第弐拾肆話《龍雅の夢よって齎されたモノ》
闇の力を行使する少女は、少年を見て、禁断の愛を向け、そして数多の運命を憎んだ。
闇の心に飲まれた少女は、少年を見て、他者を憎みながらその少年に狂愛を向けた。
闇に操られし少女は、二人とはまた別の少年を見て、憎みつつも狂愛と親愛を向けた。
美しき少年は、二人の少女の愛に喜びつつも怒り、もう一人の少年は、少女の愛を拒みつつも受け入れる。
これを見た黒幕は、美しき少年を憎みながら嗤う。
まさか、この三人の少女と二人の少年の物語が齎したモノが、後の戦いに大きく影響した事など闇の力を行使する少女以外は誰も知る由もなかっただろう。
少女が生霊に憑りつかれた事件から一ヶ月後、夜、血で汚れた人気のない大通りで、少し髪の長い美少年は、残酷な状況を見て、絶望した。
「フハッ…フハハハハ!! 何だこの状況は! 何だ! この惨状は!」
一人の美少年は、自らの体から流れ出る血で汚れた幼く可憐な黒い髪の美少女と赤髪の美少女を抱き抱え、天を仰ぎ見てながら、そう笑いながら泣いた。
「失った…失った! 失った!! なのに、巻き戻らない! 早く巻き戻れ! 時間よ、早く! 我が能力は、好きに時間を巻き戻せるのだろう!? 我が能力は、俺の仲間の死を目撃した時に巻き戻るのだろう!? 早く戻れ! セーブ地点へ!」
『いいえ、貴方の能力は、まだ発動しない…まだそのIFは、まだ終わってませんよ。ですが、このIFには、もう様はありません…貴方が幸せになれなかったのだから…またこの地点か…まぁ、いいでしょう…時間を遡れば、貴方は、この事を記憶しているのですから…また会いましょう…我が愛しき者よ。』
黒いローブの少女は、小さく呟き、空間を歪め、何処かへと去っていった。
「あぁ、やっとか…俺がこの世界から消えるのは…」
少年の体が少しずつ光子を発しながら消えていくのが、目に見えている。
少年の肉体が光になると、通常は、膨大な熱量を持った大爆発を起こしながら消滅するだろう…しかし、何故かこの少年から出る光子は、その現象を起こさずに光は、ただ天に昇っていく
そして少年の体が完全に消え去ろうとすると、少年は目を閉じ、世界から消え去っていった。
『このIFにはもう興味は無くしましたが、まぁ、いいでしょう…ご覧になっている異能の少なき平行世界のお客様…そう、そこの貴方です。貴方は、この惨劇を目にしましたね? よろしい…では、何故このような事になったか…この世界の時間流を弄って見てましょう…では、この惨劇に至るまでの過程をお楽しみください。』
黒いローブの少女の声が聞こえると、時間は巻き戻り始め、幼き少女が何かと戦う光景、そして幼き少女と楽しそうに話す美しき少年
時間逆行の速度はやがて緩やかな速度になっていき、美しき少年の部屋へと視点が移り変わる。
「さて、ピックアップ引くとするか…」
美しき少年は、スマートフォン用のコントローラー型をスマートフォンの画面に触れ、10連を選択する。
――gj8hb876t7V部B7hy7H7hfq8t8xz
美しき少年の頭の中、適当に羅列した意味のない言葉が並ぶ。
しかし、彼にとってはこの意味のない言葉は、世界を操るのに、必要な言語である。
「しゃァ!! 星6キャラ4体GET!」
少年は、天に拳を掲げ、歓喜の声を叫んだ。
彼の名は、剣ヶ峰龍雅
太陽ように美しい黄金の髪と宇宙の闇よりも深い漆黒の髪の現実離れした美貌を持つ見方によれば美少女にも見える中性的な高身長の美少年だ。
髪型は、一ヵ月前よりも伸びており、性別詐欺と言われてもおかしくない容姿だ。
龍雅は、人気スマホゲームであるレジェンド&フェアリーズで、伝説・神話・御伽噺のモンスター、人物が出てくるスマホゲームである。
このゲームをプレイする方法は、二種類に別れ、一つ目は、スマートフォンなどの端末によってプレイする方法、二つ目は、パソコンを使ってプレイ
多くは、パソコンによるプレイが主流だが、龍雅のようなスマートフォン型のコントローラーを持っている人達は、スマートフォンを使って遊んでいる。
アニメやゲームなどを好む人向けに作られており、アニメには関わりのない人達には、余り認知されていない。
――ふむ、育成は後にするとしよう…今から沙里弥と待ち合わせしていた場所に行かねばな…生まれて初めてのデートだ…しっかりやらねばな…
龍雅は、一瞬にして黒の中性的な流行の服装に着替え、余計に性別の判別を難しくした。
――アイテムボックス…大小問わず無限に物を収納出来、更に装備出来る物は、一瞬にして装備出来、更に収納した物を一瞬で取り出せることが出来る昨日取得した能力…何処に繋がっているのか分からないが、いいものだ。
「さて、行くか…ステルスフォーム」
龍雅は、気配を遮断した後、靴を装備し、ベランダに出て、空を飛び、街の方へと飛んで行った。
――今日の天気は、晴れ模様…どうやら今日のデートは、上手く行きそうだな…
龍雅は、空を見てそう思い、急降下し、待ち合わせ場所に降り、ステルスフォームを解く。
