第捌拾陸話《もう一人の親友の行方/圧し掛かるプレッシャー》
「竜輝だと? 生きていたのか!?」
龍雅は、竜輝が生きていたという事を知り、驚きはするもその反応はいまいち薄かった。
何故なら、もしかしたら竜輝が生きているかもしれないと前から思っていたからだ。
故に反応は薄かったのだ。
「うむ、あいつは生きていた。そしてあの白い少女こそが竜輝である。いや、それよりもお前のその反応から見るに前から感づいていたんだろう。竜輝が生きていることをな。」
「竜輝が生きているのは、わかった。だけど、何なんだ? あの姿は…あの可愛らしい少女の姿が竜輝…? どういう事だ?」
「ストレスか、紫外線を反射している事で、白くなったのだろう。そして中性的な体になったのは、原因不明だな。お前と同じ要因だろう。」
紗里弥は、そう言って龍雅の体をさり気なく触り、そして龍雅を椅子へと押し倒し、座らせ、紗里弥は、龍雅の膝の上に座る。
「なるほど…」
「奴の力はわからない…だが、あいつは何も触れる事もなくただ歩くだけで敵を倒したという記録が残されている。」
紗里弥は、そう言い、スマートフォンの電源をオンにし、そして片耳にイヤホンを付け音楽を聴き始める。
「念動力の可能性は?」
「ない。宮弥の報告によると時間停止は"今は、持ち合わせていない"そうだ。」
今は持ち合わせていないというまるで昔は持っていたように思わせる答えを紗里弥は、言う。
「ではなんなのだろうか…」
「確認された能力は、ベクトル操作、肉体強化、高速移動、パイロキネシス、エレクトロキネシス、サイコキネシス、テレポート、重力操作、予知能力、透視能力、千里眼、異能無効化、因果律操作などを持っている。ベクトル操作と異能無効化は厄介だ。応用性の非常に高い能力とあらゆる異能を打ち消す能力…非常に厄介だ。更に異能を使えなくするフィールドも張るらしい。」
「なるほど、所で"今は、持ち合わせていない"というのはどういう意味だ?」
「かつて奴は時間停止能力を使っていた形跡があったらしい。」
「では、今も時間停止を使えるはずなのでは?」
「そうだ。使える筈なのだ。だが、彼は使おうとしない。いや、そもそも彼は時間停止能力を持ってすらいない。さっき言ったベクトル操作と肉体強化、重力操作、サイコキネシス、パイロキネシス、エレクトロキネシス以外の能力は全て元から持っていない能力だ。そもそも彼が元から持っている六つの力は、元々一つの力なのではないかと考えている。」
「言っている意味がわかんねえ…」
龍雅は、そう言って頭を抱える。
「簡単に説明すると力を操る能力を持っているのではないかと推測している。」
「力を操る…つまりは力と名の付くものを操る概念能力か?」
「恐らくそうだろう。時間停止などの能力は、能力を一種の力と解釈する事で使用可能としているのだろう。」
「それはつまり知力を力と解釈すれば…」
「あぁ、それこそ全知全能になるだろうな。」
「勝てるのだろうか…」
「弱気だな。全知全能の持ち主である宮弥に勝った癖に…」
紗里弥は、そう言って龍雅が弱気な発言をしたことに嗤う。
「あれとこれとは訳が違う。あの時は、もう一人の俺の力を借りたからだ。」
「もう一人の龍雅…あぁ、異世界であった最強の存在か…宮弥の方が全能の出力が高い。そして非現実的な全能だ。だが、竜輝は、まだ現実的な全能と推測している。」
「非現実的な全能と現実的な全能?」
「そう、非現実的な全能とは、それこそ無数の世界を創造し、改変し、破壊し、支配するような神の如き全能…現実的な全能とは一つの世界を支配するような王の如き全能、人と神との違いと言った所だ。」
「神と人の違い?」
「そうだ。だが、それを語るのはまだ早い。」
「何故だ?」
「今のお前は、"この世界"の事を考えておけばいい。"もう一つの異世界"の事を考えるのはまだだ。いや、そうではない"私達の種族"の事を考えるのはまだだ。」
