第五十七話
海の底から天へ一筋の光が貫いた。そしてその光を中心に海が割れた。そこからでてきたのは涼音のはずなのだが背中から四本の鎧に包まれた腕が生えていた。
「あー死ぬかと思った。」
「え、涼音、大丈夫なの?てかその姿何?!」
「やっと私も実体化できたー!これは私の神の姿。神様なのは希莉だけじゃないって言ってたでしょ?」
「確かに言ってた気がするけど…手生えてるし……」
「私の元々の名前はカーリー、この手はそのせいだよ。」
「なるほど、やっぱり聖域に住む支配者クラスの神には二対一じゃなきゃ確実に負けそうだ……」
「その前に勾玉使ったんでしょ?」
「いや、あの時は必死だったから特に考えてなかった。」
「もー、所々抜けてるところあるよね。」
「そんなことはいいからとりあえずゼウスなんとかしようよ」
「わかった、私が上から攻撃するから紫苑は下から攻撃して」
「わかった、でも下からだと攻撃届かないよ?」
「あ、これ使って」
そう言って渡されたのは[アルテミスの弓]。なるほど、撃ち落とすのか。
下からは無数の矢、上からは隙のない斬撃、普通の霊やそこらの神なら瞬殺だった。しかし相手はゼウス。防御に専念しているため稲妻の攻撃はないが防御が固すぎる。
やっぱりあれ使うしかないか…僕は弓を放り投げた。
「涼音、[神槍 ゲイボルグ]を」
そう言って弓から槍に変えてもらう。
一点集中。海の足場を思いっきり蹴ってゼウスに突っ込む。涼音の攻撃に防御を回していたゼウスがこちらが突っ込んでくることに反応した時にはすでに遅かった。音速を越えた槍はゼウスの防御を貫通し体に風穴を開けた。
しかしゼウスの体は一瞬で元通り。チートだろ…
「ふむ、ここまでやった奴は初めてだ。よかろう先に行くがいい。」
「ありがとうございます。あ、ひとつお願いがあるんですが。」
「ん?なんだ?」
「東の国と西の国を合わせて連合国家にするんですがその守護って頼めませんか?」
「ふむ、我にここまでダメージを与えた貴様の頼みならよかろう。」
「ありがとうございます。ではまた後で会いましょう。」
そう言って僕らはまた西の国へ向かった。




