「主将、大和剛司、能力はエネルギーを操る能力と異能を無効化する能力。」
厳格な巌のような男剛司は、静かに頷いた。
「さて、次の本題に入ろう。今回は、私立第一能力者高校…つまり東京にある能力者高校への対策だ。」