もう一つの異世界、私達の種族、これからの物語に重要なキーワードを紗里弥は、言う。
この二つのキーワードは、龍雅の人生、いやこの世界の運命を揺るがせるだろう。
「もう一つの異世界ってなんだよ。私達の種族って?」
「簡単に言うと異世界転移によくある都合の良く我々が活躍できる異世界の事だ。お前の行った"地獄"ではない。そして私達の種族についてはまだ語るべき時ではない。いずれ話す。今話せるのは、剣ヶ峰、槍ヶ岳、盾ヶ原、大和、極星院は、ある種族の血を継いでおるとまで言っておくか。」
「なるほどな。剛司も同族か…だからあの力を使えたという事か…」
「そういう事だ。」
紗里弥は、そう言い、立ち上がり、そして紗里弥は、自分の椅子に座る。
「では、次に藤川義輝について話そう…奴は高校ニ年、お前と同年齢だ。強さは今のお前では、強化せず勝負に挑めば、勝てないだろう。腕輪を外せば、お前にとっては、態度がデカいだけのただの雑魚に過ぎないがな。奴は、これまで負けたことの無い天才だ。いや、一回だけ引き分けた事がある。引き分けたとはいえ、奴は無敗だ。もう一度言う負けたことが一回としてない。」
「どんな能力だ?」
「能力は、そうだな。簡単に言えば虎太郎の劣化版だ。だが、戦闘経験や戦闘力は虎太郎とは比べようにならない。奴は、副大将の剛司と互角で戦い、同時に倒れ、引き分けに終わった。今の剛司は、義輝を遥かに上回る力を持っている。お前が負けても、剛司は義輝を余裕で倒すだろう。だが、お前が負ければ、剛司は、竜輝に負ける。竜輝を倒せるのは、お前しかいないのだ。故に、義輝を倒さねばならない。義輝は、龍雅、虎太郎には劣るが天才だ。姉上のような天才だ。そして龍雅や虎太郎以上に努力している努力家だ。決勝戦は激戦が予想されるだろう。」
紗里弥は、そう言って龍雅にプレッシャーをかける。
絶対に負けてはならないと、絶対に勝たねばならなければならないと
「プレッシャーがかかるな…まぁ、いい…勝てばいいそれだけだろ?」
「あぁ。」
「よし、家に帰ったらひたすら虎太郎との戦いを学び直すとしよう。攻略には、望み薄だけどな。」
「なるほど、同じ能力の持ち主、それも上位互換との戦闘を繰り返して学ぶわけだな。」
「そうだ。保有する能力は義輝とは違えど、戦法は似ているはずだ。というか、順番って入れ替えねえか? そっちの方が確実な勝利が…」
「駄目だ。もうチーム構成が決まってしまっている。変更は不可能だ。では、これで話は終えるとしよう…」
紗里弥は、そう言って音楽を聴くのをやめ、立ち上がり、背中を伸ばす。
「さて、話も終わったことだし、私と腕試ししないか?」
紗里弥は、そう言い、氷の剣を生成し、龍雅に氷の剣を向けると、龍雅も、絶対零度の剣を紗里弥に向ける。
「俺が負けるとわかっていてか?」
「いいや、そうではない。まだお前は私に勝てる。お前は私を鍛えて欲しい。真の能力が目覚めれば、私にとっての最高の力が手に入る。」
「最高の力か…優勝する為に必要なんだな?」
「あぁ。」
「まぁ、鍛えられるかどうかわからんが、やってみようか…」
二人は、氷の剣を消し、屋敷を出て、地下室へと向かって行く。
紗里弥は、地下室の扉を開け、そして二人は地下へと入り、奥へと進み、十分に戦闘が繰り広げられるほど大きく頑丈な地下室に入る。
「さて、始めよう。何、影衣は使わぬ。」
「何、影衣持っているのか?」
「あぁ、そうだ。そして取り込んでいる。また着る用もある。影衣は便利なものだ。兵器としての実用性が非常に高い。使いようによっては、剣や盾に変化させ、そして取り込んだ場合、生命力が不死の如く飛躍的に向上し、再生能力も異常な程に高まる…そして戦闘力が高くなるし、物理法則から大きく外れた行動も可能だ。さて、会話はお終いだ。始めるぞ。」
紗里弥は、そう言って指を鳴らし、地下室の半分を氷で包み、そしてもう半分を炎で包む。
「行くぞ。」
「あぁ。」




