第捌拾捌話《殺戮の果てに/明かされる一つの情報》
「ゾンビの如き不死性に怯えるがいい!」
龍雅は駆けだす。
紗里弥は、龍雅に向かって無数の剣や槍を打ち出し、牽制し、そして一気に近づき、龍雅の胸に一撃を加え、龍雅を一度殺すと、別の場所で復活した。
――武器の生成は不可能、ポーチも封鎖されている。能力は通用しない。自己強化で地道にやっていくしかないか…
龍雅は、後ろに下がり、自身に強化をかけていく。
「無駄だ! ハァ!」
宮弥は、龍雅に向かって謎の波動を放つと、龍雅の強化は全て解除された。
――何!?
龍雅は、自身の強化が無効化された事に驚愕したが、龍雅は、そんな事には怯まない。
「オラァ!」
龍雅は、紗里弥に蹴りかかろうとすると、紗里弥は、その場から消えたかと思うと、体感一秒後、龍雅の体は自分の血に濡れ、無数の衝撃が襲い掛かり、死ぬ。
――一体何を…時間停止なら、俺にも視覚出来る。
「お前は、死んだ事さえ知覚できない。何故なら、精神を凍結する術にかかったからだ。視覚的には、止まった時間から攻撃されたように感じられるだろう。だが、お前は止まっている時間を知覚できる…その本質は時間を飛ばす力…」
「時間を飛ばす力だと…」
「そう、そしてこの空間に満ちた粒子は、このように時を飛ばすような事が可能になる。他にも重力を操ったり、物体を生成し、破壊する事も出来る…まぁ、出力は能力よりも弱いがな…」
紗里弥は、そう言って龍雅に向かって真っ黒な瘴気を放ち、龍雅は瘴気を手で切り裂くと、手は腐り落ち、そして毒が龍雅の体を回り始め、体が壊死していき、ボロボロに崩れていく。
「死毒の煉獄よりも強力な猛毒だ。お前が強力な毒耐性を持っていようが無駄だ。この毒は如何なる毒耐性を持っている生物だろうと殺す毒。人間が受ければ、光の如き速度で、即死毒が回り、死ぬ。」
「なるほど…だが、俺にはどうしようもない。」
龍雅は、状態回復を使い、そしてケアリングを使い、全回復した。
「なるほど、状態回復があったな。そしてケアリングもあった。ふむ、だがそれがいつまで続くかな?」
宮弥は、瘴気の纏った近未来の剣を二つ持ち、自身と剣に強化をかけ、目にも止まらぬ速度で、剣舞を舞い、龍雅を傷つけていく。
龍雅は、攻撃を防ぐ為、自身の腕を盾にする。
腕は、傷付いていき、そして毒が回り始めると、龍雅は、一旦後ろに下がり、右腕を切断し、右腕を再生した後、右腕で左腕を切り裂き、左腕を再生する。
――魔法少女異界と同じような物か…だが、種類に限りはない…あの世界は、貧弱な世界だったか…
「並行世界の事を考えていたな? あの世界の私は貧弱なものだ。」
「悪くないと思うぜ。あの世界のお前も…まぁ、今のお前は、あの世界のお前よりも遥かに宇宙と地核の差が開くほどに強すぎる。」
「天地の差をそう表現するとは…まぁ、間違ってはいないな…さて、それを知った所で何をする? お前には勝ち目はない。」
「だからこそ泥臭く意地張るんだぜ。」
「そうか…」
紗里弥は、時間を飛ばし、龍雅を殺す。
(まぁ、時間停止を知覚した所で、お前には手も足も出ないがな。)
龍雅は、また生き返る。
龍雅は、戦意を失わない。
紗里弥は、戦意を失わない龍雅を見て、ため息をつく。
「やれやれ…徹底的に殺さないと気が済まないらしい。」
紗里弥は、そう言って第二覚醒状態になり、異能を無効化する結界を張る。
「不死は無効化できないが、これでお前は不死身と時間停止そして時間逆行以外全てが無力化された。そして今の私は、さっきまでの数倍の力を持つ。更に…未来予知を発動…お前の復活場所を特定し、復活した途端殺す。」
紗里弥は、未来予知を発動し、一秒後龍雅を殺す。
「そこか!」
紗里弥は、龍雅が復活する場所に向かって炎を放ち、焼き殺す。
「徹底的に潰す…」
紗里弥は、それから数時間龍雅を殺し続ける。
「ハァ…ハァ…体力が切れてきた…そろそろ回復するか…」
紗里弥は、そう言って変身を解除した時…
――今だ!
