第三十四話
「おはよー」
6人の中で一番遅く起きた僕は目をこすりながら食卓についた。宿の人がご飯を作ってくれると言っていたが律花と音羽の希望で自炊することになっていた。
「おはようございます。ご飯できてますよ。」
そう言って律花が朝食を運んできてくれた。メニューはご飯、味噌汁、魚の塩焼き。久々の和食だった。
「これは…うまい!!!」
あっという間に完食してしまった。
「ごちそうさま。今日は何しようか。そろそろこの世界で暮らすために仕事も見つけたいけど、黄泉にも行かないといけないよな…」
「じゃあ、日雇いのバイトを一日やってから明日黄泉に行きませんか?戦闘だらけの毎日でしたから気分転換にもなると思いますよ!」
「なるほど!戦わないのはいいけど働くから気分転換にはならないと思うけどーそれもありかな」
ということでアルバイトを探すことにした。
街の広場にある求人ポスターの掲示板の前で僕は仕事を探していた。引っ越しの手伝い、狩りの手伝い、建築の手伝い、肉体労働がほとんどだった。
「この狩りの手伝いとかよくないか?」
希莉がすすめてきた。
「まぁ、獲物によって報酬は変わるらしいけどこれが一番僕らに合ってるか。よし、これにしよう。」
仕事が決まったので一度宿に戻り神器と日本刀を留守番する音羽と律花と紫紅に預ける。
「さてと、とりあえずバイトするためにポスターに書いてあった場所に行きますか。」
「地図は覚えたから私に任せなさい!」
「今日の涼音なんかノリノリだな」
「まぁ、いいことなんじゃね?」
「そう言う希莉は面倒くさそうだね」
「だって仕事だろー?」
「今回は涼音の力をメインで使うと思うから希莉は予備だよ!」
「予備ってなんだよ!予備って!!」
「まぁまぁそんなに怒らないの、ほら行くぞ。」
涼音の道案内で書かれていた山小屋まで来た。辺りを見回すと木々に囲まれ近くに小川があるのだろう水の流れる音がした。
煉瓦や石で作られた家が建ち並ぶ街とは違い木で出来た小屋が山の中にぽつんと建っているだけだった。
「すみませーん。求人のポスターを見て来た者ですが一日雇っていただけませんか?」
そう言いながら小屋に入ると中年ぐらいの男性が一人小屋の中にいた。
「おお、こんな山奥までわざわざ来てくれるなんてありがとう。報酬は捕れた獲物次第だけど一日よろしく頼むよ。」
「紫苑と申します。よろしくお願いします。」
「さて、猟銃の使い方だけどー」
「あ、僕は弓のほうが得意なのでこっちでもいいですか?」
「おぉ、珍しい弓だね。獲物を捕れればなんでもいいぞー。」
「ありがとうございます。」
「それじゃあ今から5時間後にこの小屋に集合ということでそれまで個人行動ね!」
「とりあえず獲物を捕ればなんでもアリなんですか?」
「まぁ、そーゆーことだねー。それじゃあスタート!」
「マジかよ…もうあの人見えなくなったし…」
「それじゃあ私達も行きますか。」
相変わらずノリノリな涼音に引っ張られて僕らはまだ未知の山に姿を消していった。




