第十話、ぴこぴこ、キツネ耳
「あー!
テスト終わったって素晴らしい!」
真っ青な空の下、
両手をあげて、声をあげる。
「もう、アスナ、
朝からそればっかりだね」
ラウルが笑って横を歩く。
「だって落第じゃなかった!
ラウル、本当、ありがとう」
「いや、僕は別に。
アスナが頑張ったからだよ」
照れながら言う青髪幼馴染に、
本当良い子やなぁ、としみじみ思う。
「そういえば、今回のテスト、
ジルが満点取ったんだって」
「そうか、満点かー」
無意識に頬を手で押さえて。
ジルの顔を、思い出して、
むぅ、と顔を口を尖らせる。
「アスナ、顔赤いけど大丈夫?」
「へ? いやいや、平気」
「今日は、日差しが強いし、
場所も暑いから辛かったらすぐ言って」
と、目的地を指す。
学園の南側に広がる、
草も生えない岩石砂漠。
今日の授業はワームの収集だ。
砂漠の入り口に、生徒全員が集まると、
レオナルド先生が前にたち、
見慣れた高説を始めた。
「知っての通り、
ワームはコカトリスの良質の餌である。
地味であるが、大切な作業である!
必ず2人1組で行動する事!
では、解散」
「どうして、2人1組?」
「暑さで倒れたりしたら、
見つからないからだよ」
なるほど。
岩石が、ゴロゴロ立ち並ぶ地帯では、
一人で倒れたらそのまま死んでしまう。
「アスナは、僕と行こう」
「それはダメだよ、ラウル」
そう言ったのはココだ。
今日もまた、大きな麦わら帽子に、
白い服で。
「え? どうしてさ」
「君は前回、自分の捕まえたワームを
全部アスナ嬢に渡して、
先生にバレたろう?」
え? そうなの!?
「いや、アスナが
『絶対ワームなんか触らない!
暑いのも嫌! 死んじゃう!』て……」
「あー……ごめんなさい」
「だから、先生が、
ラウルとは組ませるなって、
授業にならないから」
にっこり。笑ってココが。
「アスナ嬢は僕と行こう。
それで良いかい?」
「私はかまわないけど」
「ラウルはジルと組んだら良いよ、
良いかいー、ジル」
「は?! なんで!」
ラウルとジルが、
同じような反応をする。
「だって君たち、捕獲に風使うじゃん?
あれ、僕には苦しいの知ってるよね。
一緒には行けないよ」
だろう? にっこり笑ったココに、
ラウルがしぶしぶ頷いて、
ジルの方に歩いていく。
大丈夫だろうか。
「そろそろ仲直りして欲しいよね。
さ、僕らも行こう。
道具は僕が持つからさ」
ココは目を細くして笑った。
日差しが強くて、暑い。
ワームは蛇に似ていて、
でも目は無い。顔が全部口。
岩の隙間とか、土の中とかにいて、
火バサミでつかんで、
蓋つきのバケツにいれる。
岩を登ったり降りたりするから、
結構重労働。
「ごめんねー。風つかえると
もう少し楽なんだけどねー」
ココがバケツを持ちながら言う。
「そんな、道具もバケツも
持ってもらってるし、
十分助かってるよ、ありがとう」
そう、良かった。
と、麦わら帽子で頷く。
次は私も持ってこよう、麦わら帽子。
「ちょっと休憩しようか」
ちょうど壁みたいな岩が、
日陰を作っていて、並んで座る。
「あ! 耳!」
麦わら帽子を取ったココの、
白い頭に、同じく白い
動物の耳があった。
「あぁ。いつもは隠してるからねー」
そういって、ピコピコ動かして見せる。
真っ白で、フワフワで……
「いぬ耳?」
「どっちかって言うと、キツネ耳だよ」
「素敵です。素晴らしいです。
なんで隠してるの? こんなに良いー」
「白いからだよ」
ん? 意味がわからなくて、
首をかしげる。
「キツネ種は、普通茶色い。
髪も耳も。僕だけ白い。
だから、隠してる」
「なんで白いの?」
「僕の身体には『氷狐』て言う魔族が
寄生してて、夜になると乗っ取られる」
「寄生? え?」
「生まれつきだから、気にしないで」
「そこ、生まれつきで
気にならなくならないよね!」
「だから僕は家族の中でもて余されて、
この学校に送られた」
「ケモ耳だーて喜んでたら、
ずいぶん重い背景でびっくりです」
あはははっ
と、ココは軽く笑って
「悪い事ばかりじゃないよ。
氷の力も使えるし」
と、また耳をピコピコしてみせる。
見れば見るほどフワフワな、
真っ白の耳……
こ、これは触りたい。
見とれていると、
ピクンと耳が反応して、
ココが顔をしかめた。
「来るね」
「来るって? なに?」
「砂嵐、サンドストーム」
「え? まずい?」
ココが立ち上がって、
「たてる?」
と、手を貸してくれる。
ココの手をつかんで、身体を起こす。
カルアの手よりは暖かい。
「砂嵐自体は問題ない。
しばらく洞窟にいれば収まる。
問題は……その原因」
遠くの空が黒くなっていく。
生き物みたいにウネる黒い空は、
ドンドンこっちに近づいて、
日差しを遮る。
大きな羽音が、バサリと響いて、
何かを引きずる、振動音がする。
「砂嵐はコマドリが引き起こす。
沢山のコマドリが、砂を巻いて飛ぶ」
ギャアアアアアア
恐竜みたいな鳴き声が響いた。
「そしてコマドリが一斉に飛ぶのは、
あいつから逃げる時」
岩肌を、何かが飛び越えてくる。
漆黒の翼と、蛇の身体を持つ大型魔獣。
「バジリスク!」
十メートルほど先に着地した魔獣は、
私とココを見つけ、
補食するために羽根を広げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『次回予告』
「ココ、血が、ぼたぼたって……」
「ごめんね、ちょっと、君を氷で囲うけど、いいかい?」
「何言ってるの?ココ」
「大丈夫、じきに溶ける。そのころには終わってるから」
「本当、何言ってるの?」
毎日更新!
今日も
お仕事お疲れ様!
モフモフー