龍雅は、紗里弥に攻撃を仕掛け、吹き飛ばす。
「既に戦意を失っていたと思っていたが間違っていたようだな。」
紗里弥は、頬から出た血を手で拭き、舐め取った。
「俺はこの時を待っていたのさ。ずっとな。待ちわびていたのだ。」
「だが、無意味に終わったな。」
紗里弥は、そう言って肉体と体力を全回復する。
「所で、龍雅…まだ諦めないのか?」
「あぁ、まだまだだ…俺は、相手が諦めるまで何年待ったと思っている…これくらいなんてことねえよ…」
「そうだったな。お前は死に続けて一万年以上…これ以上お前を殺しても無意味という事か…これ以上やっても無意味…私の残力が余るほど存在していても、精神力がもたないのでは話にならない。満足いく力は得られなかったが、ある程度の力は得た。いいだろう。負けを認めよう。そして情報を一つ渡そう。じゃあ行こうか…」
紗里弥は、そう言い、スマートフォンに入力し、謎の粒子MPの配給を止め、そして紗里弥は残されたMPを使い、極星院の何処かの部屋へと瞬間移動した。
「さて、何が知りたい?」
紗里弥と龍雅は、部屋の椅子に座り、紗里弥は、手を組み、両肘をテーブルの上に置いた。
「俺達の正体を教えろ。」
龍雅は、腕を組みそう質問する。
「それでいいのか?」
「あぁ、それでいい。」
龍雅がそう言うと、六枚の薄い板のホログラムを発生させ、ホログラムに様々な画像を投影させる。
ホログラムには、霊長類の系統樹、様々な神話の壁画や文献、何処かの写真数枚、龍雅が戦う姿、文章が映し出されていた。
「…私達の正体は、アームズ人…ホモサピエンス即ち人間の進化生物である力ある人、能力者の特異種…人々の驕りによって生まれた悪魔の化身にして審判の使徒…災厄の人、アームズ人…アームズ人の持つ紅き闘志は、あらゆる異能を無効化する力と戦闘能力を飛躍的に上昇させる能力を持つ。」
系統樹の画像は、変化し、能力者とアームズ人が追加された。
「そしてアームズ人として覚醒したアームズ人の戦闘力は、汎百の能力者を圧倒する。アームズ人とは能力者が人間だとするならば、アームズ人として覚醒したアームズ人は、能力者他ならない。アームズ人として自動的に覚醒するのは、通常18歳と言われている。始めからアームズ人として覚醒するように遺伝子を調節された人造人間や鍛えているアームズ人は例外だがな。鍛えぬいたアームズ人は、もう一度覚醒する。紅き闘志を纏い、そして一定範囲内のあらゆる異能を無効化する。勿論、アームズ人も能力者だ。念動力は使える。アームズ人は、特殊能力を持たない。だが、私達は能力を持っている。それは何故か、理由はただ一つ…私達は能力者とアームズ人の力を持った最強の人種にして生命体…半アームズ人だからだ。」
「半アームズ人…」
「そう、この星における最強生物…究極の人或いはサイキックアームズ或いは半アームズ人は、通常、二回生物として覚醒する。一回目は能力者としての覚醒、そしてもう一回はアームズ人としての覚醒。この成長の工程を経た半アームズ人は、通常のアームズ人を超える力を得る。」
系統樹は、更に変化し、半アームズ人も追加された。
「お前は、二つの成長の工程を終え、そして鍛え抜いた者のみ使える力も手にした。だが、アームズ人としての第二覚醒もお前にとっては必然、運命だ。鍛えてなくても自然と覚醒する。お前は、早めに覚醒した。第二覚醒もまた道筋通りの力…だとするならば、お前は本当に覚醒しきっているわけではない。」
「どういう事だ?」
「それは…自分自身の胸に聞け…お前なら既に知っているはずだ。世界そのものをそこにあるだけで滅ぼす力をな。」
「あるだけで滅ぼす…もしや…」
「そう異世界であったお前の力だ。あの力こそがお前の辿り着くべき力…その力には、我々にとっては重要な意味を持つのだが、それはまた後、来るべき時に説明する。」
「来るべき時…またそれか…」
