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あふれだす色

 虹色に輝く森。色とりどりの動物たち。植物もとてもきれいな色に咲き乱れていました。祈りの塔の、カラスの記憶の中にあった景色と同じ風景が、目の前に広がっていました。


「きれい」


 女の子は思わずつぶやきました。


「色が戻ったのですよ」


 母神様がにっこり笑って言いました。動物たちも植物たちもとても喜んでいるように見えました。子ども神はギュッとにぎりしめていた手をほどき玉虫色の石を見つめました。色は戻ったけれど、みんな喜んでいるけれど、子ども神は心の底から喜ぶ事は出来ませんでした。


「二人とも、良く頑張ってくれました。おかげでこの世界に色が戻って来ました。どうもありがとう」


 ありがとうと父神様と母神様にお礼を言われました。


「でも、カラスが……。ぼくはカラスをぎせいにしてまで色を取り戻したくはありませんでした。……心から喜ぶ事は出来ません」


 それを聞いて女の子はまた顔を曇らせました。父神様と母神様も困った顔をしました。その時でした。空からバサバサと羽根の羽ばたく音が聞こえました。みんなが空を見上げると、虹色をした鳥が宮殿の上空をせんかいしていました。そして急降下きゅうこうかして神様の側に降りて来ました。


「……オレのせいで大変な事になって、……ご免なさい」


 虹色の鳥はそう言いました。よく見ると、あのカラスでした。


「カラスさん。生きてたの? 良かった~」


「オレのために一生懸命いっしょうけんめいお願いしてくれて、ありがとう。」


「カラス? 本当に? 虹色になったんだね。色をもらえて良かったね」


 そう言われカラスは嬉しそうに笑いました。そして皆にあやまって来る。と言って飛んで行きました。


「良かったですね」


 母神様に言われ二人は笑顔でうなずきました。




 急に強い風が吹いて、庭に立っていた風見鶏かざみどりがすごい勢いで回り始めました。


「いけない、もう時間です。目覚める時間が来ましたよ。人の子は帰らなければなりません」


 女の子はわけが分からないまま母神様に手を引かれ、先ほどの広間にもどって来ました。父神様と子ども神も着いて来ました。


「人の子よ。また遊びに来て下さいね。待っていますよ」


「ありがとう。君に会えて嬉しかった。友達になってくれるかな」


 それを聞いて女の子は変な顔をしました。その顔を見た子ども神は、不安そうな顔をしました。


「わたしたちは、もう友達でしょ?」


 子ども神は嬉しそうに笑いました。



「人の子よ、この石を持って行きなさい」


 父神様に手渡された石は、玉虫色の石と同じ大きさの虹色の石でした。細いひもでんだあみの中に入っていて、首から下げられるようになっていました。女の子はお礼を言い、それを首から下げ服の中に大事にしまいました。




 ―――ありがとう―――ありがとう―――


 ―――さよなら―――さよなら―――


 女の子の意識いしきが遠のいていきました。







「おはよう。朝よ、早く起きなさい」


 お母さんに起こされ、女の子は目をこすりながら大きなあくびをしました。


「お母さん、おはよう」


 と言う声はまだ眠たそうでした。ベッドに座り、う~んと伸びをします。


「今日は久しぶりに晴れたのよ、お洗濯物を外に干せるわ」


 はずんだ声でそう言うと、お母さんはカーテンを開け、窓も開けはなちました。窓の外から明るい光りが差し込んで来ます。女の子は窓から外をのぞきました。


 明け方まで降り続いた雨のしずくが、木や花や草にまあるい水滴を作り、それがキラキラと反射して、まるで宝石箱をのぞいているようでした。空を見上げると澄んだ青空がどこまでも続き、太陽が地面をかわかす勢いでギラギラとまぶしく輝いていました。


「神様には会えたの?」


 二人で朝食を食べているとお母さんにそう聞かれました。


「神様?」


 女の子は首をかしげます。


「神様を笑顔にしたかったんでしょう? 笑顔にしたから雨が上がったのかと思ったけど、ちがうの?」


 母親にそう聞かれましたが、女の子は首を横に振りました。女の子は天界での出来事できごとを、全て忘れてしまっていたのでした。


「そうなの? まあいいわ。後で洗濯物を干すの手伝ってね」


 そう言われ、女の子は分かったとうなずきました。着替えようと子ども部屋に戻り、パジャマを脱ぎました。首からきれいな石がぶら下がっていることに気づきました。


「わぁ~きれいな石。でも、こんなの持って無かったのに、どうしたんだろう」


 そう思いながら虹色の石にれました。女の子の指が石に触れたとたんに、天界での出来事が走馬灯そうまとうのように流れ込んで来ました。女の子はあわててシャツとオーバーオールに着替え、部屋を飛び出し、階段を降り、リビングをつっ切り、玄関から外にいる母親に叫びました。


「お母さん。わたし行って来たたよ! 神様の世界に行ったんだよ!!」


 サンダルをつっかけ、そうさけびながら母親の元にかけて行きました。



 青い空。所々に浮かぶ白い雲。空には大きな虹がかっていました。







 おしまい。










最後までお読み頂き有り難うございました。


童話大賞の応援もして頂き有り難うございました。とても励みになりました。感謝します。



私は春が好きなので、天界を花が咲き乱れる、彩り溢れる世界にしたいと思いました。私の脳内イメージが少しでも皆さんに伝わっていたら幸いです。



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