第玖拾斜話《サッカー部とのPK戦/練習試合》
「さぁ、来い…PK戦の始まりだ。」
龍雅は、腕輪のダイヤルを回し、ブルーウィザードになり、一瞬にして超強力な強化を自分に掛ける。
「行くぞ!」
龍雅は、能力を纏った超高速シュートをやはり手ではなく足で受け止めながらその勢いで蹴り上げ、ボールは天に向かい、昇っていき、そして流星の如く超高速でボールが落ちていき、向こう側のゴールに入る。
向こうのゴールとの距離は約10kmだ。
このサッカーグラウンドは、通常の100倍の広さを持つ。
「おっと、うっかり逆に俺がゴールを入れちまった。今度からは気を付ける。」
龍雅は、それから全ての選手の全力シュートを片手で止めていった。
「なるほど…その力は、あいつの強化を受けた力か?」
「いや、そうじゃない…俺は何も手を加えてなどいない。」
「そうか…なら、俺も強化を解いてやるべきだったな。まぁ、その場合、俺が死ぬんだけどな。」
「あぁ、そうか…現在の素の龍雅は、能力者ではない高校生並みの力だったんだな。それにしてもそれほどの強化能力を使用していたら疲れるだろう。」
「まぁな…戦った後は、滅茶苦茶腹が減る。カロリー採らねば餓死しちまうが、俺は死んでも平気だ。何せ、不死身だからな。さて、この話はまた後だ。」
「そうだな。一旦休憩だ!」
岩夫がそう言うと、サッカー部全員が「はい!」と言い、休憩所へと向かって行った
「これなら話せるだろう? なぁ、聞きたいんだけどお前って何回死んだ事あるの?」
「いきなり不気味な事を聞くな…そうだな。一万から数えてないな。どうせなら一回殺してみるかい? いい経験になるかもよ? 今の俺を殺す事など普通の高校生よりも強い奴なら殺せるはずだ。」
「殺さねえよ…そもそも殺せるかわからねえ…俺が殺人鬼と想定しても殺せるイメージが浮かばない。」
「そうか…まぁ、それでいい…殺しに手を染める必要などはない。と言っても俺は殺されるの嫌だしな。何か負けた気がするし」
「普通は、死んだら終わりだろうが、お前の場合、普通の常識は通じなさそうだ…さて、この後は練習試合でもやるか…」
「なるほど…俺を試合に組み込む為に慣らしておくという事か…まぁいいだろう。俺を組み込んだチームは必ず勝つという事を証明してやる。」
「強気だな。」
「それが俺だ。さて、いつやる?」
「練習を終えた後の最後だ。龍雅は、その間どうする? 鍛えた方がいいと思うが…」
「そうだな。俺は、これで練習してくる。」
「それは…最新のVR機器か…だがそれだと肉体が成長しないんじゃ…」
「確かにそうだ。だが、それは俺なりの肉体の鍛え方がある。それにあんた達には言い訳にしか聞こえねえが、俺はこの制御装置によって成長が止められている。だから技術の向上しかできない。制御さえなければ、俺はこの機器でも成長できたのだ。時間が来たら俺は現実世界に戻ってくる。だが、今はまだ休憩中だ。」
「おい、龍雅…私は、先に闘技場に行っているぞ。試合が終わったら来るんだな。」
「闘技場?」
「そうだ。伝え忘れたが、闘技場で練習試合をし、その後格闘大会の最終確認を行う。集合時間はちょうど練習試合が終わった後だな。」
「了解した。海遊びは夜だな」
龍雅は、そう言って
「二人っきりでな。」
「もしかしたら奈々と宮弥と梨奈が…」
「まぁ、それはそれでいい。」
「だな。」
「では、またな。私は、準備する故な…場所は島の中心部だ。」
「わかった。」
紗里弥は、そう言ってその場から立ち去っていった。
「紗里弥様も相当な強さを持っているな。」
「そうだな。強い部類だ。とてつもなくな。日本の天気を自由自在に改変できる程な」