「あぁ、本来ならば秘匿されるべき情報、異世界の情報を現世に流すのは良くない。故に、お前の体験した異世界の情報もこの世界に流してはいけない。逆に異世界もそうだ。私の知る異世界はこの世界の情報を知ってはいけない。さて、名前についてだが、本家と分家は、兵装に由来する苗字を持つようになっている。お前ならば剣ヶ峰…名の通り剣だ。盾ヶ原は、盾、槍ヶ岳は、槍そして大和は戦艦だ。大和家は、歴史の浅い血統だが、平均的に強いアームズ人が数多くいる。大和の名に相応しい…名に恥じぬ強さだ。例外的に極星院とあるが…私達は剣ヶ峰と繋がっているだけだ。まぁ、言える事は私達は世界で最も進化している生物と言え、そして能力者は、神話では様々な神として崇められ、そしてアームズ人は、破壊神や戦神として崇められていた。」
神話に関する文献や壁画が移っているホログラムに、様々な家の名が映し出される。
「神か…本物の神様はすぐそこにいるんだけどね。俺の妹なんだがね。」
「確かにお前の妹は神だな。神よりも神らしい。だが、人だ。さて、これでも進化できなかった…では何が足りなかったのだ。」
「追い詰められるとか? 或いは俺と同じくレベル1に戻るか…火山活動の制御をやめるか…」
「火山活動の制御か…いや、それはいけない。世界が滅びる。宮弥は、火山活動については何もしてくれないし…どれだけ金を積んでもな。」
「やはり火山活動だな。紗里弥、お前は既に能力が覚醒しているだが、火山活動がまだ止まないから一歩も進化しない。俺が頼もうか? 或いは俺が火山のマグマを全て消し去ろうか?」
「いいや、無理だ。宮弥は、火山活動を止めるくらいは簡単にできるだろう。だが、宮弥が言うに、火山活動を止めてしまえば、選別軍はここを狙ってはこないと、最終決戦の場所を既に決めていると」
「あの人工島か…」
「そうだ。あの人工島は、火山を噴火させるための島だ。そしてあの山から噴出される溶岩は、お前でも塞き止められないだろう。何故ならあの噴火をトリガーに地球に存在する死んだ火山は蘇り、火山へと変貌し、そして今生きている火山も含めて全ての火山が過去最大規模の噴火を起こすからだ。選別軍は、その火山活動でも生き残れるように考えている。故に、ここを狙ってくる。奴らのボスからの制御妨害もあるが、今の所は大丈夫だ。」
「妨害…災厄を操る能力者か…隕石を降らし、一度世界を滅ぼしかけたという…」
「そう、その能力者だ。奴は、私に対してちょくちょくと妨害を行ってくる。まぁ、痛くもかゆくもないがな。国外…遠距離からの妨害は、特に影響などない。だが、国内…近距離からやられるとな…」
「つまり奴は国外にいるって事だな。」
「あぁ、奴の居場所はもう捉えているが、奴らの警備も侮れない。いや、警備の範囲を超えた過剰戦力だ。まぁ、仕方ない。奴らも本気だ。」
「そうだな。さて、覚醒条件が分かった…けれど、体育大会では生かす事は出来ない。だからまだ使う事は出来ない。火山活動をどうにかしなければならない。」
「火山活動に関しては、私が力を付けて止めなければならない。宮弥もそれを望んでいるだろう。」
「お前は、宮弥の傀儡かよ…」
「断じて違う。私には私の意志がある。だから断じて奴の傀儡ではない。」
「その意志すらも作られたものだとするならば?」
「それはこの世界全体に言える事だ。この世界は彼女によって造られた世界…だから彼女以外の思考ルーチンは作られたもの…私達は、いわばAIのようなもの…創造主が作り上げ、私達が自主学習し、自我を持ち、成長していく…お前は作られたというよりはコピーされたと言った方が正しいな。これ以上の世界に関する話は、この世界の在り方を崩してしまう。」
「それもそうだな。この話をするのはあまりよくない。さて、俺はそろそろ帰るとしよう。」
「そうか…では、見送るとしよう。」
紗里弥は、ホログラムを消し、何処かの部屋を出て、龍雅と宮弥は極星院邸を出た。
外は既に暗くなっていた。
雨が降っている。
梅雨のイラつくようなむさ苦しい雨だ。
「では、また明日。」
「あぁ…」
龍雅は、そう言ってその場から消えた。




