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第九話、包み込む4枚羽根の衝撃

「言っとくが、

 俺が希望した訳じゃ無いからな」

 と、ジルは言う。


「お前が『万一、私がテストで

 負けるような事があれば、

 私があなたにキスして差し上げますわ。

 ありがたく思いなさい!』って言って」


 ゴン、と、私の頭が机にぶつかる。

 落胆して突っ伏したまま、

 本当どんだけ高飛車なんだと、

 飽きれてしまう。


「自分のキスが価値があると思ってる

 のも傲慢だけど、それが退学と釣り合う

 と思ってるのも酷いわ。ごめんねぇ……」


「まぁ、お前にとっちゃ、

 退学くらい嫌な事だったんだろ」


「そんな事ないのにねぇ」


「そうかよ。

 じゃあ、賭けはそのままで良いのか」


 ん?


 顔をあげると、

 シルは頬杖ついて少し笑っていた。


 あなた、そんな顔して

 笑うようなキャラでしたっけ?


「どうすんだ?」


「いや、あの……出来るなら

 ナシにして下さると、助かります」


「それを俺が

 素直に了承すると思ってんの?」


 そうですね。

 ジルはジルで、負けたら退学だと、

 本気でテストに臨んでたのだ。

 ジルがよく突っかかってきた訳が

 よくわかる。


「つまり、ナシにするなら、

 相応の対価がいるってー事ですね」


「そうだな。キャンセル料だ」


 なるほど、分かった。

 仕方ない、私が、

 (正確にはアスナちゃんだけど)

 言い出した賭けなのだから、

 私が支払うのは当然だ。


「わかりました。じゃあ、」


「じゃあ?」


「今から、キスしましょう」


「ん? は?」


「いや、嫌じゃないなら、だからね」


「そうじゃなくて。

 なら賭けをナシにする必要ないだろ。

 もらいすぎだ」


「だって、テスト内容、

 教えてもらえなきゃ、確実に落ちるし、

 ぶっちゃけこの量だって限界。

 もうヤなの、勉強嫌い、マジやだ」


「子供みたいな駄々こねんじゃねぇ」


「だから、テスト内容教えてくれるなら、

 キスぐらいするし、

 なんなら次のテストも教えてよ、

 またキスするから」


「お前なぁ、もっと自分を大事にしろ!

 お前、気がついてねぇだろうが、

 元々めっちゃ綺麗なんだが、

 最近なんか偉そうじゃなくなって、

 すっげぇ可愛くなったんだよ」


「え? そうなの?」


「10人いたら10人お前が好きだし、

 100人いてもそうなんだよ」


「なんかデレ方のRが

 急すぎやしませんかジルさん」


 ジルがため息をついて、頭を抱えた。


「だから、テスト教えて貰えるなら、

 キスするとか、言うんじゃねぇ……

 変なヤツが寄ってくる」


「うん。わかった……ごめん。

 でも、何なら良いの? キャンセル料」


 シルが顔をあげて、

 あーあ、と残念そうに呟く。


「そうだな。お前に決めさせようとした、

 俺が卑怯だったよな」


 バサッとシルの後ろから、

 4枚の羽根が広がる。


 大きくて、真っ黒で、

 フワフワの4枚の羽根。


「キャンセル料は今からもらうが、

 嫌なら言えよ」


 4枚の羽根が前に延びてきて、

 私を包んだ。

 肩や背中に羽根が触れて、

 フワフワ! 目の前全部!

 めっちゃフワフワ!

 こ、これは素晴らしい!


 ジルが身を乗り出して、

 その手が頬に触れる。


 羽根がグイと背中をおして、

 雲に包まれているようで、


 なんかめっちゃ良いですけどー!


「嫌なら、言えよ」

 耳元で囁かれ、息を飲む。


 ジルの口は私の頬に触れ、

 小さな音を立てた。


「へ? あ……」


 頬にキスされたのだと、

 気がついた時には、

 壁の4枚の羽根はほどけ、

 ジルも元の席に戻っていた。


 キスされた頬を押さえて、

 数秒固まってる私を眺めて、

 ジルは、ふぅん、と

 わかった口振りで呟いた。


「嫌じゃなかったんだな」


「ぶっ、ぶっちゃけフワフワに囲まれ、

 あてられてました」


「そうか、じゃあ、

 次も同じ手で行けそうだな」


 唇を親指で撫でながら、ジルが笑う。

 あなたそんなキャラでしたっけ?


「テストに出るところは、印つけたし、

 答えも書いておいた。

 あと、わからなそうな単語にも

 説明書いておいたから、

 あとは行けるだろ」


 マジすか! いつのまに。

 教科書を渡して、ジルは立ち上がる。


「いいか、次は」

 ほっぺたを押さえたままの私を指して、


「そこで我慢しないからな」

 そう言って、笑った。


「嫌なら、言えよ」

 言って、去っていく後ろ姿を見ながら、

 ようやく息を吐き出す。


 ちょっと、もう心臓に悪い!


「あいつ、あとでぶん殴りましょう」


「ちょ、カルアなんで出てきてるの?」


「ご主人様の女に

 軽々しく手ぇ出しやがって、あの男……」


「せめて、ご主人様の贄って言って!

 誤解を生むから、その表現!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【今日のキャラクター紹介!】


 『ジル』

 ジルディット・ブレーナム

 黒髪、黒の四枚羽根、オラオラ系


 とりあえず口が悪い。

 四枚の羽根で、どう飛んでるの?


 能力は強いけど、

 決して家が裕福とかじゃないよ。

 学力もあるし、魔獣の扱いも上手いのは

 本人の努力の結果だよ。


 だからコネ入学が大っ嫌い。


 上に1人の姉と、2人の兄がいて、

 末っ子不遇だよ。


 時々脱ぐよ。


 ジルの今後の活躍にご期待ください。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「あ! 耳!」


「あぁ。いつもは隠してるからねー」


「いぬ耳?」


「どっちかって言うと、キツネ耳だよ」


「なんで隠してるの?」


「僕の身体には『氷狐』て言う魔族が

 寄生してて、夜になると乗っ取られる」



 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

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