「広範囲で天気を改変…なるほどそれは強い…天気の操作は、非常に難易度が高い。誰にでもできる訳じゃねえ…」
「そうだろう。」
――まぁ、俺も天候を操作できる力を持っているわけだがな。まぁ、力のベクトルは違うがな…
龍雅は、そう思い、心の中で笑った。
「龍雅、そろそろ休憩時間も終わりだ。さぁ、行ってこい。」
「あぁ、では…失礼する。」
龍雅は、そう言って休憩所に向かい、VR機器を装着し、電源をオンにして、現実世界から意識を手放し、電脳世界へと入っていった。
「さて、練習を始めるか…」
龍雅は、メニューからサッカーを選択し、そして敵のレベルを世界クラスに設定し、シチュエーションを1VS21を設定し、模擬試合を開始した。
洗脳能力を想定した試合だ。この状況は絶望的…点数は0-20、後半戦からのスタート。
重力設定は、地球の10倍、NPCは重力の影響を受けない。
あちら側のフィールドに敵味方のDFが固まり、こちら側のフィールフォに敵味方のFW及びMFが固まっている。
一人一人が各国のトッププレイヤー並みの力を持っており、そして全員の戦闘力が改造兵並みの力だ。
はっきり言って勝てる状況ではない。
だが、龍雅はこの状況を楽しむつもりだ。
この状況こそ悦。
多数を相手に無双する。
龍雅の悦楽。
スーパーコンピューターにしかネットの繋がらない電脳世界だからこそ龍雅は容赦なく力を振るえるものだ。
地獄の後半戦が開始する笛が鳴る。
龍雅は、ゴールキーパー。
敵からの猛攻を耐え忍び、遠距離からボールをシュートしなければならない。
だが、龍雅なら可能だ。
ブルーウィザードで体を強化し、その後、レッドファイターで重い体を感覚的に軽くする。
「さぁ、来い…」
NPCのゴールキーパーは、龍雅に向かって殺意ある能力を纏った超音速シュートを放ち、続けざまにこのフィールドにいる20人の選手がボールに向かって必殺シュートを放っていく。
シュートの威力が増強していく。
最後の一人が増強した時、威力は核兵器数百発並みの威力と化した。
至近距離で放たれる最強シュート。
龍雅は、そのシュートを視認すると、足にエネルギーを溜め、オーバーヘッドでシュートを相殺した後、回転蹴りで、相手のゴールに向かってシュートを放った。
龍雅が放ったシュートは、敵味方関係なしに全てを薙ぎ払って行く。
そもそも味方は敵に操られているので関係のない。
龍雅にとってはどうでもいいのだ。
龍雅の放ったシュートは、敵味方止めていくが、吹き飛ばされ、ゴールキーパーもシュートに対して防御策を立てるが、防御策は破られ、吹き飛ばされ、ボールはゴールに吸い込まれる。
――後20点…
龍雅は、それからもゴールを守りながら点数を取り続け、とうとう同点に追いついた。
「まだまだかかってこいや…」
――と言ってもアームズ人のデータがサッカーにないからな…仕方がない…アームズ人は、十中八九武道家や兵士を目指すらしいしな。スポーツ選手はもっぱら能力者のみだ。アームズ人は稀にしか見かけないらしい
。
龍雅がそう言って挑発した途端、試合が終了した。
「結局引き分けか…まぁ、いい…どうせ勝つつもりは無かったんだしな…さて、現実世界に戻るか…」
龍雅は、冷めた表情で現実世界に戻っていった。
「おっ、目が覚めたか…少しは鍛えられたか?」
「あぁ、危機的状況からの同点…引き分けだ。」
「そうか…そろそろ練習試合が始まるから行くぞ。」
「あぁ…」
龍雅は、VR機器を仕舞い、サッカーフィールドに向かって行った。
「さて…俺はどちらのチームにつけばいい?」
「キャプテン同士ジャンケンで決めよう。ちなみに龍雅が入ったチームはハンデとして選手交代は不可能となる。」