「ふむ、ここら辺だったな…」
龍雅は、待ち合わせ場所に着くと、虚空からスマートフォンを取り出した。
――待ち合わせ時間まで後、1分か…いいや、紗里弥の気配がこちらに近づいて来るな…
「よっ、龍雅!」
幼く可憐な声が、龍雅の耳に入る。
「紗里弥か…一分早く来たようだな。」
「そう言うお前こそ、二分前に来たんだろう?」
「いいや、お前が来るちょうど十五秒前くらいだ。」
「なるほどな…」
可憐な声の持ち主は、小学生か、中学生に見え、赤い瞳と真っ黒な髪を持つ美少女極星院紗里弥だ。
今日の髪型は、M字バングのロングヘアーだ。
服装は、今の女子中学生に似合いそうな流行の服装だ。
「良い髪型だな…」
「髪をセットしただけなんだが…まぁ、褒められるのは良い。所で、何処行こうか?」
「そうだな…お前が行きたい場所からだな…俺は、その後で言う。」
「そうか、ならば…スカイツリーにでも行こうかな? 行く暇なかったからな」
「なるほど、了解…では、背中に乗るがいい…お前の体に別条がない程度のGは、かかるがいいよな?」
「あぁ、問題ない…私には、別条がないという事は、人間がこの高速飛行を体験すれば…」
「失神するか、命に影響を及ぼすだろうな…」
「なるほど、危険だな…まぁいい…それで早く行けるのなら手段は選ばん…」
紗里弥は、そう言い、龍雅の背中に乗った。
「では、行くぞ。ステルス&レースフォーム」
龍雅は、再び気配を遮断し、龍雅と紗里弥の気配を消し、更に加速状態を付加し、スカイツリーの方向へ、超高速で飛ぶ
「速い! これは、いい!! 凄いな! 龍雅!」
「ハハハ!!…まぁ、毎朝毎晩鍛えているからな!! 速度が上がるのも当然だ!!」
二人は、風の音で、声が遮られないように大きな声で喋る。
「おっと、スカイツリーだ。」
龍雅は、そう言い、押上駅に着地し、速度向上状態と気配遮断状態を解除し、紗里弥は、龍雅の背中から降りた。
東京スカイツリー…634mの世界最高クラスの高さを誇る建造物だ。
旧名は、新東京タワーで、アナログ放送に、終止符を打ち、デジタル放送の展開を急加速させたデジタル放送の要とも言える電波塔。
十年前から人気のスポットで、観光名所として世界中に知れ渡っている。
二年前のニューヨーク占拠事件によって引き起こされた全世界同時隕石衝突事件の被害に遭っており、一年前に修復されたばかりだ。
「じゃあ、紗里弥行こうか」
「あぁ、今日は、楽しむとしよう」
二人は、笑顔を浮かべながらスカイツリーの方へと向かって行った。
それから二人は、カラオケやゲームセンター、遊園地、そして観光名所、映画館を回り、楽しみ、そして二人の仲が深まった。
そして夜…
「じゃあまた、明日学校で、今日は楽しかったぜ。」
「あぁ、明日がまた休日だったら、お前の家に泊まりたいというのに…」
「ハハハハハ…俺の方は、いきなりは無理だぜ。」
「そうか、じゃあいつかお前んちに泊まる。じゃあな、龍雅!」
「あぁ、帰りは気付けろよ。お前も女の子なんだし、無駄に強い能力者でも現れたりしたら…」
「いいんだよ。私は、お前以外の奴にやられる程、軟な奴じゃないんでな…爆破してやる。だから、心配はいらない…」
紗里弥は、そう言い、交差点を曲がり、人気のない大通りへと向かい、帰って行った
――大丈夫かな…数分間か待って後を付けてみるか…
龍雅は、腕時計を見てながら、数分間待ち、人気のない大通りへと向かっていき、目に入ったのは、血で汚れた紗理弥と奈菜の死体であった。
「嘘…だろ…何でこうなった…」
龍雅は、二人の死体を抱き抱え、涙を流し、笑い始めた。
「フハッ…フハハハハ!! 何だこの状況は! 何だ! この惨状は!」
龍雅は、自らの体から流れ出る血で汚れた紗里弥と奈菜を抱き抱え、天を仰ぎ見てながら、そう笑いながら泣いた。
「失った…失った! 失った!! なのに、巻き戻らない! 早く巻き戻れ! 時間よ、早く! 我が能力は、好きに時間を巻き戻せるのだろう!? 我が能力は、俺の仲間の死を目撃した時に巻き戻るのだろう!? 早く戻れ! セーブ地点へ!」
『いいえ、貴方の能力は、まだ発動しない…まだそのIFは、まだ終わってませんよ。ですが、このIFには、もう様はありません…貴方が幸せになれなかったのだから…またこの地点か…まぁ、いいでしょう…時間を遡れば、貴方は、この事を記憶しているのですから…また会いましょう…我が愛しき者よ。』
黒いローブの少女は、小さく呟き、空間を歪め、何処かへと去っていった。
「あぁ、やっとか…俺がこの世界から消えるのは…」
龍雅の体が少しずつ光球に変換され、光球は、天に昇っていく
少年の体が完全に消え去ろうとすると、少年は目を閉じ、世界から消え去っていった。
『時間を遡れ遡れ遡れ…くるくる回り繰り返す輪廻のような毎日を…二つの輪廻を越えた先に、私と未知の敵は待つ…貴方は、その輪廻と私を越えねばならない…二つ目の輪廻を越えた先で待っていますよ…魔王よ…』