「わかった。龍雅という存在そのものが超強力なカードだからな。まぁ、仕方がない。僕のチームに入れさせてもらう。」
「いいや、俺のチームだ。まぁ、何とでも言ってもジャンケンで勝負がつくけどな。」
「まぁ、そうだな。」
「じゃあ始めるぞ…」
二人はジャンケンを始めた。
二人によるジャンケンは30分ぐらい続いた。
どうやら二人は、未来を見る能力か、心を読む能力でも持っているのだろう。
「ハァ…ハァ…どうやら譲らないらしいな…」
「そちらこそ…ハァ…ハァ…」
「そこまでだ。こうなったら龍雅に決めてもらおう…龍雅どちらがいい? 青チームか、赤チームか」
「では…決めさせてもらう」
龍雅は、そう言ってコインを取り出し、コインを弾き、そしてコインを取る。
「黒…つまり青だな。」
「よっしゃァ! 行こうぜ! 龍雅!」
「おう!」
龍雅は、青チームのゴールキーパーになった。
龍雅が、チームに加わったハンデとして、青チームは選手交代不可能となった。
「僕は、藤山未来だ。よろしくな。龍雅!」
「あぁ!」
未来は、中性的な声と中性的な見た目だ。
――なるほど…そう言う事か…面白い…
龍雅は、心の中でニヤついた
試合開始のホイッスルがなる。
龍雅は、まずサッカーフィールドの様子を観察し始める。
龍雅がいるせいか、今の所は、士気がこちらの方が高い。
――さて、俺はこいつらを強化するとしようか…俺だけが活躍してもしょうがない
龍雅は、ブルーウィザードになり、指を鳴らすと、チーム全体の戦闘能力が上昇した。
「おぉ…この力は…」
「すげぇ…力が湧いてくる…」
「この力なら勝てる…」
チーム全員の力が溢れ、
――岩夫…
(何だ?)
――赤チームを補助してもいいぞ。でなきゃ、フェアではない。俺は高エネルギー同士の衝突が見たい…どちらの強化が上か比べ合おうじゃないか
(いいだろう。後悔するなよ。)
岩夫は、赤チームに向かって戦闘能力を強化を行うと、赤チームの士気が上がった。
――戦闘能力がアームズ人並みになったか…ならば…俺も負けられぬ…
龍雅は、その更に上を目指し強化した。
(なるほど…そう来たか…だが、侮るなよ…)
岩夫は、更に能力の出力を上げた。
赤チームと青チームの戦闘力は並び立つ。
超高エネルギーの激突は、大気を揺らし、壊す。
青チームの守護神、龍雅は如何なるシュートをも止める。
赤チームのGKは、戦闘力こそ上がっているが、全員が全員戦闘力が上がっている為、強化された守りは、無意味になっている。
青チームが点を獲得していく。
青チームが体力を摩耗すると、龍雅が全員に回復技をかけ、体を治癒させる。
赤チームも同じくチームメンバーの体力が摩耗すると。岩夫が回復能力を使い、体を治癒させる。
「今度こそ入れて見せる!」
赤チームのリーダーは、炎と氷の力を纏ったシュートを放つ
――そろそろ俺もやりますかねえ…
龍雅は、そう言うと、龍雅は、踵に力を溜め、そして跳躍し、向かってくるシュートを踵落としで落とし、その後に、ボールを掴み取り、そしてレッドファイターになった。
――さて、始めるか…
龍雅は、ボールをフィールドの中心に超高速で投げ、そしてスローイングで投げたボールを追いかけてボールを確保し、フィールドを駆ける。
「速い…捉えられない…」
あっと言う間にゴールの近くまで接近し、そして威圧で敵DFを吹き飛ばした。
――さて、止めて見せろ…近距離の俺のシュートを…
龍雅は、足にエネルギーを溜め、シュートを放とうとする。
赤チームのゴールキーパーはこう思っただろう。
死ぬと
そこに死があったと
覚悟した。
死ぬ覚悟をした。
絶望、終焉、恐怖。
圧倒的な恐怖。
シュートが放たれるまでの間、ゴールキーパーの体感する一秒が一時間のように感じた。
龍雅のシュートが放たれた。
絶対的な一撃が放たれた。
「うわああああ!!」
ゴールキーパーは、全力で防御壁を張る。
ゴールを守る為ではなく自分の身を守る為に防御壁を張る。
防御壁を張らねば死ぬ。
――臆したか…
龍雅は、エネルギーを収束し、そしてボールの軌道をずらし、防御壁をいともたやすく突き破り、そして龍雅のシュートは、ゴールのネットを突き破った。
「そこまでだ。」
岩夫は、そう言って試合を終了させた。
「なぁ、龍雅…お前の強化の強さはどれくらいなんだ? 俺が強化した選手のシュートを軽々しく止めたりしていたけれど…」
「他人よりも自分に掛けた方が十倍効果あるようになっているし、負担も十分の一に抑えられている。だから俺は、戦闘力が足りなくても強化で補える。実質的に通常の100倍の効力を発揮していると言ってもいい。そしてブルーウィザードになる事で、実質的に効力が2500倍になる…まぁ、これでも本来の力には及ばないのだがな。」
「なるほどな…どれだけ強いんだ。本来のお前…」
「世界一とは言わないが、かなり強い。お前らの技術も一応日本の学生ではトップレベルはいっているじゃないか? 始めたばかりの俺が言える立場じゃねえけどさ。」
「そうか…」
「じゃあ俺は行くわ。邪魔したな…まぁ、明日会おうや…俺は、闘技場に行ってくる。」
「あぁ、会議の事は後で伝える。」
「なら、メアド教えてやる。」
龍雅は、そう言って一枚のメモを渡して立ち去っていった。
メモには、メールアドレスが書かれてあった。
「嵐のような男だったな。」
「そうだな。死を覚悟した。あれは暴力そのものだ…ボールが殺戮兵器と化している。生物の域を超えた自然災害そのものだ。」
「自然災害か…まぁ、そうだろうな。」
「さて、会議を始めるとしよう」
「そうだな。全員集合!」
岩夫は、全員に点呼をかけた。
龍雅は、島の中央にある闘技場に向かっていた。
闘技場は、能力者が戦闘の為に鍛える施設、修行場の中心にある施設で、東京ドーム十個分の大きさを持つ。
修行場では、様々な肉体強化を行える場所で、学校内では戦闘力を上げるのに最も効率の良い場所である。
龍雅の場合、龍雅のみ肉体に反映するVRトレーニングや、異世界での修業がある為、使う必要はないだろう。
龍雅は、修行場から飛んでくる流れ弾を軽々と避けながら闘技場に向かって行く。
闘技場に着くと、龍雅は扉を開け、闘技場の中に入る。
闘技場の中は、衝撃音が鳴り響いている。
戦いが繰り広げられているのだろう。
龍雅は、闘技場の戦いが行われている場所、闘技場のフィールドには、紗里弥と剛司が戦っていた。
「中々やるな…剛司…」
「そちらこそやる…」
「さて、私も第二覚醒状態になるか」
「ならば、俺もなろう。」
二人は、アームズ人の力を発揮し、ぶつかり合う。
力は剛司が勝っているが、技は紗里弥が勝っている。
宮弥は、二人の戦いを見守っており、いつでも止められる体勢でいる。
「行くぞ! 剛司ィ!」
「来い! 紗里弥ァ!」
二人は、己が持つ最強最大の技をぶつけようとしている。
この闘技場が吹き飛ぶようなエネルギーだ。
「「オラァァァァァ!!」」
二人の最大級の攻撃がぶつかり合う。
その時、宮弥が二つの技がぶつかる中心点に立ち、二つの攻撃に触れると、攻撃は消え去った。
「熱くなりすぎですよ。二人とも…」
「「すまん」」
二人は、宮弥に謝った。
「すげぇぶつかり合いだったな。」
龍雅は、そう言って梨奈の後ろから現れた。
「先輩!? いつからそこに!?」
「少し前から」
「ふむ、揃ったようだな。では始めるとしようか…練習試合を」




